くすりの窓口 (5592) FY2026本決算予測 — 利益率上振れの構造

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IR気象台編集部個別株分析

くすりの窓口 (5592、東証グロース、2023年10月4日上場) は2026年5月14日にFY2026本決算 (2026年3月期通期) を発表予定。会社は2025年5月14日の期初予想 (売上123.0億円・営業利益22.0億円・営業利益率17.9%) を起点に、2026年2月13日のQ3同時上方修正、4月24日の本決算前再上方修正を経て、最新の通期予想は売上123.3億円・営業利益26.81億円・営業利益率21.7%まで線が引き上がっています。売上はほぼ期初予想どおりの着地である一方、利益率が +3.8pt 上振れていることが今回の上方修正の構造的特徴です。本レポートでは中央シナリオを会社線の営業利益26.81億円に置き、上振れ29.0億円・下振れ24.5億円のレンジを設定。来期FY2027は2026年度調剤報酬改定 (2026年6月施行) の通年影響が出る最初の年で、技術料改定率+0.08%とほぼゼロながら対物→対人業務転換・都市部新規規制強化などの構造変化が論点になります。

関連テーマ

本レポートは、2026年5月14日に発表予定のくすりの窓口 (5592) のFY2026本決算 (2026年3月期通期) を前にした事前分析です。FY2025までの数字、2026年2月13日開示のQ3累計実績、4月22日のM&A発表、4月24日の通期業績予想再上方修正を踏まえ、本決算で確認したい論点と中央シナリオを整理します。投資推奨ではなく、判断材料の提供を目的としています。

要点

  • 期初予想を超える利益率の上振れで2回の上方修正: 期初予想 (2025/5/14) の営業利益22.0億円が、4/24時点で26.81億円 (+21.9%)。売上は123.0→123.3億円とほぼ据え置きで、 利益率が17.9%→21.7%へ +3.8pt 上振れ したのが上方修正の本体です (IR Bank くすりの窓口適時開示)。
  • FY2026本決算の中央シナリオは会社線と同じ営業利益26.81億円: Q3進捗75%・Q3単独利益率の高さ・会社の自発的修正の3点から、上振れ29.0億円 (Q3単独利益率を Q4 に外挿) ・下振れ24.5億円 (2/13修正水準への巻き戻し) のレンジで前後を挟みました。
  • FY2025は電子処方箋管理サービス新機能の特需込み: 会社はFY2026期初予想時点で「特需を除いた基調的な伸び率は売上+15%・営業利益+33%」とコメント。FY2025の連結+28.4%/+42.6%には特需寄与が含まれていた構図です (フィスコ Research Memo via 株探)。
  • 「みんなのお薬箱」事業は流通額減少だが、収益モデル転換中の可能性: 流通額 -4% (1施設あたり約半減) の一方、連結売上は+28.4%。仕入サポート (流通額型) から e-オーダー (月額課金型) への移行が進行中と会社は説明。
  • FY2027は2026年度調剤報酬改定の通年影響が出る最初の年: 技術料改定率は+0.08%とほぼゼロですが、後発医薬品加算改編・対物→対人業務転換・都市部新規規制強化の構造変化があり、対人業務評価への転換は当社のデジタルツール需要にとってプラス材料 (2026年度調剤報酬改定 メディコム解説)。
  • M&Aの主題は医療機関セグメントへの足場づくり: 中計目標「FY2030 10万施設」は調剤薬局単独では届かず、4/22のテクノネットワーク取得 (九州地区ORCA電子カルテ1,200施設) は医療機関セグメントへの拡張の入口。

