くすりの窓口 (5592) 2026年3月期 Q4決算振り返り — 来期営業利益+15%にも関わらず純利益+5%は税効果剥落の可能性
Xでシェアくすりの窓口 (5592) は2026年5月14日にFY2026本決算を発表し、営業利益2,681百万円 (+37.3%) で4月24日修正の会社線にピンポイント着地、純利益は2,952百万円 (+45.1%) で予想を僅かに上振れました。一方で同時開示のFY2027ガイダンスは売上+16.7%加速の14,400百万円ながら純利益は+5.0%と見かけ上の大幅減速で、これは会計上の税効果プラス影響が剥落する想定で本業の成長 (営業利益+15.5%) は継続します。本レビューでは2026年5月5日公開の事前予想レポートとの予実差異、決算説明資料で正式開示された事業別売上、FY2027ガイダンスの構造、メディ・ウェブ完全子会社化の織り込みまで整理します。
関連テーマ
決算サマリ
くすりの窓口 (5592) のFY2026本決算 (2026年5月14日15:30開示、TDnet PDF) の結論を3点でまとめます。
- 営業利益 2,681百万円 (+37.3% YoY) で4月24日に開示された修正会社予想 (会社線) にピンポイント着地しました。IR気象台が中央シナリオとして設定した想定と合致しています
- 純利益 2,952百万円 (+45.1%) で、予想2,900百万円を僅か (+1.8%) 上振れました。法人税等調整額 △574百万円 (益方向) が継続貢献した格好です
- 同時開示のFY2027会社予想は売上 +16.7% 加速 ・営業利益 +15.5% ・純利益 +5.0% という構成で、純利益の見かけ上の鈍化は会計上の税効果プラス影響が剥落する想定によるものです。本業の成長は営業利益+15.5%で継続しています
予実差異の確認
2026年5月5日公開のIR気象台「くすりの窓口 (5592) FY2026本決算予測 — 利益率上振れの構造」(以下「予想レポート」) との予実差異を整理します。
| 指標 | 期初予想 (2025/5/14) | 4/24修正 (会社線) | IR気象台 上振れ | 実績 | 4/24線対比 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 (百万円) | 12,300 | 12,330 | 12,500 | 12,330 | 0.0% |
| 営業利益 (百万円) | 2,200 | 2,681 | 2,900 | 2,681 | 0.0% |
| 営業利益率 | 17.9% | 21.7% | 23.2% | 21.7% | — |
| 経常利益 (百万円) | 2,135 | 2,666 | — | 2,666 | 0.0% |
| 純利益 (百万円) | 2,240 | 2,900 | 3,100 | 2,952 | +1.8% |
| EPS (円) | 約201 | 約260 | 約278 | 263.23 | +1.2% |
| 配当 (円) | 30 | 38 | 40 | 38 | 一致 |
(出典: FY2026本決算短信 および予想レポート)
ポイントは次の通りです。
- 営業利益は会社線2,681百万円にピンポイント (差異0.04%) で着地し、IR気象台が「会社線=中央シナリオ」として設計した妥当性が裏付けられました
- Q4単独の営業利益率は 19.6% (Q4売上3,402百万円・Q4営業利益666百万円、決算説明資料page 12) で、Q3単独の24.3%から大幅低下しました。 IR気象台の上振れシナリオ (Q3利益率継続前提の29億円) は届かず 、Q3の高利益率は電子処方箋特需と調剤報酬改定対応の一時要因という解釈を補強する数字です。一方、 前年同期 (FY2025 Q4) の14.3% (=397百万円 ÷ 2,778百万円) からは +5.3pt 改善 しており、トレンドとしての底上げは継続しています
- 純利益のみ予想を僅かに上振れました。法人税等調整額 △574百万円 (益方向) という税効果プラス影響が続いている裏付けです (本決算短信 連結損益計算書)
用語の補足:
- 電子処方箋: 紙の処方箋に代わり、電子データで医師から薬局に処方情報を共有する仕組み。2023年1月本格運用開始
- 調剤報酬改定: 薬局が受け取る公定報酬の改定。2024年度改定が2024年6月に施行され、薬局システムの対応需要が発生
