五洋建設 (1893) 2026年3月期 Q4決算振り返り — 営業利益553億円でIR気象台中央シナリオ命中、会社中計で配当性向40%以上を明示
Xでシェア五洋建設(1893)の2026年3月期本決算(5/8発表)を振り返ります。営業利益553億円(会社予想505億円から+9.5%上振れ)、純利益347億円・EPS 125.58円で過去最高更新。IR気象台事前予想3シナリオ(2026/5/6公開)では純利益とEPSがほぼIR気象台中央シナリオに着地、営業利益とQ4単独はIR気象台中央〜上振れシナリオの中間。同時に開示された会社中期経営計画(2026〜28年度、会社呼称)では、最終年度の2028年度(=2029年3月期)に営業利益635億円・EPS 147.4円、配当性向40%以上・総還元性向60%以上を明示。来期FY2027会社予想は営業利益590億円・EPS 129.88円で、営業利益はIR気象台中央近辺、純利益はIR気象台下振れ近辺、配当性向40.1%はIR気象台上振れ並みと指標ごとに評価が割れる内容です。発表翌営業日に+12.9%の急伸の後、5/15終値は1,943円。海外設備子会社(JOMDK系統と推定)の追加損失が一過性で終わらない可能性が、会社中計進捗を見ていくうえでの主要な観点になります。
関連テーマ
決算サマリ
五洋建設が 2026 年 5 月 8 日引け後に開示した 2026 年 3 月期 通期決算短信 の要点を、3 つのポイントに整理します。
- 営業利益 553 億円 (前期比 +154.9%) で、2026 年 2 月 9 日に上方修正された会社予想 505 億円から +48 億円 (+9.5%) の上振れ着地。2026 年 5 月 6 日公開のIR気象台「五洋建設(1893) 2026年3月期 Q4決算予測 — 海外損失反動と防衛・国土強靱化の二段構え」レポートの中央シナリオ (営業利益 540 億円) よりも +13 億円上の水準でした (決算短信 P.1)
- 純利益 347 億円 (前期比 +178.4%)・EPS 125.58 円で過去最高を更新。IR気象台中央シナリオ (純利益 350 億円・EPS 127 円) にほぼ重なる着地となりました (決算短信 P.1)
- 同時に開示された中期経営計画 (2026〜28 年度、会社呼称) で、最終年度の 2028 年度 (=2029 年 3 月期、本レポート呼称 FY2029) に営業利益 635 億円・純利益 380 億円・EPS 147.4 円、配当性向 40% 以上・総還元性向 60% 以上を明示しました
用語の補足
- マリコン: マリンコンストラクター。港湾・海上土木 (護岸・浚渫・洋上風力基礎など) を主力とするゼネコンの一区分。五洋建設は国内マリコン最大手です
- 配当性向: 純利益のうち配当に回した割合 (連結純利益ベース)
- 総還元性向: 配当に加えて自社株買いも含めた株主還元総額を純利益で割った比率。配当性向よりも広い概念です
- 年度表記: 本レポートでは「FY2026」を「2026 年 3 月期 (2025 年 4 月〜2026 年 3 月)」を意味する 3 月期締めの呼称として用います。会社開示の中期経営計画は「2025 年度 (実績)」「2026 年度 (予想)」「2028 年度 (計画)」という 4 月起算の呼称です。両者を併記する場面では会社呼称を括弧で添えます
予実差異の確認
2026 年 5 月 6 日公開のIR気象台「五洋建設(1893) 2026年3月期 Q4決算予測」レポートで提示した 3 シナリオと、5/8 開示の本決算実績を並べます。
| 指標 | 会社予想 (Q3 短信時) | IR気象台 下振れ | IR気象台 中央 | IR気象台 上振れ | 実績 (5/8 開示) | 実績 − IR気象台中央 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 (億円) | 7,900 | — | — | — | 7,943 | — |
| 営業利益 (億円) | 505 | 505 | 540 | 580 | 553 | +13 |
| 経常利益 (億円) | — | — | — | — | 532 | — |
| 純利益 (億円) | 320 | 320 | 350 | 380 | 347 | -3 |
| EPS (円) | 116 | 116 | 127 | 138 | 125.58 | -1.4 |
| Q4 単独 営業利益 (億円) | 62 | 62 | 97 | 137 | 110 | +13 |
ここから読み取れることを 5 点に整理します。
- 純利益と EPS はほぼ IR気象台 中央シナリオに命中、営業利益と Q4 単独は IR気象台 中央〜上振れシナリオの中間に着地しました
