建設業マージン改善関連銘柄 — V字回復はどこまで続くか

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IR気象台編集部テーマ株分析

今週から本決算ラッシュを迎える建設関連15社(大手ゼネコン4社・準大手2社・中堅2社・設備サブコン5社・マリコン2社)について、過去5年(FY2021〜FY2025)の連結営業利益率と、最新の決算短信から業績好調の持続性を整理しました。先行して4/27に本決算を発表したきんでんは営業利益率8.65%→12.02%へ一段高に切り上がり、業界の流れが「数字で確認できた」最初の事例です。

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要点

建設業の利益率(売上に対する営業利益の割合)が、業界全体で改善しています。 建設通信新聞 によれば、大手・準大手ゼネコン23社の2026年3月期第3四半期決算では、22社が営業増益、10社が過去最高営業利益となり、各社のコメントとして「発注者の物価上昇への理解が進んでいる」「土木、建築ともに受注時採算は高水準を維持している」という声が共通して伝えられています。

そして先行して4月27日に本決算を発表したきんでん(1944)は、 同社2026年3月期決算短信PDF のとおり営業利益率が8.65%→12.02%へ一段高に切り上がっています。これは「業界横断の利益率改善」が個別決算でも確認できた最初の事例で、来週ラッシュを迎える本決算の試金石にもなっています。

ただし回復のパターンは会社ごとに異なります。本レポートでは大手ゼネコン4社・準大手2社・中堅2社・設備サブコン5社・マリコン2社の合計15社について、過去5年(FY2021〜FY2025)の連結営業利益率(出典: 各社の有価証券報告書、EDINET)と、最新の決算短信(出典: TDNet。PDFを各社セクションで直接リンク)から、業績好調の持続性を仕分けています。

なお、業態の呼び方は以下のとおりです。

  • ゼネコン: ゼネラル・コントラクター。建築や土木の元請けを担う総合建設会社
  • サブコン: ゼネコンの下請けで、空調・電気・計装などの専門工事を担う会社
  • マリコン: マリン・コントラクター。港湾整備や洋上風力建設、海底ケーブル敷設、海外港湾工事など海上の土木工事を専門とする建設会社

建設業の利益率は本当に改善しているのか

建設通信新聞 の集計では、2026年3月期第3四半期累計の大手・準大手ゼネコン23社のうち、 22社が営業増益・10社が過去最高営業利益 という結果でした。同記事は単体ベースの完成工事総利益率(粗利率)について「回答した22社全社で前年同期を上回り」「資材高の影響を最も大きく受けた建築工事の粗利率も、ターゲットとなる10%に近い水準または上回る企業が大勢」と報じています。

各社のコメントとして同記事が紹介しているのは「発注者の物価上昇への理解が進んでいる」「土木、建築ともに受注時採算は高水準を維持している」「施工キャパシティーに見合った計画的受注により完成工事高が減少した」といった声です。これらが業界全体の構造的な変化を示すものか、一時的なものかは、来週の本決算ラッシュでさらに見極める必要があります。

業態別の温度差

以下は今回取り上げる15社の年度ベース連結営業利益率(過去5年)です。出典はすべて EDINETの各社有価証券報告書 で、営業利益率は「営業利益 ÷ 売上高」を本レポートで計算しています。

大手ゼネコン4社

銘柄FY2021FY2022FY2023FY2024FY2025
大成建設(1801)8.82%6.23%3.33%1.50%5.58%
大林組(1802)6.97%2.13%4.73%3.41%5.47%
鹿島建設(1812)6.68%5.93%5.16%5.11%5.22%
清水建設(1803)6.88%3.04%2.82%▲1.23%3.65%

データから読み取れる事実として、大成・大林・清水は2022〜2024年にかけて利益率が大きく落ち込み、清水は2024年に営業赤字に転落、それが2025年に揃ってV字で戻る形になっています。 鹿島はこの過去5年間も大きく崩れず、5%台中心の水準を維持 しているのが特徴的です。

