五洋建設(1893) FY2026本決算予測 — 海外損失反動と防衛・国土強靱化の二段構え
Xでシェア五洋建設(1893)の2026年3月期本決算(5月8日発表予定)を予測。会社は2/9に通期営業利益予想を395→505億円(+110億円)へ上方修正済(前期比+132.7%)。Q3累計実績は443億円で進捗率87.7%という歴史的高水準。本レポートでは今期通期営業利益の3シナリオを下振れ505億円(会社線ぴったり)・中央540億円(Q4単体97億円)・上振れ580億円(Q4単体137億円)で提示。来期(FY2027)ガイダンスはSEP船 Sea Challenger の稼働貢献・海外損失の追加反動・国内土木の手持工事進捗から、IR気象台中央シナリオで営利600億円・年間配当55円を試算。5/1終値ベースで予想PER 15倍水準で取引されており、来期ガイダンスとSEP船・洋上風力の進捗が市場の注目点になります。
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本レポートは、2026年5月8日(金)に発表予定の五洋建設 (1893) のFY2026本決算 (2026年3月期通期) を前にした事前分析です。業界横断の利益率改善の流れについては 2026年5月4日公開の「建設業の利益率改善関連銘柄」レポートで建設関連15社の比較整理を行っており、五洋建設はそこで「業態固有型」(マリコンの洋上風力・防衛港湾・海外港湾の文脈で評価する銘柄群)に位置付けています。本レポートはその個別深掘り版として、Q3累計までの数字と来期ガイダンスの論点を整理します。投資推奨ではなく、判断材料の提供を目的としています。
要点
会社は 2026/2/9 に通期営業利益予想を 395億円 → 505億円(+132.7%)へ上方修正済で、Q3累計実績は 443億円・進捗率 87.7% という歴史的高水準にあります(2026年3月期Q3決算短信)。
決算で動く論点は次の3つに絞れます。
- Q4単独が会社線 62億円を上振れるか (IR気象台中央 97億円、上振れ 137億円)
- 来期(FY2027)会社予想の営業利益が IR気象台3シナリオ(下振れ 530 / 中央 600 / 上振れ 680億円)のどこに位置するか
- 来期年間配当(IR気象台中央 55円・配当性向38%)と、SEP船 Sea Challenger・洋上風力作業船投資の損益タイミング
5/1終値は 1,760円・予想PER 15.19倍で、Q3決算翌日(2026/2/12)の年初来高値 2,257円から約22%押し戻された位置にあります(Yahoo!ファイナンス)。
用語の整理
数字が混乱しやすいので、本文で繰り返し使う用語を先に押さえます。
- マリコン: マリン・コントラクター。港湾整備・洋上風力建設・海底ケーブル敷設・海外港湾工事など、海上の土木工事を専門とする建設会社。五洋建設・東洋建設・東亜建設工業の3社が国内大手とされます。
- SEP船: Self-Elevating Platform 船。海底に脚を下ろして船体を海面上に持ち上げ、安定した作業床から洋上風力発電機の設置などを行う特殊作業船。風車の大型化に合わせてクレーン荷重の大型化が進んでいます。
- 国土強靱化: 自然災害に備えた港湾・河川・道路などのインフラ整備を加速する国の中長期計画。防波堤強化や港湾施設の耐震化など、マリコンの土木工事と関係が深い領域です。
- 進捗率: 通期会社予想に対して、Q3累計までで何%まで到達したかを示す指標。四半期均等なら 75% 前後が目安です。
会社概要とビジネス構造
五洋建設は 1896年創業のマリコン国内最大手で、港湾・海洋土木を中核としつつ、国内建築・海外建設まで4つのセグメントを持っています。FY2025 連結売上高は 7,275億円・営業利益 217億円(営利率 2.98%)(EDINET 五洋建設 有価証券報告書)。
FY2025のセグメント別売上・営業利益は以下のとおりです(irbank.net セグメント情報)。
| セグメント | 売上高(億円) | 売上構成比 | セグメント営業利益(億円) |
|---|---|---|---|
| 国内土木 | 3,073 | 42.2% | 278 |
| 国内建築 | 2,545 | 35.0% | 90 |
| 海外建設 | 1,518 | 20.9% | ▲156 |
| その他 | 139 | 1.9% | 1 |
| 合計 | 7,275 | 100.0% | 213 |
セグメント合計と全社営業利益(217億円)の差は調整額です。売上構成では国内土木と国内建築で 77% を占め、海外建設は 21% にとどまる一方、損益のブレ幅では海外建設が圧倒的に大きいという構造になっています。海外損失が出る年は全社の営業利益率を 1〜3 ポイント押し下げるのが過去のパターンです。
