開示要約
日本モーゲージサービスは第21期(2025年4月〜2026年3月)の事業報告と連結計算書類を開示した。連結営業収益は7,960,229千円で前期比5.2%増、営業利益1,583,585千円で同13.1%増、経常利益1,595,116千円で同13.7%増、親会社株主に帰属する当期純利益は1,089,773千円で同10.9%増となった。 セグメント別では住宅金融事業の営業収益が3,907,185千円(7.8%増)、営業利益1,137,396千円(8.2%増)で、融資実行件数は前期比5.6%増。住宅瑕疵保険等事業は営業収益3,374,740千円(2.0%増)、営業利益361,147千円(26.0%増)、住宅アカデメイア事業は営業収益678,302千円(7.5%増)、営業利益85,041千円(38.4%増)と、前期に一括計上した本社移転関連費用の反動で利益が回復した。 総資産は24,657,340千円、純資産9,559,025千円、1株当たり当期純利益は74円12銭。期末配当は1株30円(総額441,059千円、効力発生日2026年6月29日)で、前期の22円から増額する。 改正建築基準法施行に伴う建築確認の遅延や新設住宅着工戸数の減少、資材高騰と住宅ローン金利上昇が続くなか、今後の焦点は中古住宅向け商品の拡充とプラットフォーム構想の進捗にある。
影響評価スコア
🌤️+2i連結営業収益7,960,229千円(前期比5.2%増)に対し営業利益は1,583,585千円と13.1%増、経常利益1,595,116千円(13.7%増)で、増収率を上回る増益となった。住宅金融事業が融資実行件数5.6%増を背景に営業利益8.2%増と全体を牽引し、住宅瑕疵保険等事業は26.0%増益、住宅アカデメイア事業は38.4%増益で3セグメントすべてが増益。前期の本社移転関連費用の反動という一過性要因も含むが、収益力の改善は数値上明確である。
期末配当は1株当たり30円で、前期の22円(普通配当20円・記念配当2円)から増額され、配当総額は323,443千円から441,059千円へ拡大する。1株当たり当期純利益は74円12銭で、還元水準は前期から切り上がる。ガバナンス面では監査等委員会設置会社として監査等委員3名全員が社外取締役かつ独立役員に指定され、当事業年度の取締役会13回・監査等委員会14回にいずれも全員が出席したと報告されている。
短期戦略として新築住宅かし保険と住宅事業クラウドシステム「助っ人クラウド」の連携や買取再販ローンなど既存住宅向けサービスを拡充する。住宅保証サービス件数は前事業年度比4.4%増と、引渡後領域の伸びは数値にも表れた。長期戦略ではオープンブック方式による材工分離、BIMによる設計情報の一元管理、BaaSによる分別送金で中間商流を排除し、中古住宅のC to C取引プラットフォーム構築を掲げるが、収益貢献の時期は本開示で示されていない。
東京証券取引所スタンダード市場に上場し、発行済株式は14,704,000株、株主数は15,584名。増収増益と期末配当30円への増額は株価の支えとなり得るが、本開示は第21期の事業報告・連結計算書類と取締役5名の選任議案が中心で、新たな業績目標の提示はない。大株主はビルダーズシステム研究所が25.44%、日本レジデンシャルファンドが6.53%を保有し、浮動株は限定的である。
特別損失は固定資産廃棄損359千円にとどまり、会計監査人は連結計算書類が適正に表示していると認める監査意見を表明し、重要な後発事象もない。一方、顧客である中小住宅事業者の与信力の低下により資金繰りが悪化するケースが増加したと記載され、短期借入金8,966,040千円の資金調達では金利上昇で営業原価が増加した。大株主首位のビルダーズシステム研究所(25.44%)は代表取締役社長が代表取締役を務める会社であり、支配構造の集中は継続する。
総合考察
総合判定を最も押し上げたのは業績と株主還元の2軸である。営業収益5.2%増に対し営業利益13.1%増と利益の伸びが売上を上回った点は、融資手数料の価格競争下でも買取再販ローン等の商品多角化で収益性を確保した成果と読める。ただし住宅瑕疵保険等事業26.0%増益・住宅アカデメイア事業38.4%増益には前期の本社移転関連費用一括計上という比較基準の低さが効いており、この増益率を来期の巡航速度と見るのは早計だ。実力ベースでは融資実行件数5.6%増、保険証券等の発行件数2.5%増、住宅保証サービス件数4.4%増という数量指標の伸びが妥当な評価軸となる。 還元面は22円から30円への引き上げで、記念配当2円を除いた前期普通配当20円との比較では50%の増配にあたる。一方で戦略的価値と市場反応を抑制的に見たのは、プラットフォーム構想やC to C取引基盤の収益化時期が本開示で示されていないためだ。投資家は2026年6月29日効力発生の期末配当30円の実行に加え、新設住宅着工戸数の減少が続くなかで第22期の融資実行件数と発行件数が増加基調を維持できるか、金利上昇による調達コスト増を融資手数料でどこまで吸収できるかを注視したい。