来期FY2027ガイダンスと中計達成パス
FY2027の会社予想を、予想レポート (2026年5月5日公開) で提示したIR気象台3シナリオと並べて整理します。
| 指標 | FY2026実績 | FY2027会社予想 | YoY | IR気象台 上振れ | IR気象台 中央 | IR気象台 下振れ |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 (百万円) | 12,330 | 14,400 | +16.7% | 15,400 | 14,600 | 12,900 |
| 営業利益 (百万円) | 2,681 | 3,100 | +15.5% | 3,700 | 3,100 | 2,700 |
| 経常利益 (百万円) | 2,666 | 3,100 | +16.3% | — | — | — |
| 純利益 (百万円) | 2,952 | 3,100 | +5.0% | 3,890 | 3,260 | 2,840 |
| EPS (円) | 263.23 | 270.53 | +2.8% | 約349 | 約292 | 約255 |
| 配当 (円) | 38 | 40 | +5.3% | 約52 | 約44 | 約38 |
(出典: FY2026本決算短信 連結業績予想欄、決算説明資料 page 40、予想レポート シナリオ統合表)
注目論点は次の通りです。
- 営業利益は会社線 3,100百万円とIR気象台中央 3,100百万円が完全一致 しました。売上もIR気象台中央 14,600百万円に対し会社線 14,400百万円とほぼ整合 (-1.4%) で、 3シナリオ手法のキャリブレーションは引き続き有効 です
- 売上 +16.7% 加速のうち、メディ・ウェブ + イーディライト (FY2026 Q4から算入、FY2027は通年寄与) とテクノネットワーク (FY2027 5月1日取得で11ヶ月寄与) の合算で約 8〜10億円程度が見込まれ、残り 10〜12億円程度が既存事業の自然成長分と整理できます (本レポート独自試算)
- 純利益 +5.0% < 営業利益 +15.5% の乖離 (約10pt) は、会社が「経常利益 = 純利益 = 3,100百万円」と同額に設定したことから推察すると、 FY2026に効いた繰延税金資産の追加計上 (法人税等調整額 △574百万円益方向) がFY2027は剥落 する保守的な税負担前提を置いている可能性があります (本レポート独自試算)。 本業の成長は営業利益 +15.5% で継続 しており、純利益の伸び率鈍化は会計上の税効果プラス影響の剥落に伴う見かけ上の現象です
- 中計目標 FY2030 営業利益50億円までのCAGR必要値は 17.0% (3年間で2,681→5,000百万円) で、会社線 FY2027 +15.5% とほぼ整合しています。ストック売上200億円目標 (FY2026 8,573百万円→FY2030 20,000百万円) はCAGR 23.6% が必要で、FY2026のストック売上伸び率 +18% を上回るペースが求められます (決算説明資料 page 44)
用語の補足:
- 繰延税金資産: 将来の課税所得から差し引ける税負担額の前払い分。FY2025の減資 (2025/9/1付) に伴い繰越欠損金を税務上引き継いだ際に追加計上されたとみられます (FY2026本決算短信 BS 繰延税金資産1,631百万円・前期比+562百万円)
- のれん償却: M&Aで取得した企業の純資産超過分を一定年数で費用配分する会計処理。テクノネットワーク・メディ・ウェブ取得でのれん残高は507→870百万円に増加 (前掲短信BS)
事業別評価と販管費圧縮の構造
事業別売上 (決算説明資料の正式値)
決算説明資料 page 4 の事業サマリで開示された、3事業 + 未病予防事業のFY2026通期売上を整理します。
| 事業 | FY2026売上 | YoY | FY2026ストック粗利 | YoY | 補足 |
|---|---|---|---|---|---|
| メディア事業 | 50.2億円 | +15% | 18.0億円 | +52% | Q4からメディ・ウェブ + イーディライト算入 |
| みんなのお薬箱事業 | 35.4億円 | +13% | 15.2億円 | +16% | 不動在庫好調・仕入サポート顧客獲得が順調 |