国内土木は港湾・空港・防波堤・自衛隊基地施設など官公庁工事が中心で、利益率も 9〜10% 台と高めに推移しています。国内建築は物流倉庫など民間の大型案件が増加中、海外建設は東南アジア・香港・シンガポールが主戦場です。
過去6年で見る、利益率の振幅
過去6年の業績推移は以下のとおりで、営業利益率に大きな振れがあるのがこの会社の特徴です(出典: EDINET 各年度有価証券報告書)。
| 年度 | 売上(億円) | 営業利益(億円) | 営利率 | 経常利益(億円) | 純利益(億円) | EPS(円) | DPS(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| FY2020 | 5,738 | 332 | 5.78% | 325 | 234 | 81.83 | 24 |
| FY2021 | 4,711 | 305 | 6.47% | 305 | 210 | 73.62 | 28 |
| FY2022 | 4,582 | 159 | 3.48% | 157 | 108 | 37.72 | 23 |
| FY2023 | 5,022 | 41 | 0.82% | 14 | 約7 | 2.52 | 24 |
| FY2024 | 6,177 | 292 | 4.72% | 272 | 179 | 62.73 | 24 |
| FY2025 | 7,275 | 217 | 2.98% | 188 | 125 | 44.12 | 24 |
特徴的なのは FY2023 の営利率 0.82% です。同年のセグメント別営業利益では海外建設が ▲161億円と大きな赤字となっており、これが全社利益率を1ポイント以下まで押し下げた構造的な要因と考えられます(irbank.net セグメント情報)。
FY2024 で営業利益は 292億円まで戻りましたが、FY2025 で再び 217億円へ反落しました。FY2025 のセグメント営業利益は 国内土木 +278億円、国内建築 +90億円、海外建設 ▲156億円、その他 +1億円という内訳です(出典同上)。 国内2セグメントで稼いだ利益の半分弱を海外建設の損失が打ち消す 構図で、海外建設の振れがそのまま全社の利益率の振れに直結している、というのが過去6年の数字から読み取れる事実です。
つまり、FY2026 の Q3累計が前年同期比 +200% という伸びになっているのは、 国内2セグメントの好調に加えて、海外損失幅が大きく縮んだ反動効果が同時に出ている からだと整理できます。
Q1-Q3累計の中身を分解する
FY2026 Q3累計の主要数値は以下のとおりです(2026年3月期Q3決算短信)。
| 指標 | Q3累計 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 5,810億円 | +12.6% |
| 営業利益 | 443億円 | +200.0% |
| 経常利益 | 435億円 | +206.1% |
| 純利益 | 290億円 | +217.3% |
| EPS | 104.63円 | — |
セグメント別では3つの動きが同時に起きています。
第一に、 国内土木の利益積み上げ です。Q3累計のセグメント営業利益は 304億円・前年同期比 +36.7%、受注高は前年比 +78.5% と、利益と受注の両方が伸びています(同決算短信)。
背景として日本経済新聞は、鹿児島県・馬毛島の自衛隊基地に伴う係留施設の工事や、神奈川県の自衛隊駐屯地工事が同社の業績を押し上げていると報じています(日経新聞 2026/2/10付)。防衛・国土強靱化向けの大型案件が、利益率の高い国内土木の出来高を支えている構図と考えられます。
第二に、 国内建築の採算改善 です。Q3累計セグメント営業利益は 149億円・前年同期比 +128.7%、受注高 +36.0%(同決算短信)。物流倉庫など大型民間案件の進捗が利益に効いていると考えられます。FY2024 のセグメント営業利益が 49億円、FY2025 が 90億円であったことを踏まえると、Q3累計だけで前期通年の1.65倍に達したことになり、回復ペースは早いと言えます(irbank.net)。
第三に、 海外建設の損失縮小 です。Q3累計のセグメント営業利益は ▲20億円で、前年同期の ▲143億円から +123億円改善しています(同決算短信)。受注高も前年比 +231.2% と急増しており、シンガポール・チャンギ空港T5や香港空港の新規案件獲得が寄与しているとされます。
海外建築の赤字が縮小すれば、それだけで全社の営業利益が大きく改善するというのがこの会社の特徴です。Q3累計の +200% 増益のかなりの部分は、海外損失の反動と国内土木・建築の上積みの合算効果と整理できます。
なお、上記の3セグメント合計は 304+149-20 = 433億円で、Q3累計の全社営業利益 443億円との差 約10億円は「その他事業」と本社費・セグメント間調整によるものです(同決算短信)。