- 会社予想 (Q3 短信時の 505 億円) は IR気象台 下振れシナリオと同水準で、本決算実績はそれを +48 億円 (+9.5%) 上回りました
- Q4 単独の営業利益 110 億円は、会社が Q3 短信時点で示していた通期予想 505 億円から逆算した会社の Q4 ガイダンス 62 億円 (505 − Q3 累計 443) を +48 億円上回る水準です
- Q4 単独 110 億円と前期 Q4 を単純に比較するのは難しい点には注意が必要です。前期 Q4 は海外大型土木 2 件の追加損失 ▲156 億円が大きく効いて営業赤字に近い水準だったため、前年同期比は意味のある比較になりません。海外損失イベントを除いた直近 5 期の Q4 単独平均レンジ感 (おおむね 80〜120 億円) と比べると、110 億円はレンジ上限近くに収まる「業績モメンタムとして素直な水準」と読めます
- IR気象台 中央シナリオを上回った +13 億円の中身は、後述するセグメント分解で「国内土木の収益性改善 (+42 億円)」が主因で、海外建設 (-32 億円) と国内建築 (-32 億円) がやや削り、その他 (+14 億円) が上乗せした結果です
セグメント別ドリルダウン
短信 P.2 経営成績概況 の数値をまず整理します。
(a) FY2026 実績 セグメント別
| セグメント | 売上 (億円) | YoY | セグメント利益 (億円) | YoY | 営利率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 国内土木 | 3,259 | +6.1% | 402 | +44.8% | 12.3% |
| 国内建築 | 2,734 | +7.4% | 168 | +86.7% | 6.1% |
| 海外建設 | 1,818 | +19.8% | ▲32 | (前期 ▲156 から改善) | — |
| その他 | 132 | -5.0% | 15 | +193.9% | 11.4% |
| 合計 | 7,943 | +9.2% | 553 | +154.9% | 7.0% |
(b) IR気象台 中央シナリオ (事前予想時のセグメント積み上げ) vs 実績
事前予想レポート (2026/5/6 公開) で示した IR気象台 中央シナリオは、セグメント別の積み上げで FY2026 営業利益 600 億円のうち、国内土木 360 / 国内建築 200 / 海外建設 0 / その他 1 / 調整 39 として置いていたものです。これを本決算の実績と並べます。
| セグメント | IR気象台 中央シナリオ (事前予想) | 実績 (FY2026) | 差 (実績 − IR気象台中央) |
|---|---|---|---|
| 国内土木 | 360 | 402 | +42 |
| 国内建築 | 200 | 168 | -32 |
| 海外建設 | 0 | ▲32 | -32 |
| その他 | 1 | 15 | +14 |
国内土木の収益性が想定より強かったこと、その分国内建築と海外建設で削られたことが読み取れます。以下、それぞれを掘り下げます。
国内土木 (利益 402 億円、+44.8%)
用語の補足
- スライド条項: 資材高や労務費上昇に応じて契約金額を引き上げる仕組み。官需主導の土木で機能しやすく、利益率改善の下支えになります
- 工事進行基準: 工事の進捗に応じて売上・利益を期間配分する会計処理。過年度に受注した案件の採算改善が当期の利益に戻ってくる場合があります
個別ベースの受注高は 3,147 億円 (+35.1%)。短信本文では「大型港湾工事を含む手持工事が順調に進捗」「官庁工事の受注が好調なことに加え、民間大型工事の受注が寄与」と記述されています (決算短信 P.2)。事前予想で取り上げた馬毛島・防衛施設関連の動きは 日経新聞 2026/2/9 報道 が発生源で、短信本文では個別案件名までは触れられていません。
営利率 12.3% は IR気象台 中央シナリオ (約 11%) を 1pt 強上回りました。事前予想レポートで参照した「建設業の利益率改善関連銘柄」レポート (2026/5/4 公開) でも整理した通り、官需主導の土木ではスライド条項が機能しやすく、過年度に受注した案件の採算改善が当期利益に戻ってくる効果が含まれていると見るのが自然な解釈になります。ただし内訳は短信開示の範囲では特定できません。
国内建築 (利益 168 億円、+86.7%)
個別受注高 3,311 億円 (+4.8%)。短信は「物流倉庫・防衛施設の大型工事」の寄与に言及しています (決算短信 P.2)。営利率 6.1% は IR気象台 中央シナリオ (約 7.3%) をやや下回りました。