各論点の詳細は本文で順に展開します。

なお、本文中で頻出する用語は以下のとおりです。

  • 処方箋ネット受付: 患者がスマートフォン等で処方箋画像を薬局に事前送信し、薬局側で調剤を進めて来店時の待ち時間を短縮する仕組み。EPARKくすりの窓口がこのジャンルの代表的サービス
  • 電子処方箋: 紙の処方箋を電子データ化し、医療機関と薬局でオンライン共有できる厚生労働省主導のシステム。2023年1月から運用開始、その後段階的に新機能 (重複投薬チェック・複数医療機関情報の参照等) が追加されている
  • ORCA: 日本医師会ORCA管理機構が開発・提供する日医標準レセプトソフトおよび電子カルテシステム。診療報酬明細書 (レセプト) 作成や電子カルテ連携を行うオープンソース型システム
  • ストック売上 (ストック粗利): 月額課金型サービス (e-オーダー、サブスクリプション) から生じる継続的な売上 (および売上総利益)
  • 対物業務 / 対人業務: 調剤薬局の業務分類。対物=処方箋に基づく医薬品の調剤・在庫管理、対人=患者への服薬指導・フォローアップ。2026年度調剤報酬改定では対人業務評価への転換が進められた
  • 特定子会社: 資本金の100分の10以上、もしくは取得価額が一定基準を超える子会社。臨時報告書での開示が義務付けられる

会社プロファイル — EPARK光通信グループからのスピンアウト

くすりの窓口は1959年設立、2023年10月4日に東証グロース市場に上場 (主幹事SBI証券、初値1,580円vs公募1,700円で-7.05%) したヘルステック銘柄です。光通信系列のEPARKが展開していた予約サービス事業のうち、薬局業種向けの調剤予約・処方箋送信サービスを会社分割で譲り受けた形で事業を開始しています (有価証券報告書「沿革」 docID S100W451くすりの窓口 IPO情報 みんかぶ)。

事業セグメントは決算上は「単一セグメント」で開示されていますが、サービス区分として3事業を分けて開示しています。FY2024 (2024年3月期) の数字で示します (FY2025は本決算と同時開示の有価証券報告書まで事業別売上の正式表は出ていないため、ここではFY2024有報の最新確定値を使い、FY2025のストック売上は決算説明資料で別途開示されている数字を併記します)。

サービス区分FY2024 売上 (百万円)FY2024 売上構成比FY2024 前年比FY2025 ストック売上 (百万円)主な内容
メディア事業3,06335%+15%3,002EPARKくすりの窓口の処方箋ネット受付・調剤予約
みんなのお薬箱事業3,50440%+16%2,665薬局間の不動在庫医薬品売買マッチング・仕入サポート
基幹システム事業2,15525%+23%1,512調剤薬局向けレセプトコンピュータ・電子薬歴・調剤管理システム
合計8,721100%+18%7,179

(出所: FY2024売上は 有価証券報告書 経営者の分析 docID S100TWG5、FY2025ストック売上は フィスコ Research Memo via 株探 (2025/12/26) による決算説明資料からの引用値)

ストック売上ベースで見ると、3事業はFY2022→FY2025の3年間でメディア事業1.8倍 (1,664→3,002百万円)・みんなのお薬箱事業1.9倍 (1,387→2,665百万円)・基幹システム事業2.6倍 (567→1,512百万円) と、すべての事業がストック型 (継続課金型) の収益基盤を急拡大させてきました。FY2025のストック売上合計7,179百万円は連結売上11,199百万円の 約64% に相当し、残り36% (約4,020百万円) がノンストック (一過性のシステム導入・流通額連動の手数料等) の構成となります。これはくすりの窓口が「流通額型ビジネス → サブスクリプション型ビジネス」への構造転換を進めるなかで、ストック比率が安定的に積み上がっていることを示しています。

主要顧客の構成は、調剤薬局 (約3.96万軒)・介護施設 (2,277軒)・医療機関 (5,065軒) という分布で、 対象施設の合計は約4.7万軒 です。ただし、契約・利用ベースの 導入施設数はFY2024年末時点で38,795施設 で、対象施設のうち導入が確定しているのは約83% (= 38,795÷47,000) に相当します。会社の中期経営計画では、 FY2030 (2030年3月期) までに導入施設10万軒・ストック売上200億円・営業利益50億円以上 を掲げており、現状から導入施設で約2.6倍・ストック売上で約2.8倍の拡大が必要です (中期経営計画関連 フィスコ Research Memo (2025/7/7))。