準大手・中堅ゼネコン

銘柄FY2021FY2022FY2023FY2024FY2025
戸田建設(1860)5.46%4.86%2.58%3.43%4.54%
西松建設(1820)6.23%7.27%3.71%4.69%5.75%
東急建設(1720)1.53%▲2.36%1.77%2.85%3.02%
ソネック(1768)7.44%6.45%5.21%1.54%4.33%

ここで取り上げた4社を見ると、戸田や東急建設は過去5年内のピーク水準まで戻っていません。沖縄を地盤とするソネックは2024年に1.54%まで急落し、現在は戻り途中の段階です。

設備サブコン5社

銘柄FY2021FY2022FY2023FY2024FY2025
高砂熱学工業(1969)4.47%4.75%4.52%6.66%8.49%
きんでん(1944)7.72%6.54%6.14%6.52%8.65%
日比谷総合設備(1982)5.47%7.50%7.09%6.85%8.30%
日本電技(1723)13.46%12.86%13.12%16.06%21.18%
ヤマト(1967)7.04%8.06%4.57%3.74%9.02%

サブコン5社のうち4社(高砂熱学・きんでん・日比谷総合・日本電技)はFY2025が過去5年内の最高水準で、ヤマトはFY2022の8.06%を上回るFY2025 9.02%。今回取り上げた15社の中で日本電技の21%台は突出した水準です。サブコン業界の追い風として、 日本経済新聞 は「生成AI投資の拡大で国内のデータセンターや工場の建設が増え、需給の逼迫から業界全体で利益率が改善している」と報じており、 「サブコン銘柄が次々と上場来高値を更新」 とされています。

マリコン2社

銘柄FY2021FY2022FY2023FY2024FY2025
五洋建設(1893)6.47%3.48%0.82%4.72%2.98%
東洋建設(1890)8.24%6.30%5.34%5.83%未発表

五洋は2023年に0.82%まで落ち込み、2025年は売上が伸びている一方で年度ベースの利益率が再び縮小しています。ただし 五洋建設の2026年3月期第3四半期決算短信PDF ではQ3累計の営業利益が前年同期比+200%まで伸びており、本決算(5月8日発表予定)で年度ベースの利益率も大きく改善する見込みです(詳しくは個別解説で後述)。

利益率改善の背景 — 3つの仮説

業界全体で利益率が改善している背景について、本レポートでは以下の3つの仮説で整理しています。これらの3分類は本レポート独自の論立てであり、特定の出典で「この3つに整理されている」と確認しているわけではありません。

仮説1: 過去に抱え込んだ赤字工事がようやく終わってきた

建設通信新聞 は、大手・準大手ゼネコン23社のQ3決算で「単体の完成工事総利益(粗利)率は回答した全22社が前年同期を上回り」と報じており、業界横断で粗利率が改善していることが示されています。本レポートでは、この粗利率の改善は 過去に低単価で受注した赤字案件が完工して落ちる一方、新規案件が適正単価で受注できているという手持ち工事の入れ替わり が要因の一つではないかと推測しています。

仮説2: 資材高を発注者に転嫁できるようになってきた

M&Aキャピタルパートナーズ「建設業経営者アンケート」 によれば、同社が2024年3月に発表した調査では、「コストを発注者に転嫁できず利益が圧迫される」という回答が前回(2023年10月時点)の57.7%から52.0%へ、「契約金額と工事費の乖離」が54.8%から36%へ、それぞれ改善したと報告されています。完全な解決には至っておらず、依然として半数以上の経営者が「価格転嫁に苦戦している」と回答していますが、価格転嫁が進む方向に動いている傾向は同調査からうかがえます。

仮説3: 「赤字でも仕事を取る」業界文化が変わってきている

建設通信新聞 は、各社の決算でのコメントとして「施工キャパシティーに見合った計画的受注により完成工事高が減少した」と報じています。本レポートでは、この「採算が合わない案件は取らない」という方針が業界に広がってきているのではないかと推測しています。これらのコメントが業界全体の構造変化を示すものかどうかは、来週の本決算で各社がどう語るかでさらに確認できると考えています。

同時に複数の追い風テーマも吹いています

業界全体で効いている要因に加え、足元では複数のテーマが同時多発的に追い風になっていると報じられています(日本経済新聞DIAMOND online)。以下のテーマと業態のマッピングは、本レポートが業界一般の知識から整理したものです。