利益額は前期比で +86.7% と大きく伸びていますが、これは前期に建築の不採算案件があったことの反動が含まれます。事前予想で「国内建築は前期比改善が見込まれる」と整理した方向感は当たりましたが、伸び幅は IR気象台 中央シナリオの 200 億円には届きませんでした。建築は土木に比べて民需 (物流倉庫など) の比率が高く、案件ごとの採算ばらつきが利益率に効きやすい構造があります。
海外建設 (利益 ▲32 億円、前期 ▲156 から大幅改善)
会社開示の文言を引用します。
大型土木工事 2 件で工事損失を計上した前連結会計年度の 156 億円の損失に比べて大幅に改善しましたが、建築工事 1 件の採算見直しに加え、設備子会社において今期完成及び過年度工事で追加損失を計上したことにより、32 億円の損失となりました (決算短信 P.2)
ポイントは 3 つに分解できます。
- 前期に計上していた大型土木 2 件の追加損失 156 億円は、当期にはほぼ反動として戻ってきています (損失計上は当期ゼロに近づいた)
- ただし、当期は別の建築工事 1 件で採算見直しが入りました
- さらに「設備子会社」(後述の JOMDK 系統と推定) で、今期完成案件と過年度案件の双方で追加損失が出ています
事前予想の IR気象台 中央シナリオは「海外損失ゼロ復帰」を置いていましたが、実際にはイベントの主体が「大型土木」から「建築 + 設備子会社」へ移動し、損失額は ▲32 億円残るかたちになりました。
海外建設の個別受注高は 2,053 億円 (+73.8%) と高水準を維持しており、内訳としてチャンギ空港第 5 ターミナル連絡トンネル、トゥアス北部埋立、香港国際空港の無人交通車両用道路・駅舎建設といった大型案件の受注が短信で触れられています (決算短信 P.2)。受注高自体の手応えはありますが、利益認識のタイミングと採算精度が引き続き論点となります。
その他 (利益 15 億円、+193.9%)
絶対額は小さいですが、不動産・サービス事業の収益寄与で前期比 3 倍近くに伸びました。
海外建設 ▲32 億円の構造 — 来期も続くリスクか
ここから読み取れることを、結論から 3 行で示します。
- 要点: 海外損失の主体が、前期の「大型土木 2 件」から、当期は「建築工事 1 件 + 設備子会社の追加損失」へシフトしました
- 何を意味するか: 「前期の損失が反動で消える」という IR気象台 中央シナリオは概ね当たりましたが、別の要因が新たに出てきており、海外建設の損失が一過性 (前期で出尽くし) とは言い切れません
- 来期との接続: SEP 船 Sea Challenger を保有する子会社 JOMDK は今期に増資・特定子会社化されたばかりで、来期投資 CF △310 億円 (洋上風力作業船建造を含む) と組み合わせると、海外洋上風力作業船関連の損益がしばらく連結利益の振れ幅を作り得ます
用語の補足
- SEP 船 (Self-Elevating Platform): 海底に脚を降ろして船体を持ち上げ、海上で安定した作業床を確保する自己昇降式作業船。洋上風力発電の基礎・タワー・風車設置で使います
- Sea Challenger: 五洋建設の連結子会社ジャパンオフショアマリン (JOM) グループが保有する SEP 船。今期に吊り上げ能力を 1,600 トンへアップグレードしました
- JOMDK (Japan Offshore Marine DK ApS): 上記 Sea Challenger を日本船籍へ変更し国内稼働させるまでの間、海外で稼働させる目的のデンマーク子会社
- 特定子会社: 規模や重要性が大きいために法令上の開示対象になった子会社のことです (証券取引法施行令上の用語)
- 設備子会社: 建設機械・船舶などの設備を保有・運用する子会社を指す業界用語。JOMDK 以外にもクレーン船や浚渫船を保有する子会社が複数存在し得ます
事実関係: JOMDK の今期動向
2026 年 3 月 16 日に開示された臨時報告書 (五洋建設 IR ページの「適時開示情報」から日付指定で参照) では、連結子会社のジャパンオフショアマリン (JOM) が、100% 子会社である JOMDK に対して現物出資による増資を決議したことが開示されました。資本金は 5,380 ユーロから 4,033 万 1,701 ユーロへと大幅に拡大し、JOMDK は特定子会社に該当することになりました。出資比率は異動前後とも 51% で変わりません。
JOMDK の位置づけは、開示文言では「1,600 トン吊りにアップグレードした SEP 船「Sea Challenger」を日本船籍へ変更し国内稼働させるまでの間、海外で稼働させるための子会社」と説明されています。事実関係を整理すると次のようになります。
