ヤマト(1967)FY2026本決算予測 — 最高益の確度と受注減の影響

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IR気象台編集部個別株分析

1967ヤマトの2026年3月期本決算プレビュー。Q3進捗から経常利益57億円達成の蓋然性は高く、最高益更新が視野に。新中期計画(2026-2028)初年度ガイダンスと配当方針、受注高-20.9%の解釈を整理。

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ヤマト(証券コード 1967 )は、群馬県前橋市に本社を置く設備工事会社です。同社は2026年5月7日に2026年3月期の本決算を発表する予定で、本記事は前日5月6日時点で公表されている情報をもとに、着地予想と当日のウォッチポイントを整理したものです。

業界横断の整理は 2026年5月4日公開の「建設業の利益率改善関連銘柄」レポート で行っており、本記事はその中で「V字回復型」サブコンと位置づけたヤマトを個別に深掘りしたものです。同レポートの論点(二桁%利益率の維持と受注のピークアウト)が、本記事の中心論点と直結します。

要点

  • 2026年3月期は 2026年2月3日に上方修正 された会社予想(経常利益57億円)の達成蓋然性は高い水準にあります。第3四半期累計の経常利益進捗率は76.2%と高く、2期連続の最高益更新が視野に入ります。
  • 一方で、同じQ3短信で開示された 受注高は前年同期比-20.9% と大幅減で、来期(2027年3月期)の売上モメンタムへの波及がもっとも重要な論点です。
  • 2026年3月25日に公表された 新中期経営計画(2026〜2028) は、3年後の経常利益目標58億円。これは2026年3月期予想(57億円)からほぼ横ばいで、初年度のガイダンスは保守的に出る可能性があります。
  • 配当は56円(修正後)で確度が高く、新中計でも 配当性向30%以上を維持 する方針が示されています。
  • 足元株価2,190円・予想PER11.4倍は同業比で最低水準で、業績モメンタムが評価軸として効き始めれば見直し買いの余地があります。
視点数値注目点
2026年3月期会社予想(修正後)経常57億・純利43億・配当56円進捗から達成蓋然性は高い
Q3累計進捗経常76.2%5年平均より高め、上振れの余地あり
受注高Q3累計416億円(YoY -20.9%)来期(2027年3月期)売上に直結する逆風
中計2028年3月期目標経常58億円3年でほぼ横ばい、保守的な印象
株価指標PER 11.4倍・PBR 1.21倍・配当利回り2.56%同業比で最低水準

専門用語の整理(本記事で使う用語):

  • サブコン :ゼネコン(総合建設会社)の下請けで、空調・衛生・電気・水処理などの専門工事を担う設備工事会社。ヤマトはこの分類に入ります。
  • 建設工事業 :建設業法上の総合工事と専門工事の総称。本記事では同社の主力セグメント名として使います(売上の約99%)。
  • 進捗率 :通期会社予想に対する累計実績の達成率。期初発表予想ではなく、修正後の最新予想に対して算出します。
  • 受注高 :会計期間中に新規に受注した工事の契約金額。当期の売上ではなく、翌期以降の売上のもとになる先行指標です。

会社概要とビジネス構造

ヤマトは群馬県前橋市に本社を置く設備工事のサブコンで、 連結従業員数は1,146名(FY2024) 、東証スタンダード市場上場、決算月は3月です。

セグメントは「建設工事業」と「商業施設運営業」の二段構成ですが、 FY2024の売上構成は建設工事業98.9%・商業施設運営業1.0% と、実態としてはほぼ建設工事業の単一事業です。建設工事業の中身は、空調・衛生/建築・土木/電気・通信/水処理/冷凍冷蔵の5領域に分かれており、空調・衛生と電気・通信が主力。2025年3月10日には 土木工事業の上毛建設(群馬県みなかみ町)を子会社化 しており、土木領域の補強が進んでいます。

業績推移

過去2期の実績と今期会社予想(当初/修正後)を並べると次のとおりです。

売上高営業利益経常利益純利益営業利益率配当
2024年3月期(FY2023)482.96億円18.07億円23.31億円14.79億円3.7%27円
2025年3月期(FY2024)実績531.68億円47.96億円52.83億円39.32億円9.0%45円
2026年3月期(FY2025)当初予想530億円42億円46億円38億円7.9%47円
2026年3月期(FY2025)修正後549億円53億円57億円43億円9.6%56円