テーマ主な受け皿(本レポートによる整理)
データセンター建設設備サブコン(空調・電気・計装)、大手ゼネコン
半導体工場建設(TSMC熊本、ラピダス、キオクシア)大手ゼネコン、サブコン
都心の再開発(虎ノ門、麻布台、八重洲、芝浦)大手ゼネコン、準大手
防衛関連施設・港湾整備マリコン、ゼネコン
洋上風力・海底ケーブル敷設マリコン
地域インフラ・万博跡地・観光施設中堅ゼネコン

15銘柄の選び方

評価に入る前に、本レポートで取り上げた15銘柄の選定方法をご説明します。網羅性を完璧に担保した選定ではなく、業態を幅広くカバーすることを優先した、ある程度恣意的な選定であることをお断りしておきます。

具体的には、以下の3ステップで選んでいます。

ステップ1: 来週の本決算発表ラッシュ対象から、注目度の高い銘柄を起点に

業績の改善が伝えられている銘柄、または直近の四半期で大きな利益率改善が出ている銘柄から、具体的には日本電技(1723)・ヤマト(1967)・東急建設(1720)・ソネック(1768)・五洋建設(1893)の5社を起点としています。

ステップ2: 業態を網羅するため、各業態の主要プレイヤーを追加

ステップ1の5社だけでは「中堅ゼネコン・サブコン・マリコン」に偏るため、業界横断の比較ができるよう、大手ゼネコン4社(大成建設・大林組・鹿島建設・清水建設)、準大手ゼネコン2社(戸田建設・西松建設)、設備サブコン3社(高砂熱学工業・きんでん・日比谷総合設備)、マリコン1社(東洋建設)を追加しました。

ステップ3: 過去5年の連結営業利益率データの取得可否を確認

EDINETから過去5年(FY2021〜FY2025)の有価証券報告書ベースの連結財務データが取得できることを最終確認し、15銘柄を確定しました。

今回は含めなかった主な銘柄

電気工事の関電工(1942)・九電工(1959)、空調のダイダン(1980)、ゼネコン系の前田建設(1824)、地域マリコンの東亜建設工業(1885)など、本テーマに該当しうる銘柄は他にも存在します。今回これらを含めなかった理由は、業態の代表性として既に取り上げた主要プレイヤー(きんでん・高砂熱学・日比谷総合 / 大成・大林 / 五洋)でカバーできていると判断したためで、銘柄として除外する積極的な根拠があるわけではありません。今後の決算発表や各社の動向を見ながら、追加調査の対象とする可能性があります。

銘柄評価の枠組み

15社の利益率改善が今後も続くかどうかを、以下の4つの基準で評価します。

基準内容
① 利益率の改善幅と継続性過去5年の利益率がどう動いてきたか
② 改善の到達点過去5年内のピーク水準を超えているか、まだ戻り途中か
③ 追い風テーマへの絡みデータセンター・半導体・防衛・洋上風力・再開発のうち、いくつのテーマに絡んでいるか
④ 反動減やコスト再上昇のリスク2027年以降の大型案件息切れ、鉄骨・電線などの再インフレの影響など

これらを総合して、本レポートでは以下の4タイプに仕分けています。タイプ分類は本レポート独自の整理であり、投資判断のランキングや格付けではありません。

タイプ定義
構造改善型利益率が複数年連続で改善し、過去5年内の最高水準に到達
V字回復型大底からの戻りが鮮明。過去5年内のピーク水準には届いていないが、改善の方向は明確
改善初期型改善の兆しはあるが、まだ過去5年の平均を下回るか、戻り途中
業態固有型マリコンの洋上風力・防衛港湾など別の文脈で評価が必要な銘柄

4タイプ別の銘柄一覧(本レポートによる整理)