- 五洋建設グループは Sea Challenger の吊り上げ能力を 1,600 トンへ強化しました
- 国内洋上風力プロジェクトでの稼働を最終目的としていますが、日本船籍化までの期間は海外で稼働させて収益を出す建付けです
- 海外稼働期間に発生する損益は、JOMDK 経由で五洋建設の連結に反映されます
来期投資計画との接続
来期 (FY2027) の会社開示の投資 CF 予想は △310 億円で、その内訳に洋上風力作業船建造が含まれていることが短信に記されています。会社の来期末有利子負債計画は 1,850 億円 (当期末 1,961 億円から ▲111 億円減少) で、営業 CF で設備投資を吸収しつつ借入を返済する建付けです (決算短信 P.4)。
短信本文の「設備子会社において今期完成及び過年度工事で追加損失を計上」という表現について、JOMDK 単体での損失額や、他の設備子会社との内訳は現時点の開示範囲では特定できません。ただし JOMDK が Sea Challenger を保有・海外稼働させる目的で今期に増資・特定子会社化されたばかりであることを踏まえると、▲32 億円のうち海外洋上風力作業船関連の損益が一定割合含まれている可能性は高いと読めます。SEP 船関連の設備投資が一巡するまでは、設備子会社の損益が連結利益の振れ幅を作る要因として残る点が、中期的に意識される論点になります。
来期 (FY2027) 会社予想 — 営業利益と純利益でズレた予想
ここから読み取れることを 3 行で示します。
- 営業利益 590 億円は IR気象台 中央シナリオ 600 億円とほぼ同水準 (IR気象台 中央近辺)
- 純利益 350 億円・EPS 129.88 円は IR気象台 下振れシナリオに近い (税負担増の影響)
- 配当性向 40.1% は IR気象台 上振れシナリオ並み (40% 以上)
会社が 5/8 同時開示した来期会社予想 (決算短信 P.1) と、事前予想で IR気象台 が置いた 3 シナリオを並べます。
| 指標 | IR気象台 下振れ | IR気象台 中央 | IR気象台 上振れ | 会社予想 (5/8 開示) | 評価 (会社予想 vs IR気象台) |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上 (億円) | — | — | — | 8,180 (+3.0%) | — |
| 営業利益 (億円) | 530 | 600 | 680 | 590 (+6.7%) | IR気象台 中央近辺 |
| 経常利益 (億円) | — | — | — | 540 (+1.5%) | — |
| 純利益 (億円) | 347 | 393 | 445 | 350 (+0.9%) | IR気象台 下振れ近辺 |
| EPS (円) | 126 | 142 | 161 | 129.88 | IR気象台 下振れ近辺 |
| 年間配当 (円) | 44 | 55 | 65 | 52 | IR気象台 中央やや下 |
| 配当性向 | 約 35% | 約 38% | 約 40% | 40.1% | IR気象台 上振れ並み |
来期会社予想は指標ごとに評価が割れる内容になっています。営業利益は IR気象台 中央近辺ですが、純利益と EPS は IR気象台 下振れシナリオに近く、一方で配当性向は IR気象台 上振れシナリオ並み (40% 以上) が打ち出されています。この乖離は次のように分解できます。
- 営業利益と純利益のギャップ: 営業利益 590 → 経常利益 540 (▲50 億円) で、営業外でかなりのマイナスが入っています。当期は経常利益 532 が営業利益 553 の下に 21 億円分しか沈んでいなかったので、来期は営業外負担が約 30 億円増える計画です。借入金利上昇 (有利子負債を 1,961 → 1,850 億円と圧縮するが、金利環境が変わる) や為替・持分法投資損益が想定される論点になります
- 税引前利益と純利益: 当期は税効果の戻りが純利益を押し上げる側に効いていた可能性があり、来期は通常水準の税負担に戻ると EPS 伸び率が抑制されます
- 配当性向 40.1%: 純利益の絶対額が抑えめの会社予想でも、配当政策を引き上げてきています。当期 38.1% から +2pt 引き上げ、年間配当 48 → 52 円 (+8.3%) と純利益の伸び (+0.9%) を大きく上回るかたちで増配を計画しています
事前予想で IR気象台 が「来期は海外損失が剥落して 600 億円ライン (IR気象台 中央シナリオ) が見える」と置いていたのに対し、会社予想は営業利益で 10 億円下、純利益で 43 億円下となりました。会社側がより保守的な前提を置いているという読み方ができます。