なお全国の薬局数は厚生労働省「衛生行政報告例」によると約6.2万軒程度の規模感で、当社の調剤薬局カバーは約3.96万軒・概ね60%超に相当する位置づけにあります (厚生労働省 衛生行政報告例)。10万軒目標を薬局単独で達成しようとすると国内市場規模を大きく超えるため、医療機関 (約17万施設) ・介護施設 (約5万施設) を含めた拡張が前提となります。

連結子会社はFY2025末で5社 (㈱エーシーエス・㈱メディカルJSP・㈱モイネットシステム・㈱ピークウェル・ハイブリッジ㈱) と、4/22に取得が決まったテクノネットワーク (5/1取得実行) ・ケイング (グループ会社化) が加わります。FY2024には連結対象だった㈱ホスピタルヘルスケア・㈱ヘルパーリンクの2社がFY2025期中に消え、FY2025の特別損失295百万円・減損損失178百万円のうち一部はこの整理に伴うものと推察されます (有価証券報告書 docID S100W451 主要設備)。本決算で企業結合等関係注記の詳細を確認したいポイントです。

FY2020-FY2025の業績推移 — 2年で営業利益率17%へ

連結ベースの過去6期業績は次のとおりです。FY2020はEPARKからの事業承継直後で純資産がマイナス、FY2024に上場 (2023年10月4日) で資本構成が一新、FY2025は実質的に上場後初の通期決算という流れです。

FY (3月期)売上 (億円)売上前年比営業利益 (億円)営業利益率純利益 (億円)ROEEDINET docID
202032.19--1.07-(上場前)
202145.72+42.0%--6.52-(上場前)
202264.89+42.0%--5.1630.7%(上場前)
202374.21+14.4%10.5014.15%3.9115.2%S100R6II
202487.21+17.5%13.7015.71%8.7119.2%S100TWG5
2025111.99+28.4%19.5417.45%20.3527.5% (注)S100W451

(出所: EDINET 有価証券報告書XBRLデータ。FY2022以前の営業利益は連結開示形式の都合で取得できなかったため非掲載。注: FY2025のROE 27.5%には法人税等調整額 △914百万円 (繰越欠損金引継ぎ) のプラス影響が含まれており、これを除いた実質ROEは概ね16-17%水準と推察されます)

営業利益率はFY2023の14.2%からFY2025の17.4%へ2年で +3.3ポイント上昇しています。同じ期間に売上もFY2023の74億円からFY2025の112億円へ約38億円増えており、規模拡大と利幅改善が同時に進行しています。

加えて、FY2025の連結業績伸び率 (売上+28.4%・営業利益+42.6%) には、後述する 電子処方箋管理サービス新機能関連の一時特需 が含まれています。会社はFY2026期初予想時点で「特需を除いた基調的な伸び率は売上+15%・営業利益+33%」とコメントしており、FY2025のベースは特需込みで嵩上げされていた構図です。FY2025を起点としたFY2026以降の伸び率は、特需剥落分だけ表面上は鈍化して見える点に留意が必要です。

キャッシュフローのワンタイム要因 — FY2025は1回限りの資金移動

FY2024とFY2025のキャッシュフロー計算書を並べると、表面的には大きな変動が見えます。

FY営業CF (百万円)投資CF (百万円)財務CF (百万円)期末現預金 (百万円)
2024+2,627△1,795+7,81214,591
2025△5,327△1,801△5,3592,104

(出所: EDINET 有価証券報告書XBRLデータ)