| 基幹システム事業 | 34.8億円 | -1% | 4.8億円 | -18% | 前期特需反動 + 新商品先行投資の負荷 |
| 未病予防事業 | 売上額非開示 | — | — | — | 予約数 49,750件 (通期累計) で新規開示セグメント化 |
| 連結合計 | 123.3億円 | +10% | 35.8億円 | +24% | — |
(出典: 決算説明資料 page 4・19・20・27・28・33・34・39)
事業別の論点は次の通りです。
- メディア事業の +52% ストック粗利急増には注意が必要 です。決算説明資料 page 19・20 に「第4四半期よりメディ・ウェブおよびイーディライトを算入したため、ストック売上が大幅に増加」との注記があり、Q4単独売上 1,547百万円 (前年同期1,075百万円から +43%) ・Q4単独ストック粗利 634百万円 (前年同期340百万円から +86%) は、 既存メディア事業の自然成長分とメディ・ウェブ寄与分の合算 です。両者の切り分けは現時点の開示では困難で、FY2027 Q1 (来期決算) で初めて通年寄与の比較が可能になります
- 基幹システム事業は通期-1%で減収減益・ストック粗利-18% という新事実です。Q3累計時点では既に +6%の売上成長ながらストック粗利は前期割れだった伸び悩みが、Q4の反動回復でも通期マイナスとして確定しました。背景は「前期の補助金交付対象サービス需要の一巡」と「主要子会社での新商品 (Cube.i、AIボイスen等) の先行投資によるストック原価上昇」とのことです (決算説明資料 page 33・34)。一方、子会社モイネットシステムの Pharmy Connect が600店舗以上の調剤薬局グループへ全店導入決定し、 FY2027 (来年度) から本格導入 で回復が見込まれます (同 page 36)
- みんなのお薬箱事業は流通額が+3%回復 (2,245億円→2,321億円、前年プラスマイナスゼロ程度から増加へ) し、不動在庫サービスと仕入サポートの両輪で売上+13%・ストック粗利+16% の増収増益。予想レポートで論点だった「流通額型 → サブスク型」転換は前進が確認できました (決算説明資料 page 26・29)
販管費分解で利益増加要因を整理
| 項目 | FY2025 | FY2026 | 増減 | 寄与率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 (百万円) | 11,199 | 12,330 | +1,131 (+10.1%) | (拡大ベース) |
| 売上総利益 (百万円) | 6,475 | 6,970 | +495 | 68% |
| 販管費 (百万円) | 4,521 | 4,288 | -233 | 32% |
| 営業利益 (百万円) | 1,953 | 2,681 | +728 | 100% |
| 売上総利益率 | 57.8% | 56.5% | -1.3pt | — |
(出典: FY2026本決算短信 連結損益計算書、決算説明資料 page 10・11)
論点は次の通りです。
- 販管費が -5.1% (-233百万円) 圧縮 され、営業利益増加 (+728百万円) のうち約32%を販管費削減で説明できます
- 売上総利益率は57.8%→56.5%と1.3pt低下しており、 粗利率ベースで見ると微減 です。一方で売上は10.1%増となっており、固定費レバレッジ (販管費の絶対額圧縮) が利益率上昇の主因という構図です
- ただしFY2027の販管費は再増加 に転じます。決算説明資料 page 40 の業績見通し表で計画値 4,953百万円 (+15.5%、+665百万円) が示されていますが、 増加理由の具体的な内訳説明は同資料および決算短信「今後の見通し」には記載されていません 。推測される構造要因は、(a) メディ・ウェブ + イーディライト (2026/1/1取得) とテクノネットワーク + ケイング (2026/5/1取得) の通年連結に伴う人件費・販管費取り込み、(b) Pharmy Connect 600店舗本格導入 (FY2027開始) のサポート体制構築、(c) 新商品 (AIボイスen、Cube.i、未病予防事業など) の先行投資継続、です (本レポート独自試算)。結果として FY2027 営業利益伸び率 (+15.5%) は売上伸び率 (+16.7%) を下回り、 営業利益率はやや低下 (21.7%→21.5%) する計算になります。販管費増加の中身については、FY2027 Q1決算 (2026年8月中旬予定) の決算説明資料での会社からの補足開示が論点です