会社開示の個別受注高 来期予想は 7,800 億円 (今期実績 8,511 億円から ▲711 億円) で、今期の歴史的高水準の受注ペースに対して一段抑えた数字になっています (決算短信 P.4)。
中期経営計画 (2026〜28 年度、会社呼称) — 最終年度 FY2029 ターゲット
短信 P.4 の表を整理します (決算短信 P.4)。短信表は会社の「年度」呼称 (2025/2026/2028 年度) を用いており、本レポートでは併記します。会社呼称の「2025 年度実績」が本レポートの「FY2026 実績」、「2026 年度予想 (会社予想)」が「FY2027 予想 (会社予想)」、「2028 年度計画 (会社中計)」が「FY2029 計画 (会社中計)」に対応します。
| 指標 | FY2026 実績 (会社: 2025 年度実績) | FY2027 会社予想 (会社: 2026 年度予想) | FY2029 会社中計 (会社: 2028 年度計画) | FY2029 / FY2026 |
|---|---|---|---|---|
| 売上 (億円) | 7,943 | 8,180 | 8,800 | +10.8% |
| 営業利益 (億円) | 553 | 590 | 635 | +14.8% |
| 経常利益 (億円) | 532 | 540 | 585 | +9.9% |
| 純利益 (億円) | 347 | 350 | 380 | +9.5% |
| EPS (円) | 125.6 | 129.9 | 147.4 | +17.4% |
| 年間配当 (円) | 48 | 52 | — | — |
| 配当性向 (連結) | 38.1% | 40.1% | 40% 以上 | — |
| 総還元性向 (連結) | 66.9% | 68.6% | 60% 以上 | — |
| 有利子負債 (億円) | 1,961 | 1,850 | 1,660 | ▲15.4% |
| D/E (ネット, 倍) | 0.6 | 0.6 | 0.4 | — |
| ROE | 18.7% | 17.2% | 16.7% | — |
総還元性向の「68.6%」と配当性向「40.1%」は、短信 P.4 の中計表で会社が来期 (FY2027) 会社予想として開示している数値の引用です (決算短信 P.4)。年間配当 52 円・純利益 350 億円から計算される配当性向 (52 × 期中平均株式数 ÷ 350 億 ≒ 40.1%) と整合します。
会社コメントの主要部分を引用します。
中期経営計画 (2023〜25 年度) においては、海外の土木工事で多額の追加工事損失や海外の設備工事子会社における損失等により、23 年度、24 年度と 2 期連続で 2023 年 5 月に発表した当初計画が未達に終わりましたが、最終の 2025 年度は、連結売上高 7,943 億円、親会社株主に帰属する当期純利益 347 億円といずれも過去最高となり、計画を超過達成することができました (決算短信 P.4)
今回策定した「中期経営計画 (2026〜28 年度)」では、豊富な手持工事の確実な進捗や旺盛な建設需要を確実に取り込むことで、本計画期間中に過去最高の売上高と過去最高益の更新を予想しています (決算短信 P.4)
事実として読める論点をまとめます。
- FY2026 実績 → FY2029 計画の純利益 CAGR は約 3.0% (347 → 380 億円、3 年)、一方 EPS の CAGR は約 5.4% (125.6 → 147.4 円、3 年) です。純利益伸び率より EPS 伸び率の方が高いのは、中計期間中の自己株取得による発行済株式数の減少効果が前提として組み込まれている結果と読めます
- 配当性向「40% 以上」、総還元性向「60% 以上」が会社中計の方針として明示されました。当期実績の配当性向 38.1% に対する 2pt 以上の引き上げで、来期会社予想 (40.1%) で既にその水準に到達しています
- D/E ネット倍率を 0.6 倍 → 0.4 倍へ引き下げる計画は、財務の保守化方向と読めます
- ROE は 18.7% → 16.7% へ低下する見通しで、自己資本の積み上がり (純利益の社内留保) が利益成長を上回るペースを前提に置いていることになります
前中計 (2023〜25 年度、会社呼称) では会社呼称の 23 年度・24 年度 (=本レポート呼称の FY2024・FY2025) と 2 期連続で当初計画未達でしたが、最終年度の 25 年度 (=FY2026) で過去最高益となり超過達成で締めくくった経緯は素直な事実として書かれています。新中計の数字をどう評価するかは、上記の経緯を踏まえたうえで、進捗を四半期ごとに追っていく性質の論点になります。