営業CFがFY2024の +26億円からFY2025の △53億円へと大きく振れた理由について、会社は経営者の分析で「2025年3月期の未払金が76億円減少したことで滞留資金が減少。これを除外した実質営業CFは+23億円」と説明しています (有価証券報告書 docID S100W451)。FY2024期末時点で大きく積み上がっていた未払金 (主に「みんなのお薬箱」事業の医薬品仕入れ未払 + 短期借入5,100百万円) を、FY2025期中に一気に整理した結果として営業CFがマイナス化したのが実態で、実質ベースでは +23億円の営業CFが営業利益19.54億円の水準と整合的です。

総資産はFY2024末の230.7億円からFY2025末の121.6億円へ約109億円圧縮、総負債は166.5億円から36.4億円へ約130億円圧縮されました。これは決算上の数字 (BS・CF) としては大きな変動ですが、 本業のKPI (売上・営業利益・利益率) には直接影響しない財務イベント で、むしろ自己資本比率を27.6%→69.5% (+42pt) へ大きく改善し、ROEを19.2%→27.5%へ押し上げる結果となりました。FY2026以降は、CF・BSは「営業利益+減価償却で純粋に積み上がる」通常運転に戻る前提で、年間30億円前後の営業CFを生み出せる体力があれば、テクノネットワーク取得 (取得対価上限約12.8億円・推計) や配当 (38円・約4.3億円) は自己資金で十分に消化できる水準です。

3事業のKPI分解

3事業のKPIをFY2024〜FY2025で並べると、伸び方の違いが見えてきます。

メディア事業 — 処方箋ネット受付件数が603万件、対象施設拡大は中計パスのやや先行

FY (3月期)処方箋ネット受付件数 (万件)前期比出典
2023416+39%docID S100TWG5 (FY2024有報の「経営者の分析」が前期比較対象として2023年3月期実績を記述)
2024約507 (推計)(FY2025有報の「+19%」と603万件から逆算)
2025603+19%docID S100W451

(注: 有報原文の表現を整理すると、FY2024有報 docID S100TWG5 では「2023年3月期のメディア事業は…予約件数が416万件 (前期比139%)」、FY2025有報 docID S100W451 では「2025年3月期のメディア事業は…処方箋ネット受付件数が603万件 (前期比119%)」と記述されており、参照しているのが「前々期 (FY2023)」と「当期 (FY2025)」のため、間のFY2024 (2024年3月期) の絶対値は本レポートでは603÷1.19=507万件として推計しています)

絶対水準で見ると、2年で約1.45倍 (416→603) のペースで伸びており、メディア事業はくすりの窓口の中で最も拡大ペースが速い事業です。導入施設数の進捗で見ると、 FY2024年末 38,795施設 → FY2030年末 10万施設 (中計目標) という6年間で約2.6倍 (CAGR約17%) の拡張パスに対し、3事業合計のFY2025のストック売上は2年でメディア+1.8倍・お薬箱+1.9倍・基幹システム+2.6倍とすでに同等以上のペースで進んでおり、 施設導入ペースが中計パスをやや先行している 可能性があります。ただし、導入施設数のFY2025末確定値・FY2030中計目標との進捗パスは本決算の中計開示で正式確認したい論点です。

みんなのお薬箱事業 — 流通額減少だが収益モデル転換中の可能性

医薬品流通額 (薬局間で売買された医薬品の総額) と対象施設保有数の推移を整理すると次のとおりです。

FY (3月期)流通額 (億円)流通額前期比対象施設保有数1施設あたり流通額 (推計)出典
20231,990+28%(推計3,750)約5,300万円FY2024有報 docID S100TWG5 (FY2023実績の振り返り記述)
2024約2,339 (推計)+18% (推計)4,421約5,290万円(FY2025有報の「2,245億円・前期比96%」から流通額逆算)
20252,245-4%8,048約2,790万円FY2025有報 docID S100W451