タイプ銘柄FY25営業利益率主な追い風テーマ
構造改善型日本電技(1723)21.18%DC計装、省エネ
構造改善型きんでん(1944)8.65% → 12.02%(FY26実績)DC、半導体工場、再開発
構造改善型高砂熱学工業(1969)8.49%DC空調、半導体
構造改善型日比谷総合設備(1982)8.30%DC、ビル設備
構造改善型鹿島建設(1812)5.22%DC、半導体、再開発
V字回復型ヤマト(1967)9.02%DC、半導体
V字回復型大成建設(1801)5.58%半導体、再開発、防衛
V字回復型大林組(1802)5.47%再開発、半導体
V字回復型西松建設(1820)5.75%再開発、土木
V字回復型清水建設(1803)3.65%再開発、DC
改善初期型戸田建設(1860)4.54%再開発、洋上風力
改善初期型ソネック(1768)4.33%沖縄、地域
改善初期型東急建設(1720)3.02%渋谷再開発、東急沿線
業態固有型五洋建設(1893)2.98%(足元Q3で急回復)洋上風力、防衛港湾、海外港湾
業態固有型東洋建設(1890)5.83%(FY24実績)洋上風力、港湾、TOB攻防後

構造改善型の銘柄

日本電技(1723) — 利益率20%超のチャンピオン

指標FY2025
売上高430億円
営業利益91.2億円
営業利益率21.18%

ビル空調の自動制御や計装(生産設備や建物設備の運転データを計測・制御する仕組み)を手がけるサブコンです。営業利益率20%超は今回取り上げた15社の中では飛び抜けた水準で、過去5年でも一貫して10%台後半を維持しています(出典: EDINET)。

注目点: 本決算は5月7日発表予定で、足元のTDNetには直近データがありません。20%超という水準を来期も維持できるか、ガイダンスでの伸び率がどう出てくるかが見どころです。建設関連の中で利益率がここまで突出している銘柄は他になく、本テーマの「優等生」として位置づけられます。

きんでん(1944) — 4/27本決算で営業利益率12%へ一段高、業界の試金石

指標FY2025(実績)FY2026(4/27発表 本決算)FY2027会社予想
売上高7,051億円7,507億円(+6.5%)8,100億円(+7.9%)
営業利益609億円902億円(+48.0%)970億円(+7.5%)
営業利益率8.65%12.02%11.98%

出典: きんでん 2026年3月期決算短信PDF(4月27日開示)

関西電力系の電気工事最大手で、今回取り上げる15社の中では唯一、本レポート執筆時点でFY2026本決算が発表済みの銘柄です。同短信から読み取れる重要なポイントは以下の通りです。

  • 個別の受注工事高が +16.6%(7,221億円)と急増 。特に「電力その他工事」(発・変電所工事等)が +104.1%、「情報通信工事」(構内通信等)が +20.4%、「一般電気工事」(事務所ビル等)が +13.9% と幅広く伸びています
  • 手持工事高が +23.2%(5,817億円)に積み上がり 、来期以降の収益基盤が厚みを増しています
  • 来期(FY2027)の会社予想営業利益も970億円(+7.5%)と高水準維持 。売上+7.9%・利益+7.5%でほぼ同率の伸びとなっており、利益率12%台が定着する見込みです
  • 株主還元の大きな転換点: 期末配当が65円→70円に増配され年間130円。さらに来期年間配当は240円(普通配当140円+特別配当100円)と、中期経営計画の成長指標達成に伴う特別配当を予定。同日に自己株式取得(公開買付け)と消却も発表

注目点: 「業界横断の利益率改善」が個別の本決算でも明確に確認できた最初の事例です。発・変電所・情報通信・事務所ビルといった工事種別が幅広く伸びていることから、特定の特需だけに依存していない点も心強いと感じます。来週ラッシュを迎える他社決算で、きんでんと同じ「利益率の一段高への切り上がり」が確認できるかが、本テーマ全体の試金石になります。

高砂熱学工業(1969) — Q3で+86.8%、勢い継続中

指標FY2025(実績)2026年3月期Q3累計
売上高3,816億円3,060億円(前年同期比+15.4%)
営業利益324億円391億円(前年同期比+86.8%)
営業利益率8.49%12.78%