株価反応 (発表前後のフル OHLCV)
決算発表前後の株価推移を Yahoo!ファイナンス から拾います。
| 日付 | 始値 | 高値 | 安値 | 終値 | 前日比 | 出来高 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 5/7 (木、発表前日) | 1,800 | 1,861.5 | 1,797.5 | 1,840 | — | 363 万株 |
| 5/8 (金、引け後発表) | 1,857 | 1,858.5 | 1,763 | 1,830 | -0.5% | 444 万株 |
| 5/11 (月、翌営業日) | 1,960 | 2,094.5 | 1,960 | 2,066 | +12.9% | 982 万株 |
| 5/12 (火) | 2,070 | 2,172 | 2,050.5 | 2,165.5 | +4.8% | 713 万株 |
| 5/13 (水) | 2,130.5 | 2,151 | 2,070 | 2,090 | -3.5% | 316 万株 |
| 5/14 (木) | 2,081 | 2,089.5 | 1,973 | 1,980 | -5.3% | 383 万株 |
| 5/15 (金、直近) | 1,979.5 | 2,005 | 1,904.5 | 1,943 | -1.9% | 274 万株 |
値動きの事実関係を 5 点に整理します。
- 発表翌営業日の 5/11 は始値 1,960 円・高値 2,094.5 円・出来高 982 万株を伴って終値 +12.9% の急伸となりました
- 5/12 は寄付 2,070 円から日中高値 2,172 円 (本レポート期間中の最高値) を付け、終値 2,165.5 円・前日比 +4.8% と上昇が継続しました
- 5/13 は寄付 2,130.5 円から終値 2,090 円・前日比 ▲3.5% と反落しています
- 5/14・5/15 は連日陰線で、5/15 終値 1,943 円は 5/11 終値 2,066 円から ▲6.0%、5/12 高値 2,172 円から ▲10.5% の水準です
- 出来高は 5/11 の 982 万株をピークに、5/15 には 274 万株まで縮小しています。発表前 (5/7 の 363 万株) と同レベルまで落ち着いてきた状態と整理できます
PER 試算
5/15 終値 1,943 円ベースで PER を計算します。
- 来期会社予想 EPS 129.88 円 → 会社予想ベース PER 14.96 倍
- 会社中計 FY2029 (=会社呼称 2028 年度) EPS 147.4 円 → 会社中計ベース PER 13.18 倍
事前予想時点 (2026/5/1 終値 1,760 円ベース) では、当時の forecastEPS 115.84 円から計算した会社予想ベース PER は 15.19 倍でした (事前予想レポート を参照)。発表後に会社の EPS 予想が 129.88 円に切り上がった影響で、株価が上がっても会社予想ベース PER は 14.96 倍と事前予想時点とほぼ同水準のレンジに収まっています。
事前予想レポートで参照していたマリコン平均の予想 PER レンジ感 (おおむね 10〜13 倍) からみると、来期会社予想ベースでは少し上、会社中計 FY2029 ベースでは中レンジに位置しています。
年初来高値は 2 月 12 日 (Q3 決算翌日) の 2,257 円で、5/15 終値はそこから ▲13.9%。今回の発表で年初来高値を更新する動きには至りませんでしたが、Q3 決算後の高値圏は意識される水準として残ります。
投資判断更新 — 前提が強まった点 / 弱まった点
前提が強まった点
- 国内土木の高採算が IR気象台 中央シナリオを超過して実現: 営利率 12.3% は IR気象台 中央シナリオ (約 11%) を 1pt 強上回り、利益額でも +42 億円の上振れ。スライド条項と工事進行基準の組み合わせで、過年度受注案件の採算改善が当期利益に戻ってくる構造が想定通りに機能しました (決算短信 P.2)
- 海外損失が前期比で大幅縮小: 海外建設のセグメント損失は前期 ▲156 億円から ▲32 億円へと ▲124 億円の改善。大型土木 2 件の追加損失が反動として戻った点は IR気象台 事前予想シナリオの想定通りでした (決算短信 P.2)
- 会社中計で配当性向 40% 以上・総還元性向 60% 以上を明示: 会社中計の方針として株主還元水準が文章で明示された点は、来期会社予想 40.1% で既に達成しており、当期実績 38.1% からの +2pt 引き上げが裏付けられています (決算短信 P.4)