本決算(FY2026通期)の3シナリオ予測
会社が 2026/2/9 に開示した上方修正後の通期予想は以下のとおりです(2026年3月期Q3決算短信)。
| 指標 | 修正後 | 修正額 | 前期比 |
|---|---|---|---|
| 売上 | 7,590億円 | +315億円 | +4.3% |
| 営業利益 | 505億円 | +110億円 | +132.7% |
| 経常利益 | 475億円 | +110億円 | +152.1% |
| 純利益 | 320億円 | +70億円 | +156.8% |
| EPS | 115.84円 | — | — |
| 年間配当 | 44円 | +10円 | +20円(前期24円) |
会社予想 505億円は Q3累計 443億円との差し引きで、 Q4単体 62億円 を意味します。一方、Q1-Q3 累計の四半期平均は 443÷3 ≒ 約 147億円/四半期です。会社予想の Q4 62億円という数字は、四半期平均から見ると半分以下の水準で、 会社は Q4で大きく減速する前提を置いている ことになります。
参考として、前期 FY2025 の Q4単体営業利益は、通期 217億円 - Q3累計推定値 約 147億円 = 約 70億円と試算できます(本レポートによる独自試算。FY2025 Q3累計の営業利益は、FY2026 Q3累計443億円の前年同期比+200% から逆算した概算値で、実数とは差がある可能性があります)。会社の Q4 62億円という見立ては、前期 Q4 約 70億円より低めに置かれている、つまりやや保守的に見えます。
ここから本レポートでは、コンセンサスは公開取得していないため言及を控えた上で、3シナリオで Q4 単独の必要営業利益と通期着地を整理します(IR気象台試算)。シナリオ全体(今期 EPS・来期予想・配当)の統合表は次節「来期(FY2027)ガイダンス予測」にまとめています。
| シナリオ | Q4単体(億円) | 通期営業利益(億円) | 会社予想線比 | 前提 |
|---|---|---|---|---|
| 上振れ | 137 | 580 | +75 | Q1-Q3累計の四半期平均(約147億円)の約93%水準まで戻す。海外損失ゼロ、国内案件の進捗が前倒しになるケース |
| 中央 | 97 | 540 | +35 | 前年Q4(約70億円)を上回る。国内土木の出来高が年度末に積み上がり、海外損失の追加が小幅にとどまるケース |
| 下振れ | 62 | 505 | ±0 | 会社予想ぴたり。海外案件で再度の追加損失が出るなど、Q4に下押し要因があるケース |
会社予想の Q4営利 62億円は前期 Q4 を下回る水準であり、追加の海外損失や工程上の保守的な期末処理を織り込んだ数字と考えられます。 本決算の最初の論点は、Q4単体が会社予想 62億円を超えてくるか という点になりそうです。
なお、各種コンセンサス値(QUICK・IFIS等)は本レポート執筆時点で公開取得していません。決算後に公表されるサプライズ評価は、これらコンセンサスが基準になる可能性がある点は留意ください。
来期(FY2027)ガイダンス予測 — IR気象台3シナリオ
本決算と同時に開示される来期(FY2027)の会社予想について、今期の着地予測と来期の3シナリオを 1 つの表にまとめると以下のとおりです(IR気象台試算)。シナリオはすべて IR気象台予想で、五洋建設自身の会社予想ではありません。
| 指標 | 会社予想 | IR気象台 上振れ | IR気象台 中央 | IR気象台 下振れ |
|---|---|---|---|---|
| 今期 通期営業利益 | 505 億 | 580 億 | 540 億 | 505 億 |
| 今期 通期純利益 | 320 億 | 約 380 億 | 約 350 億 | 320 億 |
| 今期 EPS | 約 116 円 | 約 138 円 | 約 127 円 | 約 116 円 |
| 来期 通期営業利益 | 5/8 開示 | 680 億 | 600 億 | 530 億 |
| 来期 通期純利益 | 5/8 開示 | 約 445 億 | 約 393 億 | 約 347 億 |
| 来期 EPS | 5/8 開示 | 約 161 円 | 約 142 円 | 約 126 円 |
| 来期 年間配当 | 5/8 開示 | 65 円 | 55 円 | 44 円 |
| 来期 配当性向 | — | 約 40% | 約 38% | 約 35% |
純利益は今期 Q3 累計実績の 純利益÷営業利益 = 290÷443 ≒ 65.5% を按分比率として使用。EPS は期中平均株式数 約 2.76 億株(会社開示の今期 EPS 115.84 円と純利益 320 億円から逆算)で算出。シナリオ前提は本レポートによる積み上げで、出典は本レポート独自です。
3 シナリオの主前提は次のとおりです。