Q3数値出典: 高砂熱学工業 2026年3月期第3四半期決算短信PDF

空調設備工事の最大手で、FY2023の4.5%からFY2025の8.5%へほぼ倍化しています(出典: EDINET)。 2026年3月期第3四半期累計でも営業利益が前年同期比+86.8% とさらに伸びており、同短信の通期予想営業利益は471億円(前期比+45.3%)です。

注目点: 売上の伸び(+15.4%)に対して営業利益の伸び(+86.8%)が大幅に上回っており、利益率の改善ペースが加速しています。本決算でこの勢いがどこまで継続するか、また来期ガイダンスがどこに着地するかが焦点です。きんでん同様、12%台の利益率に乗せられるかどうかが見どころです。

日比谷総合設備(1982) — 5年連続7%以上の安定型

指標FY2025(実績)2026年3月期Q3累計
売上高898億円643億円(前年同期比+13.3%)
営業利益74.6億円65.4億円(前年同期比+85.3%)
営業利益率8.30%10.16%

Q3数値出典: 日比谷総合設備 2026年3月期第3四半期決算短信PDF

ビル設備工事の中堅サブコンで、5年連続で7%以上の営業利益率を維持しています(出典: EDINET)。今回の15社の中では規模は比較的小さいものの、利益率の安定感が比較的高い銘柄です。 2026年3月期第3四半期累計の営業利益も前年同期比+85.3% と大きく伸び、通期会社予想営業利益は94億円(+26.1%)です。

注目点: 規模は小さいですが、利益率の安定性は今回の15社の中でも上位です。Q3の急増ペースが本決算でどこまで続くかと、来期も10%超の利益率を維持できるかが見どころです。

鹿島建設(1812) — 大手で唯一安定、Q3でさらに加速

指標FY2025(実績)2026年3月期Q3累計
売上高2兆9,118億円2兆1,461億円(前年同期比+5.9%)
営業利益1,519億円1,718億円(前年同期比+81.6%)
営業利益率5.22%8.01%

Q3数値出典: 鹿島建設 2026年3月期第3四半期決算短信PDF

EDINETの財務データで確認できる事実として、大手4社の中で唯一、過去5年間にわたり5%台中心の利益率を維持してきた銘柄です。大成・大林・清水のような大底化を回避できた要因については、本レポートでは具体的な出典を確認できておらず、解釈は控えます(同社の有価証券報告書や決算説明会資料を別途ご参照ください)。 2026年3月期第3四半期累計の営業利益は前年同期比+81.6% で、同短信の通期会社予想営業利益は2,280億円(+50.1%)です。

注目点: 大手4社の中で「業績の振れが小さい」のが鹿島の特徴で、ボラティリティを嫌う投資家には有力な選択肢になり得ます。本決算(5月14日予定)で営業利益率が6%台後半まで切り上がるかどうかが、業界全体の流れと整合的に動いているかを見るうえでの注目点です。

V字回復型の銘柄

ヤマト(1967) — V字回復のサブコン、本決算待ち

指標FY2025
売上高532億円
営業利益48.0億円
営業利益率9.02%(FY2024 3.74%から急回復)

設備工事のサブコンで、FY2024に3.74%まで落ちた利益率がFY2025には9%超までV字回復しています(出典: EDINET)。同社の足元Q3短信は本レポート執筆時点でTDNetからは確認できませんでした。

注目点: 本決算は5月7日発表予定で、V字回復のあとが続くかどうかが焦点です。サブコン全体の追い風に乗っているはずなので、ガイダンスで二桁%の利益率を維持・拡大できるかが見どころです。

大成建設(1801) — 大底からの戻りが最も鮮明、Q3も+53%

指標FY2025(実績)2026年3月期Q3累計
売上高2兆1,542億円1兆4,278億円(前年同期比▲6.5%)
営業利益1,202億円1,224億円(前年同期比+53.0%)
営業利益率5.58%8.57%

Q3数値出典: 大成建設 2026年3月期第3四半期決算短信PDF

EDINETデータで確認できる事実として、大手4社の中で最も鮮明にV字を描いた銘柄です。FY2024の1.5%という大底から、FY2025は5.58%まで戻し、 2026年3月期第3四半期累計でもさらに+53.0%増益 と勢いが続いています。同短信の通期会社予想営業利益は1,480億円(+23.2%)です。