前提が弱まった点
- 海外損失の主体が設備子会社へシフト: 「前期で出尽くし」と読んでいた海外損失は ▲32 億円残り、しかも主体が大型土木 2 件から建築工事 1 件 + 設備子会社の追加損失へ移動しました。JOMDK 系統と推定される設備子会社の損失が一過性とは言い切れない点が、来期にも残るリスクとして読めます (決算短信 P.2)
- 来期会社予想の純利益伸び率 +0.9% は EPS 伸び鈍化を示唆: 会社予想ベースで営業利益 +6.7% に対し、純利益は +0.9%。営業外負担が約 30 億円増える計画と、当期に純利益を押し上げた可能性のある税効果の通常水準への戻りが、EPS 伸び率を抑制する方向で前提として組み込まれています (決算短信 P.1)
- 来期会社予想の受注高 7,800 億円で受注ペースは一段抑え: 今期実績 8,511 億円から ▲711 億円の計画。歴史的高水準だった今期からの一段落とした水準で、会社中計最終年度 FY2029 売上 8,800 億円への積み上げペースを四半期ごとに確認していく必要があります (決算短信 P.4)
判断材料の整理という建付けで、特定の投資推奨は行いません。
本決算で見直した前提
IR気象台 事前予想レポート (2026/5/6 公開) で置いていた前提と、本決算で確認できた事実を対比します。各項目とも「旧前提」は IR気象台 事前予想時点の見立て、「新前提」は実績または会社予想です。
(a) IR気象台 中央シナリオ「Q4 単独 97 億円・通期 540 億円」
- 旧前提 (IR気象台 事前予想): Q4 単独 97 億円・通期 540 億円
- 新前提 (実績): Q4 単独 110 億円・通期 553 億円
- 根拠: IR気象台 中央シナリオ比で +13 億円の上振れ。主因は国内土木の収益性 (+42 億円)、相殺要因は国内建築 (-32 億円) と海外建設 (-32 億円) (決算短信 P.2)
(b) 海外損失「ゼロ復帰」 IR気象台 中央シナリオ前提
- 旧前提 (IR気象台 事前予想): 海外建設のセグメント損失はゼロ近辺へ回復
- 新前提 (実績): 損失 ▲32 億円が残り、主体が大型土木から「建築 1 件 + 設備子会社」にシフト
- 根拠: 短信 P.2 の文言「建築工事 1 件の採算見直しに加え、設備子会社において今期完成及び過年度工事で追加損失を計上」 (決算短信 P.2)
(c) 国内土木のセグメント営業利益 IR気象台 中央 360 億円・営利率約 11% 前提
- 旧前提 (IR気象台 事前予想): セグメント営業利益 360 億円、営利率約 11%
- 新前提 (実績): 402 億円、営利率 12.3%
- 根拠: 受注高 3,147 億円 (+35.1%)、官庁工事の好調と民間大型工事の寄与で +42 億円上振れ (決算短信 P.2)
(d) 国内建築 IR気象台 中央シナリオ 200 億円前提
- 旧前提 (IR気象台 事前予想): セグメント営業利益 200 億円、営利率約 7.3%
- 新前提 (実績): 168 億円、営利率 6.1%
- 根拠: 物流倉庫・防衛施設の大型工事の採算が想定どおりには伸びず、▲32 億円未達 (決算短信 P.2)
(e) 来期 (FY2027) 営業利益 IR気象台 中央 600 億円シナリオ
- 旧前提 (IR気象台 事前予想): FY2027 営業利益 600 億円
- 新前提 (会社予想): 590 億円 (IR気象台 中央近辺だが ▲10 億円下)
- 根拠: 5/8 同時開示の会社予想 (決算短信 P.1)
(f) 来期 (FY2027) 純利益 IR気象台 中央 393 億円シナリオ
- 旧前提 (IR気象台 事前予想): FY2027 純利益 393 億円
- 新前提 (会社予想): 350 億円 (IR気象台 下振れシナリオ 347 億円近辺)
- 根拠: 営業外負担が約 30 億円増える計画 (経常利益 540 で営業利益 590 の下 ▲50)、税効果の戻り影響 (決算短信 P.1)
(g) 配当性向 IR気象台 中央 38% / 上振れ 40% 前提
- 旧前提 (IR気象台 事前予想): 配当性向は IR気象台 中央 38%、IR気象台 上振れ 40%
- 新前提 (会社予想): 40.1% (IR気象台 上振れシナリオ並み)
- 根拠: 会社中計で「配当性向 40% 以上・総還元性向 60% 以上」を明示、来期会社予想 年間配当 52 円で配当性向 40.1% に到達 (決算短信 P.4)
見直し後の IR気象台 FY2027 シナリオと想定株価レンジ
(a) 再設計した IR気象台 FY2027 3 シナリオ