出典:FY2024実績は 2025年3月期決算短信 、FY2025予想は 2026年3月期 第3四半期決算短信

注目したいのは利益率の推移です。FY2023の営業利益率3.7%からFY2024は9.0%へ、たった1期で5.3ポイント改善しています。これは、建設業界で広がる受注採算改善(資材高や労務費上昇を契約金額に転嫁できるようになったこと)と、案件選別を進めた効果が同時に効いた結果と推測されます。FY2025は修正後予想で営業利益率9.6%とさらに上振れる見込みで、つまり、V字回復後にもう一段押し上げる局面に入っているということです。

FY2025着地予想(2026年3月期本決算)

修正後の通期会社予想は、売上549億円・営業利益53億円・経常利益57億円・純利益43億円です。これに対するQ3累計の進捗率を整理すると次のようになります。

指標Q3累計通期予想進捗率
売上高409.31億円549億円74.5%
営業利益36.97億円53億円69.8%
経常利益43.42億円57億円76.2%
純利益31.85億円43億円74.1%

出典: 2026年3月期 第3四半期決算短信

経常利益のQ3累計進捗76.2%は、残り四半期で13.6億円の利益を出せば達成できる水準です。建設業は工事完成基準の比率が高く第4四半期に利益が集中する傾向があるため進捗率だけで判断するのは危ういのですが、修正後予想(57億円)は2月3日時点での見通しなので、その後の3〜4月で大きく崩れていなければ達成蓋然性は高いと考えられます。

筆者の着地予測は経常利益57〜61億円のレンジ(次章の統合表に今期・来期を並べて整理しています。コンセンサスは確認できなかったため独自試算のみ)。会社予想(経常57億円)通りの着地が最も保守的なケースで、Q4で高採算案件が想定より多く完成すれば59〜61億円までの上振れ余地があります。56億円を下回ると、修正後予想にすら届かない想定外の下振れということになります。

来期(2027年3月期)予想の見立て

本決算では会社が来期(2027年3月期)の業績予想を同時開示します。3月25日に発表された 新中期経営計画(2026〜2028) は最終年度(2028年3月期)目標として受注高600億円・売上高600億円・経常利益58億円を掲げており、これを起点に逆算すると、向こう3年で経常利益はほぼ横ばい(2026年3月期予想57億→2028年3月期目標58億)という保守的な計画です。

なぜ保守的なのか。第一に、Q3累計の受注高が前年同期比-20.9%(416億円)と大きく減っていることが響いています。建設工事は受注から売上計上まで半年〜2年の時差があるため、受注高の減少は翌期以降の売上にじわじわ効いてきます。第二に、 ヤマトテクノパーク(総投資額71億円、2027年4月稼働予定) の減価償却が中計後半に重くなる構造があり、これも利益横ばい計画と整合的です。

筆者の中央予測(IR気象台 中央線)は、売上555億円・営業利益54億円・経常利益57億円・純利益43.5億円です。EPSにすると約185円(期中平均株式数23,510千株ベース)で、今期予想(185.05円)からほぼ横ばい。経常利益の横ばい維持は、(a) 受注残(Q3末で繰越高400億円超とみられる手元の未消化工事)の消化、(b) 上毛建設のフル連結効果(前期は2025年3月10日の期末直前で子会社化したため連結貢献は限定的、来期がほぼ通年の最初の期)、(c) 採算改善基調の継続──の3要素が揃えば達成可能な水準とみます。

3シナリオで今期着地と来期予想を並べると次のとおりです。「会社予想」列は同社の公表値、「IR気象台 上振れ/中央/下振れ」列はすべてIR気象台の試算で、ヤマト自身の予想ではありません。

指標会社予想(今期)IR気象台 上振れIR気象台 中央IR気象台 下振れ
今期 通期売上549億円560億円555億円549億円
今期 通期営業利益53億円57億円55億円53億円
今期 通期経常利益57億円61億円59億円57億円
今期 通期純利益43億円46億円44億円43億円
今期 EPS185.05円約196円約187円約183円
来期 通期売上5/7開示565億円555億円540億円
来期 通期営業利益5/7開示57億円54億円48億円
来期 通期経常利益5/7開示60億円57億円51億円
来期 通期純利益5/7開示45.5億円43.5億円39億円
来期 EPS5/7開示約194円約185円約166円
来期 配当5/7開示60円60円56円
来期 ROE概算約11.1%約10.6%約9.5%