注目点: Q3累計の営業利益率が8.57%まで来ており、過去5年内のピーク(FY2021の8.82%)に迫る水準です。本決算(5月14日予定)でこのレベルを維持できるか、また来期ガイダンスでピーク超えが視野に入るかが、V字回復が「本物の構造変化」なのかを判断する材料になります。

大林組(1802) — V字途上、Q3で+46%

指標FY2025(実績)2026年3月期Q3累計
売上高2兆6,201億円1兆8,324億円(前年同期比▲3.6%)
営業利益1,434億円1,427億円(前年同期比+46.2%)
営業利益率5.47%7.79%

Q3数値出典: 大林組 2026年3月期第3四半期決算短信PDF

EDINETの財務データではFY2022に2.13%まで急落した後、複数年かけて段階的に戻してきています。 2026年3月期第3四半期累計の営業利益も前年同期比+46.2% で、同短信の通期会社予想営業利益は1,950億円(+36.9%)です。

注目点: 大成と同じく大底からのV字戻り途上で、Q3累計で7.79%まで来ています。大林組は海外(オーストラリア・北米)の比率が比較的高いことが知られており、為替や地政学情勢の変化が業績に効きやすい構造ですので、本決算でこのあたりの言及があるかも気になるところです。

西松建設(1820) — 緩やかな回復で安定推移

指標FY2025(実績)2026年3月期Q3累計
売上高3,668億円2,765億円(前年同期比+4.5%)
営業利益211億円168億円(前年同期比+18.0%)
営業利益率5.75%6.09%

Q3数値出典: 西松建設 2026年3月期第3四半期決算短信PDF

準大手としては比較的安定した推移で、FY2023の3.71%大底から段階的に戻ってきています(出典: EDINET)。 2026年3月期第3四半期累計の営業利益も前年同期比+18.0% で、同短信の通期会社予想営業利益は260億円(+23.2%)です。

注目点: 他のV字回復型銘柄と比べると伸び率はやや落ち着いていますが、その分ボラティリティが小さく、安定感のある回復軌道です。本決算でこの安定したペースが続いているかが見どころです。

清水建設(1803) — 黒字回復段階、Q3で+108%とリカバリー速い

指標FY2025(実績)2026年3月期Q3累計
売上高1兆9,443億円1兆4,293億円(前年同期比+7.6%)
営業利益710億円745億円(前年同期比+108.6%)
営業利益率3.65%5.21%

Q3数値出典: 清水建設 2026年3月期第3四半期決算短信PDF

EDINETデータで確認できる事実として、FY2024に営業赤字に転落した後、FY2025で黒字回復した段階です。 2026年3月期第3四半期累計の営業利益が前年同期比+108.6% で、同短信の通期会社予想営業利益は1,100億円(+54.9%)です。

注目点: 回復のスピードは大手4社で最も速い印象ですが、利益率の絶対水準ではまだ他の大手から見劣りします。本決算(5月12日予定)で5%台に戻せるかと、来期ガイダンスがどこに着地するかが「赤字案件処理がどこまで進んだか」の指標になります。

改善初期型の銘柄

戸田建設(1860) — Q3で+135%と一気に加速

指標FY2025(実績)2026年3月期Q3累計
売上高5,866億円4,602億円(前年同期比+20.9%)
営業利益266億円283億円(前年同期比+135.6%)
営業利益率4.54%6.16%

Q3数値出典: 戸田建設 2026年3月期第3四半期決算短信PDF

EDINETの財務データでは、FY2023の2.58%大底から戻ったものの、過去5年内のピーク(FY2021の5.46%)にはまだ届いていません。 2026年3月期第3四半期累計の営業利益は前年同期比+135.6% で、同短信の通期会社予想営業利益は315億円(+18.2%)です。

注目点: Q3単体で見ると伸び率が非常に大きく、改善初期型の中では一気に加速している銘柄です。本決算でこの勢いを通期で確認できれば、次回のレポート更新時には「V字回復型」へ格上げ検討の余地があります。