本決算と 5/8 開示の会社予想を踏まえ、IR気象台 中央シナリオを会社予想に揃えるかたちで FY2027 の IR気象台 シナリオを見直します。IR気象台 上振れは「海外損失の追加発生なし + 国内土木の高採算継続」、IR気象台 下振れは「海外設備子会社の追加損失が再発 + 国内建築の採算未達」を前提に置きます。
| 指標 | FY2027 会社予想 | IR気象台 上振れ | IR気象台 中央 | IR気象台 下振れ |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 (億円) | 8,180 | 8,300 | 8,180 | 8,050 |
| 営業利益 (億円) | 590 | 640 | 590 | 530 |
| 営業利益率 | 7.2% | 7.7% | 7.2% | 6.6% |
| 経常利益 (億円) | 540 | 590 | 540 | 480 |
| 純利益 (億円) | 350 | 385 | 350 | 310 |
| EPS (円) | 129.88 | 142.87 | 129.88 | 115.04 |
| 年間配当 (円) | 52 | 57 | 52 | 47 |
注: IR気象台 下振れシナリオの年間配当 47 円は、純利益 310 億円 × 配当性向 40.7% で算出した機械試算値で、配当性向は IR気象台 中央 (40.6%) や上振れ (39.9%) と同水準に置いています。純利益が小さいシナリオでも配当性向 40% 以上の方針を維持する建付けです。実務的には純利益が大きく縮小すれば減配リスクが意識される可能性がある点には留意ください。
(b) 想定株価レンジ 9 パターン (3 EPS × 3 PER)
IR気象台 が再設計した来期 (FY2027) EPS の 3 シナリオに、PER 水準の 3 段階を掛け合わせて、機械的に株価レンジを試算します。これは目標株価ではなく、来期 EPS と PER の組み合わせで計算した参考値です。
| IR気象台 上振れ EPS (142.87 円) | IR気象台 中央 EPS (129.88 円・会社予想と同値) | IR気象台 下振れ EPS (115.04 円) | |
|---|---|---|---|
| 低位 PER 11 倍 | 1,572 円 | 1,429 円 | 1,265 円 |
| 中位 PER 15 倍 | 2,143 円 | 1,948 円 | 1,726 円 |
| 高位 PER 18 倍 | 2,572 円 | 2,338 円 | 2,071 円 |
PER 水準の解釈を 3 行で添えます。
- 低位 PER 11 倍: マリコン平均レンジの下限近辺。海外設備子会社の損失再発や受注ペース減速など、業績が大きく振れる要因が顕在化した状態で意識される水準です
- 中位 PER 15 倍: 5/15 終値 1,943 円ベースの会社予想 EPS PER 14.96 倍と整合する水準。今回の本決算と会社中計開示を受けた現在の評価レンジに相当します
- 高位 PER 18 倍: マリコン平均レンジの上限を超え、洋上風力・防衛施設・国土強靱化のテーマ性が再評価される局面で意識される水準です
5/15 終値 1,943 円は、IR気象台 中央 EPS × 中位 PER の 1,948 円とほぼ重なる位置にあり、現在の株価は会社予想 EPS をマリコン平均レンジの上端付近 (約 15 倍) で評価している水準と整理できます。
データソース・免責事項
参考情報
- 五洋建設 2026 年 3 月期 通期決算短信 (2026/5/8 開示)
- 事前予想レポート: 五洋建設(1893) 2026年3月期 Q4決算予測 — 海外損失反動と防衛・国土強靱化の二段構え (2026/5/6 公開)
- テーマレポート: 建設業利益率改善関連銘柄 (2026/5/4 公開)
- 五洋建設 IR ページ (臨時報告書・適時開示)
- Yahoo!ファイナンス 1893 株価データ
- EDINET (過去有価証券報告書)
- IR BANK 1893 セグメント別業績
- 日経新聞 馬毛島関連報道 (2026/2/9)
免責事項
本レポートは公開情報に基づく執筆者の整理であり、投資勧誘を目的とするものではありません。記載した数値は決算短信・臨時報告書等の一次情報から引用していますが、解釈・評価部分は執筆者の見解です。投資判断は読者ご自身の責任で行ってください。記載内容に誤りがある場合は、後日訂正することがあります。
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本レポートは公開情報に基づく分析であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。