用語の補足:
- ストック売上: 月額課金など継続課金型の売上。1回限りで終わるショット売上 (新規導入時の初期費用など) の対概念
- ストック粗利: ストック売上から原価を控除した粗利。同社は単一セグメント開示のため、事業別の重要指標としてストック粗利を開示
M&Aの答え合わせ — テクノネットワーク取得対価は予想試算範囲内
M&A対価の予実を整理します。
| 案件 | 予想レポート試算 | 実績対価 | 着地評価 |
|---|---|---|---|
| テクノネットワーク取得 | 上限約1,280百万円 (純資産15%基準) | 950百万円 (現金) | 試算範囲内 |
| メディ・ウェブ完全子会社化 | 予想レポート時点で見落とし | 640百万円 (株式交換 240,604株) | 本決算で取り込み |
| 合計 | — | 1,590百万円 | — |
(出典: FY2026本決算短信 重要な後発事象および企業結合注記)
論点は次の通りです。
- テクノネットワークの取得対価 950百万円 (現金、2026/5/1完了) は、予想レポートが「特定子会社の純資産85.17億円の15%未満=12.8億円上限」と試算したレンジ内に着地しました。 特定子会社の純資産15%基準ロジックは正しく機能 したことになります
- メディ・ウェブ完全子会社化 (2026/1/1効力、株式交換比率1:21.546、対価640百万円) は2025年12月5日付で開示済みでしたが、予想レポート編集時点では見落としていました。本決算で改めて取り込みます
- メディ・ウェブの事業は「EPARKクリニック・病院」運営です。同時にイーディライト (メディ・ウェブの完全子会社) もグループ入りしています。医療機関セグメント開拓は テクノネットワーク (5/1取得) + メディ・ウェブ (1/1取得) の二段構え で進行中です
- BSインパクトは、のれん507→870百万円 (+362百万円、メディ・ウェブ取得反映)、短期借入金 +2,000百万円、長期借入金 +757百万円となっており、FY2027の財務費用増がガイダンス純利益+5%減速の一因となっている可能性があります
- EV/EBIT試算 (テクノネットワーク): 取得対価950百万円 ÷ 直近期営業利益0.89億円 ≒ 約10.7倍 で、医療機関セグメント開拓の戦略プレミアムとしては妥当な水準と評価できます (本レポート独自試算)
用語の補足:
- EV/EBIT: 企業価値 (Enterprise Value) を営業利益 (EBIT) で割った倍率。M&Aの取得対価が利益に対して何年分かを示す指標
- のれん: 取得対価が被取得企業の純資産を上回る部分。日本基準では一定年数で償却され、毎期費用計上される
株価反応 (5/14-5/15)
決算前後の株価推移を整理します。
| 日付 | 始値 | 高値 | 安値 | 終値 | 前日比 | 出来高 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 5/13(水) | 2,800 | 2,838 | 2,780 | 2,782 | — | 16,900 |
| 5/14(木) | 2,832 | 2,849 | 2,663 | 2,740 | -1.53% | 120,400 |
| 5/15(金) | 2,940 | 2,959 | 2,793 | 2,850 | +4.01% | 117,300 |
(出典: Yahoo!ファイナンス 5592)
論点は次の通りです。
- 5/14は決算開示が大引け後 (15:30) のため、ザラ場で安値 2,663円 (始値比 -6.0%) まで売られた背景は決算外の要因 (グロース市場全体の調整や期末リバランスなどの可能性) と読めますが、具体的な出典は確認できていません
- 5/15は寄り付き 2,940円 (前日比 +7.3%) で大幅高スタートとなり、決算は素直にポジティブ評価された反応です
- ザラ場で売られて終値 2,850円 (+4.01%) へ上げ幅を縮小しました。決算ポジティブ評価と利食い売りが混在し、方向感はやや不安定です