ソネック(1768) — Q3で+330%、戻りが急

指標FY2025(実績)2026年3月期Q3累計
売上高152億円154億円(前年同期比+48.5%)
営業利益6.6億円12.8億円(前年同期比+330.6%)
営業利益率4.33%8.29%

Q3数値出典: ソネック 2026年3月期第3四半期決算短信(訂正版)PDF

沖縄を地盤とする中堅ゼネコンです。EDINETデータでFY2024に1.54%まで急落した後、FY2025で戻り途中の段階となっていましたが、 2026年3月期第3四半期累計の営業利益は前年同期比+330.6% と劇的に改善しています。同短信の通期会社予想営業利益は14.8億円(+125.4%)です。

注目点: Q3累計で営業利益率8.29%まで来ており、これが本決算でも維持されれば過去5年内のピーク(FY2021の7.44%)を超える水準になります。本決算(5月8日予定)で年度ベースの数字を確認したい銘柄です。

東急建設(1720) — Q3 +225%だが利益率の絶対水準は依然低い

指標FY2025(実績)2026年3月期Q3累計
売上高2,931億円2,396億円(前年同期比+21.7%)
営業利益88.4億円103億円(前年同期比+225.0%)
営業利益率3.02%4.31%

Q3数値出典: 東急建設 2026年3月期第3四半期決算短信PDF

EDINETの財務データでは、過去5年を通じて利益率が1〜3%台で推移しており、今回取り上げた15社の中では低い水準が続いています。一方で 2026年3月期第3四半期累計の営業利益は前年同期比+225.0% と大幅に改善しており、同短信の通期会社予想営業利益は137億円(+55.0%)です。

注目点: 伸び率は大きいものの、絶対水準では依然として15社中最も低いほう。本決算(5月8日予定)で利益率5%以上に乗せられるかが、本テーマでの位置づけが変わるかどうかの分かれ目になります。

業態固有型の銘柄

五洋建設(1893) — Q3 +200%、国内土木・建築の大型工事と海外損失の反動

指標数値
売上高(FY2025年度)7,275億円
営業利益(FY2025年度)217億円(営業利益率2.98%)
2026年3月期Q3累計売上高5,810億円(前年同期比+12.6%)
2026年3月期Q3累計営業利益443億円(前年同期比+200.0%)
2026年3月期通期営業利益予想505億円(前期比+132.7%、+110億円上方修正)

出典: 五洋建設 2026年3月期第3四半期決算短信PDF(2026年2月9日開示)

マリコン最大手の同社のQ3は、営業利益が前年同期比+200%という劇的な改善で、通期予想を上方修正(営業利益+110億円増額)し、 過去最高益更新を見込む 内容となっています。同短信から読み取れるセグメント別の動きは以下の通りです。

  • 国内土木: セグメント利益304億円(+36.7%)。「大型工事を含む手持工事が順調に進捗」「設計変更等による工事採算の改善」が要因と説明されており、 国内土木の受注高も+78.5%と大幅増 (官庁工事好調+民間大型工事)
  • 国内建築: セグメント利益149億円(+128.7%)。「大型工事の進捗+工事採算の改善」が要因。 国内建築の受注は物流倉庫など大型工事で+36.0%
  • 海外建設: セグメント損失▲20億円(前年▲143億円から大幅改善)。「建築工事1件の採算見直し」「設備子会社の追加損失」が残るものの、規模は前年に比べ大きく縮小。 シンガポールのチャンギ国際空港第5ターミナル工事や香港国際空港工事を新規受注 (受注高+231.2%)
  • 経営成績の概況では「防災・減災、国土強靱化5か年加速化対策に加え、防衛関係のインフラ整備等による堅調な公共投資が継続」「経済安全保障やカーボンニュートラル推進の観点からの民間設備投資の増加」と説明されています

注目点: Q3累計の営業利益率は7.62%で、過去5年内のピーク(FY2021の6.47%)を既に超えています。本決算(5月8日予定)で通期営業利益率が6.6%台に着地すれば、年度ベースでもピーク超えが確認できます。同短信は洋上風力・海底ケーブルへの直接的な言及はありませんが、国内土木・建築の大型工事の進捗と海外損失の反動が主因と読めます。来週の本決算で来期ガイダンスがどう出るか、特に海外の黒字転換タイミングが焦点です。