ROE概算は、今期末自己資本約409億円(FY2024期末41,151百万円とQ3末40,663百万円の平均)を起点に、来期純利益と配当流出(純利益×配当性向約32%相当)を加味して試算したIR気象台の試算値です。中計目標 ROE 8%以上 に対しては、3シナリオすべてで上回る位置関係にあります。なお、今期EPSの会社予想185.05円は会社開示の分母ベース、IR気象台列のEPSは期中平均株式数23,510千株ベースで計算しているため、会社予想列とIR気象台下振れ列のEPSが微差で異なります。

各シナリオの前提:

  • 上振れ :データセンター・半導体向け空調設備の需要が継続、上毛建設フル連結の利益寄与が顕在化、中計目標を1年前倒しで達成する流れ。
  • 中央 :受注残の積み上がりと上毛建設のフル連結効果で経常横ばい維持。中計初年度として「目標58億円へのスタートダッシュ」を意識した水準。
  • 下振れ :受注高-20.9%の影響が翌期売上に波及して減収減益スタート。中計初年度として保守的に下げて出し、達成上振れを狙う発想。

筆者は中央シナリオの蓋然性が最も高いとみています。会社が中央寄り(来期経常55〜57億円)のガイダンスを出すか、下振れ寄り(経常50億円台前半)に振るかが、決算当日の株価反応の分かれ目です。

バリュエーション・レンジの試算

足元の株価は2,190円(2026年5月1日終値)、予想PER11.4倍、PBR1.21倍、配当利回り2.56%、時価総額528億円です( 株価データはirbankベース )。 2010年以降のヒストリカルPERは4.67〜35.31倍 で現在は中央〜やや低めの位置にあり、同業( 新日本空調12.7倍・ダイダン13.3倍・高砂熱学19.6倍 )と比べてもヤマトが最も割安な水準にあります。

来期EPS約185円(IR気象台 中央予測)を起点に、PER倍率を変えた場合の株価レンジを試算します。

PER倍率来期EPS 185円ベース株価該当する評価環境
8倍約1,480円受注減が翌期売上に強く波及、業績悪化+同業ディスカウント
11倍約2,035円現状水準とほぼ同水準(業績モメンタムを織り込み中)
13倍約2,405円同業(新日本空調・ダイダン)並みへの収斂、見直し買い進行
15倍約2,775円中計達成シナリオ+業績モメンタム再評価

株価はEPS×PERで機械的に試算したレンジで、ヤマト自身の予想ではありません。PER 8倍はヒストリカル下限近辺、15倍は同業中位(高砂熱学19.6倍)と現状(11.4倍)の中間水準で、業績モメンタムが評価軸として効き始めるエリアの目安です。

まとめ(決算ウォッチポイント)

5月7日の本決算発表で、当日の分水嶺になりそうなのは次の3点です。

  1. 2026年3月期着地(経常利益) :57億円達成の蓋然性は高い水準。59億円超なら上振れシナリオで、利益率改善がもう一段進んだことを意味します。56億円を下回ると、修正後予想にすら届かなかったことになり想定外の下振れです。
  2. 2027年3月期会社ガイダンス :下振れシナリオ(経常51億)と中央シナリオ(経常57億)のどちらに近い数字を出すかが論点です。経常54億円前後の中間的な数字が出る可能性もありますが、中計目標58億円へのスタートダッシュを意識した数字が出るかどうかが見どころです。
  3. 配当方針 :2026年3月期の56円維持はほぼ確定とみていますが、2027年3月期で増配が出るかどうかが、配当性向30%以上の方針への本気度を測る材料になります(純利益45億円・配当性向30%から逆算すると配当はおよそ57〜60円水準)。

中央シナリオで着地した場合、来期EPS約185円・PER 11〜13倍水準なら株価2,035〜2,405円のレンジが目安です。下振れ寄りのガイダンスならPER 8倍水準(株価1,480円)まで下げ余地が出る可能性があります。逆に中計目標58億円へのスタートダッシュを示す数字が出れば、PER 13〜15倍(株価2,405〜2,775円)への見直しが視野に入ります。

参考情報

本文中のインライン出典に加え、参照した一次情報をまとめます。

免責事項

本記事は公開情報に基づく独立した分析であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。最終的な投資判断はご自身の責任でお願いします。

  • ヤマト(1967)
    スタンダード建設・資材

    群馬県本社の設備工事サブコン、2026年3月期本決算プレビュー対象

本レポートは公開情報に基づく分析であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。

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