- 2日間ネットで +2.4% (2,782円→2,850円)、出来高は両日とも10万株超で平時 (1.7万株前後) の約7倍に膨らみました。 決算に大きな注目が集まったものの、明確なブレイクアウトには至らず という反応です
- 予想レポートの9パターン株価レンジ表との照合では、 5/15終値 2,850円は会社線EPS 270.53円ベースで PER 10.5倍 、予想レポートの中央EPS 292円ベースだと PER 9.8倍 で、いずれの前提でも PER 低位レンジ (10倍前後) での評価です (2026年5月15日終値・本レポート独自試算)
投資判断更新
FY2026実績の会社線ピンポイント着地、およびFY2027会社線営業利益とIR気象台中央が完全一致したことで、 「会社線 = IR気象台中央」設計の妥当性が今期・来期の両方で裏付け られました。3シナリオ手法は継続維持できる結果です。
前提が強まった点:
- テクノネットワーク取得対価が予想試算範囲内 (12.8億円上限に対し9.5億円で着地) で、中計達成パス上のM&A戦略には規律があると評価できます
- 中計FY2030営業利益50億円までのCAGR必要値17.0%に対し、FY2027会社線+15.5%でほぼ整合。ストック売上200億円目標までのCAGR必要値23.6%は、FY2026のストック売上伸び率+18%を上回るペースが求められる点に注意は必要ですが、FY2026ストック粗利が+24%伸長したことから粗利ベースでは整合性があります
- みんなのお薬箱事業の流通額が前期マイナスからプラス +3% へ回復し、 「流通額型 → サブスク型」転換中の業績悪化懸念は緩和 されました
前提が弱まった点:
- Q4単独営業利益率の急低下 (24.3%→19.6%) で、Q3高利益率は一時要因という見方が裏付けられました
- FY2026の販管費圧縮 (-5.1%) は子会社合理化に伴う一過性要因 で、FY2027は +15.5% (+665百万円) の再増加計画。 コスト適正化による利益率改善の持続性は限定的 で、FY2027 営業利益率はやや低下 (21.7%→21.5%) する見通しです
- 基幹システム事業がFY2026で減収減益 (売上-1%、ストック粗利-18%) となり、Pharmy Connect 600店舗本格導入はFY2027からで、 回復まで一定の時間を要する見通し です
- FY2027純利益 +5.0% は 会計上の税効果プラス影響 (法人税等調整額) が剥落 することによる見かけ上の鈍化で、本業の成長は営業利益 +15.5% で継続しています。EPSの伸び率 (+2.8%) は税効果剥落の影響を含むため、本業ベースで評価する場合は営業利益や経常利益の伸び率 (+15.5%/+16.2%) を見るのが妥当です
FY2027売上 +16.7% (+2,070百万円) のうち、メディ・ウェブ + イーディライト通年寄与とテクノネットワーク11ヶ月寄与の合算で約8〜10億円程度と推測され (両社直近期売上の合算ベース)、残り10〜12億円程度が既存事業の自然成長分です。既存事業ベースで見ると +8〜10% のペースで、これはFY2026 既存事業の伸びと概ね同水準です (本レポート独自試算)。
継続論点としては、SBI保有分16.41%の残オーバーハング、医療機関セグメント開拓 (メディ・ウェブ + テクノネットワーク) の早期収益化、Pharmy Connect 600店舗本格導入の進捗が挙げられます。
本決算で見直した前提 (教訓)
予想レポートから見直しが必要となった前提を、旧前提→新前提→根拠の3段で7項目整理します。
-
(a) メディ・ウェブ完全子会社化の見落とし
- 旧前提: 予想レポート編集時点で開示確認不足、本文で言及なし
- 新前提: 2025年12月5日付開示、2026年1月1日効力発生、対価640百万円 (当社普通株式240,604株)。子会社イーディライトもグループ入り
- 根拠: 本決算短信「重要な後発事象」。 FY2027ガイダンスの売上 +16.7% 加速のうち、メディ・ウェブ + イーディライト通年寄与とテクノネットワーク11ヶ月寄与で約8〜10億円程度 と推測されます (本レポート独自試算)
-
(b) 販管費の伸び率は来期再増加へ
- 旧前提: コスト適正化の持続性は予想レポートで未検証
- 新前提: FY2026 は -5.1% (-233百万円) で営業利益増加の約32%を説明したが、 FY2027 は +15.5% (+665百万円) 再増加の計画