- 上振れ: SEP船 Sea Challenger が来期下期から半年分の稼働貢献。海外建設がプラス転換。国内土木の利益率が 10% 台へ上昇。来期年間配当は累進配当方針を明示し、配当性向 40% 超まで引き上げるケース。
- 中央: 海外建設が損失ゼロへ復帰。国内土木の手持工事進捗 +10%。国内建築は採算維持。SEP船の利益貢献は小幅。配当性向 38% 維持で、来期 EPS 約 142 円 × 38% = 約 54 円を四捨五入して年間 55 円。
- 下振れ: 海外建設で再び ▲30 億円程度の損失。国内土木は採算横ばい。国内建築の利益率が今期水準で頭打ち。配当は今期 44 円据え置き(配当性向は EPS 約 126 円ベースで約 35%)。
中央シナリオの来期営業利益 600 億円の積み上げ内訳は以下です(セグメント売上は過去5年の年率トレンド延長による試算)。
- 国内土木: 売上 約 3,500 億円 × 営利率 10.3% = 約 360 億円
- 国内建築: 売上 約 2,800 億円 × 営利率 7.1% = 約 200 億円
- 海外建設: 売上 約 1,600 億円 × 営利率 0% = 0 億円(損失ゼロ復帰前提)
- その他: 約 1 億円
- セグメント間調整・本社費調整: 約 +39 億円
- 合計: 約 600 億円
なお、今期年間配当 44 円・配当性向約 38% は、2026/2/9 開示の第3四半期決算短信に基づきます。来期の配当方針が会社からどう明示されるかが、本決算で確認したいポイントの 1 つです。
株価とバリュエーション
5/1終値時点の主要指標は以下のとおりです(Yahoo!ファイナンス)。
| 指標 | 値 |
|---|---|
| 株価 | 1,760円 |
| 時価総額 | 5,033億円 |
| 予想PER(forecastEPS 115.84円ベース) | 15.19倍 |
| PBR | 2.59倍 |
| 予想配当利回り | 2.50% |
| 出来高(直近) | 193万株 |
| 年初来高値(2026/2/12) | 2,257円 |
| 年初来安値(2026/1/7) | 1,569円 |
年初来高値 2,257円は Q3決算翌日 2026/2/12 の値で、Q3 +200% 増益の発表に対する反応とみられます。その後は 1,700円台後半まで調整しており、5/8 の本決算前は 会社予想 EPS 115.84円ベースのPER 15倍水準 で取引されている、と整理できます。
PER 15倍水準を「来期 EPS が今期会社予想と同水準で続く」前提で見るか、「IR気象台中央シナリオ(来期営利600億円・純利益約393億円・EPS約142円)」前提で見るかで評価は変わります。後者で計算するとPERは約 12.4倍まで低下する計算になります(本レポートによる試算)。
まとめ
通期営業利益 +132.7%(505億円) という会社が打ち出した数字の背景には、(1) 国内土木の防衛・国土強靱化案件の積み上げ、(2) 国内建築の物流倉庫など民間大型案件の進捗、(3) FY2025 ▲156億円だった海外建設損失の反動(Q3累計で ▲143 → ▲20億円)が同時に効いている、という3つの要因があります。
会社予想 505億円の Q3進捗率は 87.7%・Q4単独 62億円というやや保守的な置き方で、IR気象台の中央予測は Q4単独 97億円・通期 540億円(会社線+35億円)です。決算で確認したい数字は (a) Q4単独 62億円の上振れ、(b) 来期会社予想が IR気象台3シナリオ(530 / 600 / 680億円)のどこに来るか、(c) 来期年間配当(IR気象台中央 55円・配当性向38%)、の3点に絞れます。
データソース・参考情報
- 会社IR: 五洋建設 IRトップ
- 決算短信: 2026年3月期 第3四半期決算短信(2026/2/9)
- 設備投資: 2024/12/10 洋上風力作業船の設備投資に関するお知らせ
- 過去業績(連結・セグメント): EDINET 五洋建設 有価証券報告書、irbank.net セグメント情報
- 報道: 日経新聞 2026/2/10付 五洋建設関連記事、日経xTECH 洋上風力作業船記事、日経新聞 5,000tクレーン船記事
- 株価・指標: Yahoo!ファイナンス 五洋建設(1893)
免責事項: 本レポートは公開情報に基づく調査であり、投資助言ではありません。記載した3シナリオ・来期予測・各セグメント試算は本レポート執筆者(IR気象台編集部)による独自の積み上げで、会社が公表する予想や合意されたコンセンサス値ではありません。投資判断は読者ご自身の責任で行っていただくようお願いいたします。
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本レポートは公開情報に基づく分析であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。