東洋建設(1890) — TOB攻防後の固有事情あり、データ少ない

指標FY2024
売上高1,868億円
営業利益109億円
営業利益率5.83%

マリコン中堅で、洋上風力・港湾整備で報じられることのある銘柄です。過去にYAMAUCHI-NO.10ファミリー・オフィスによるTOBの動きがあり(詳細は同社の適時開示や報道をご参照ください)、その後の経営方針も含めて固有の事情がある銘柄です。FY2025年度の有価証券報告書はまだ公表されておらず、足元Q3短信もTDNetからは確認できませんでした。

注目点: 同業の五洋がQ3で大幅増益となっており、東洋もマリコン業界の追い風を受けている可能性は高いと思いますが、本レポート執筆時点では裏付けデータが取れていません。次回更新時に決算データが揃った段階で再評価したい銘柄です。

データから読み取れる、ひとつの注意点 — 受注のピークアウト

リスクシナリオを並べることは可能ですが、本レポートの出典範囲では定量的な根拠を示せるものは多くありません。そのなかで、 きんでんの2026年3月期本決算で来期(FY2027)の個別受注工事高予想が6,800億円(前期比▲5.8%)と減少を見込んでいる 点は、データに基づく数少ない注意材料です(出典: きんでん 2026年3月期決算短信PDF)。

来期の完成工事高は+9.4%、営業利益は+12.5%(個別)と積極予想ではあるものの、受注は減速を見込んでいるという「受注のピークアウト」が示唆されています。手持工事高は+23.2%(5,817億円)と厚みがあるため、工事高の伸びは当面続く構造ですが、 2027年以降の新規受注の動向は、本テーマの持続性を判断する重要な指標 になります。来週の本決算で他社が来期受注をどう見込んでいるかが、業界全体としての受注ピークアウト時期を見極める材料になります。

その他の論点(資材高再来、金利上昇、人手不足、万博閉幕後の関西需要など)も一般論としては想定し得ますが、本レポートの出典範囲では定量的に裏付けられないため、列挙は控えます。次回更新時に各社の本決算データが揃った段階で、改めて検証する予定です。

まとめ

本レポートでは15社の連結営業利益率(出典: EDINET)と最新の四半期決算短信(出典: TDNet、PDFは各社セクションで直接リンク)を主たる数値データとし、 建設通信新聞 の業界Q3決算サマリー、 日本経済新聞 のサブコン報道、 M&Aキャピタルパートナーズ の経営者アンケートを背景情報として参照し、業績好調の持続性を仕分けました。

データから読み取れる事実として、設備サブコン(高砂熱学・きんでん・日比谷総合・日本電技・ヤマト)はゼネコン以上に利益率の改善が鮮明で、過去5年内の最高水準まで来ています。先行して4/27に本決算を発表したきんでんが営業利益率8.65%→12.02%へ一段高に切り上がったことは、業界の流れが「個別銘柄の数字でも確認できる段階」に入ったことを示すと考えています。大手ゼネコンは大底からのV字回復段階にあり、過去5年内のピークまでまだ戻る余地があります。マリコンの五洋はQ3で営業利益が前年同期比+200%と急回復し、年度ベースでもピーク超えが視野に入っています。

来週(5月7日〜15日)は、今回取り上げた15社のうち13社が本決算を発表する集中週です。本レポートでは、決算の数字そのものよりも、各社が 「利益率改善の持続性」をどう語るか に注目しています。きんでんが先行して示した「価格転嫁・選別受注・特需取り込み」の組み合わせが他社でも確認できるかが、本テーマ全体の試金石になります。

皆さんの参考になればと思います。

参考情報

業界全体・テーマ系記事:

各社の財務データ・決算短信:

  • EDINET(金融庁) — 各社の有価証券報告書ベース連結財務データ(FY2021〜FY2025)
  • TDNet(東証適時開示)— 各社の決算短信PDF(本文中の各社セクションに直接リンク)

本レポートは公開情報に基づく調査であり、投資助言ではありません。売買の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。

本レポートは公開情報に基づく分析であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。

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