- 根拠: 決算説明資料 page 40。今期のコスト適正化は 一過性のドライバー で、利益率改善の持続性は限定的
-
(c) Q4単独利益率の急低下
- 旧前提: Q3単独利益率24.3%を「上振れシナリオ」でQ4にも維持と仮置き
- 新前提: Q4単独 19.6% (Q3比 -4.7pt の急低下、ただし前年Q4 14.3% からは +5.3pt 改善)
- 根拠: 決算説明資料 page 12。Q3が電子処方箋特需と調剤報酬改定対応のピークだった解釈を補強する一方、トレンドとしての底上げは継続
-
(d) FY2027純利益+5%減速の構造
- 旧前提: 純利益/営業利益=1.05継続前提でEPS約292円中央
- 新前提: 会社線で経常 = 純利益 = 3,100百万円と同額設定、税効果剥落想定。実績EPS 263.23円→会社予想EPS 270.53円で +2.8%
- 根拠: 本決算短信 連結業績予想欄。 会計上の税効果プラス影響剥落 によるもので、本業の成長 (営業利益 +15.5%) は継続。来期EPSシナリオは会社線に揃える方向で見直しが妥当
-
(e) テクノネットワーク取得対価の試算は正確
- 旧前提: 純資産15%未満 = 12.8億円上限
- 新前提: 950百万円で着地 (試算上限の74%水準)
- 根拠: 本決算短信「重要な後発事象」企業結合注記。 特定子会社の純資産15%基準ロジックは正しく機能 しました
-
(f) メディア事業ストック粗利+52%の構造
- 旧前提: メディア事業のストック化が継続前提で穏当な伸び
- 新前提: 通期売上 +15%、ストック粗利 +52%。 Q4単独売上1,547百万円 (前年同期1,075百万円から +43%)・Q4単独ストック粗利634百万円 (前年同期340百万円から +86%) はメディ・ウェブ + イーディライト寄与を含む合算値
- 根拠: 決算説明資料 page 19・20 の注記「第4四半期よりメディ・ウェブおよびイーディライトを算入したため、ストック売上が大幅に増加」。既存事業の自然成長分とメディ・ウェブ寄与分の切り分けは、FY2027 Q1 (来期決算) で初めて通年比較が可能になります
-
(g) 基幹システム事業の苦戦
- 旧前提: Q1単独伸び率 (-1.8%) を通期に外挿し、ほぼ横ばい想定
- 新前提: 通期売上 -1% で減収減益、 ストック粗利は -18% (147→115百万円@Q4単独)
- 根拠: 決算説明資料 page 33・34。前期の補助金交付対象サービス需要が一巡した反動 + 新商品 (Cube.i、AIボイスen等) の先行投資が背景。一方、Pharmy Connect が600店舗以上の調剤薬局グループへ全店導入決定で FY2027 本格導入による回復見込み (同 page 36)
見直し後のFY2027シナリオ
第8章で見直した前提を反映して、IR気象台のFY2027シナリオを再キャリブレーションします。
| 指標 | FY2027 会社予想 | IR気象台 上振れ | IR気象台 中央 | IR気象台 下振れ |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 (百万円) | 14,400 | 16,000 | 14,400 | 13,200 |
| 営業利益 (百万円) | 3,100 | 3,600 | 3,100 | 2,700 |
| 営業利益率 | 21.5% | 22.5% | 21.5% | 20.5% |
| 経常利益 (百万円) | 3,100 | 3,600 | 3,100 | 2,700 |
| 純利益 (百万円) | 3,100 | 3,600 | 3,100 | 2,700 |
| EPS (円) | 270.53 | 約321 | 270.53 | 約240 |
| 年間配当 (円) | 40 | 約48 | 40 | 約36 |
(注: 純利益/営業利益=1.0前提 [税効果プラス影響の剥落想定]、期中平均株式数 11,217千株、配当性向15%目処。本レポート独自試算)
シナリオ別の見直しポイント
-
中央シナリオ (営業利益31億): 予想レポート時点の中央 (31億) と会社線 (31億) が完全一致したため、中央シナリオは 会社線に揃える 形に再設定しました。純利益はIR気象台旧シナリオの「純利益/営業利益=1.05」前提を、税効果プラス影響剥落を踏まえて 1.0 に修正 (32.6億→31億)。EPSはIR気象台旧中央 292円から会社線 270.53円 へ下方修正
-
上振れシナリオ (営業利益36億): メディ・ウェブ + イーディライト通年寄与とテクノネットワーク11ヶ月寄与をフルに織り込み、基幹システム事業のPharmy Connect導入が想定以上に進捗するケース。営業利益はIR気象台旧シナリオ 37億→36億 にやや下方修正 (基幹システム事業のFY2026減収減益を反映)。純利益も税効果剥落で純利益/営業利益=1.0想定。EPSは旧 349円→ 約321円 に補正
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下振れシナリオ (営業利益27億): 基幹システム事業の回復遅延 + 販管費再増加 (+15.5%) が想定以上 + 電子処方箋特需の剥落長期化ケース。営業利益27億はIR気象台旧シナリオから維持。純利益は税効果剥落想定で 27億 、EPS約240円
中計FY2030 達成パスへの含意
FY2030営業利益50億円目標までの3年間CAGR必要値17.0%に対し、新中央シナリオ (=会社線) FY2027 +15.5% はほぼ整合。上振れシナリオ +34% は中計を1年前倒しで達成できるペース、下振れシナリオ +0.7% は中計目標未達リスクが顕在化する水準と整理できます。
想定株価レンジ (9パターン)
見直し後の3 EPSシナリオと、3 PER水準 (低位10倍・中位13倍・高位18倍) を組み合わせた、機械試算ベースの想定株価レンジを提示します。5/15終値 2,850円・PER 10.5倍 (会社線EPS 270.53円ベース) からの変化率を併記します。
| 上振れ EPS 約321円 | 中央 EPS 270.53円 | 下振れ EPS 約240円 | |
|---|---|---|---|
| 低位 PER 10倍 | 3,210円 (+12.6%) | 2,705円 (-5.1%) | 2,400円 (-15.8%) |
| 中位 PER 13倍 | 4,173円 (+46.4%) | 3,517円 (+23.4%) | 3,120円 (+9.5%) |
| 高位 PER 18倍 | 5,778円 (+102.7%) | 4,870円 (+70.9%) | 4,320円 (+51.6%) |
(注: 現状比%は2026年5月15日終値 2,850円対比。PER水準の解釈は次の通り)
- 低位PER 10倍: 現状の PER 10.5倍からやや切り下がる場合。来期ガイダンスが弱含み・下振れシナリオが意識される展開
- 中位PER 13倍: 現状水準から再評価で切り上がる場合。基幹システム事業のPharmy Connect本格導入が順調・既存事業ベースの伸び率が加速する展開
- 高位PER 18倍: ヒストリカル上限水準への大幅再評価ケース。中計FY2030目標の上方修正・10万施設達成パスの加速確認など
これは目標株価ではなく、 「来期EPSがこの水準で着地し、PERがこの倍率で評価された場合に機械的に計算される株価」 の判断材料です。現在の PER 10.5倍 (会社線EPS 270.53円ベース) は予想レポート時点の PER 11.1倍 (5/8終値2,882円ベース) からやや切り下がっており、いずれにせよ低位レンジ (10倍前後) で評価されている状態です。
データソース + 免責事項
- 2026年3月期決算短信〔日本基準〕(連結): 2026-05-14 15:30開示、TDnet PDF
- 2026年3月期 決算説明資料 (46スライド): 2026-05-14開示、TDnet PDF
- 2026年3月期第3四半期決算短信: 2026-02-13開示、TDnet PDF
- 2026年4月22日付臨時報告書 (テクノネットワーク取得): くすりの窓口 IR
- 2025年12月5日付メディ・ウェブ簡易株式交換開示: くすりの窓口 IR
- 株価データ: Yahoo!ファイナンス 5592
- 予想レポート (2026/5/5公開): 「くすりの窓口 (5592) FY2026本決算予測 — 利益率上振れの構造」IR気象台編集部
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本レポートは公開情報に基づく分析であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。