(注: FY2024流通額の絶対額は、FY2025有報の「2,245億円・前期比96%」記述から逆算した推計値です。FY2023の対象施設保有数はFY2024有報の「+18%」と4,421施設から逆算で推計3,750施設としています)

四半期ベースで見ると、FY2026の流通額は会社の決算説明資料 (推計値ベース) で次のような推移と整理されています。

FY2026四半期流通額 (億円)前年同期比
Q1557.6-4.7%
Q2567.00.0%
Q3596.1+3.3%

(出所: くすりの窓口 IR のQ3決算関連資料を参照したIR気象台による推計値。本決算開示時に正式値で再確認が必要)

Q1のマイナスからQ3のプラスへ回復軌道が見える形になっています。一方で、対象施設保有数はFY2024 4,421施設→FY2025 8,048施設と+82%伸びているのに対し、流通額は -4%減少しており、 1施設あたり流通額が約半減 している計算になります。

これだけ見ると業績の悪化を疑わせる動きですが、 連結ベースではFY2025売上+28.4%・営業利益+42.6%と大きく伸びている 点と整合させて読む必要があります。「みんなのお薬箱」事業はGMV (流通額) ではなく手数料・月額料収入を売上計上するビジネスモデルで、流通額は「流通額型サービス (仕入サポート)」と「定額課金型サービス (e-オーダー月額料・不動在庫サブスク)」のうち前者だけに対応する指標です。

会社のQ3決算説明資料 (推計値ベース) では、FY2026の流通額MIX変化として「仕入サポートは減少する一方、e-オーダー月額料・不動在庫売上は増加」というコメントが確認できます。2024年11月にE-BONDホールディングスとの業務提携で仕入サポートサービスがリニューアルされていることも踏まえると、 会社は流通額型 (取扱高に連動) からサブスクリプション型 (施設数×月額) への収益モデル転換を進めている過渡期 と読める材料が揃っています。会社が4/24の修正理由として挙げた「ストック粗利の順調な拡大」というコメントも、サブスクリプション型の月額収入が伸びていることと整合的です。みんなのお薬箱事業のストック売上も、FY2022 1,387百万円→FY2025 2,665百万円と1.9倍に拡大しており、サブスクリプション型の収益基盤は着実に積み上がっています。

つまり「1施設あたり流通額の半減」は、

  • A. 収益モデル転換に伴う一時的な指標悪化: GMVが下がっても月額固定収入が上回って結果として売上・利益が伸びる過渡期 — 連結業績+28.4%/+42.6%・ストック売上1.9倍化と整合
  • B. 業績悪化の前兆: 単純に主力サービスの単価低下が起きており、新規施設の活用度も低く、いずれ売上・利益にも響いてくる先行指標

の両方の解釈が成り立ちます。本決算の事業別売上・利益開示で「みんなのお薬箱事業の売上が伸びているか縮んでいるか」を確認すれば、AかBかが切り分けられます。Q別流通額がQ1 -4.7%→Q3 +3.3%へと改善している点と、会社が4/24に営業利益を再上方修正している事実は、現時点ではAの解釈寄りと整理しています。

基幹システム事業 — 調剤報酬改定対応のシステム需要を取り込み

基幹システム事業 (調剤薬局向けレセプトコンピュータ・電子薬歴・調剤管理システム) はFY2024で売上21.55億円・前年比+23%・FY2025のストック売上ベースで1,512百万円 (FY2022 567百万円から2.6倍) と、3事業の中で最もストック化のペースが速い事業です (docID S100TWG5)。

事業内容としては、子会社の㈱エーシーエス (仙台)・㈱メディカルJSP (京都)・㈱モイネットシステム (神戸) が地域別にレセコン・電子薬歴・調剤監査システム等の販売・保守を担う構造です (有価証券報告書 docID S100W451 主要設備)。

FY2026の追い風としては、 2026年度調剤報酬改定 (2026年6月施行) に伴うシステム改修需要が挙げられます。今回の改定では、対物業務 (調剤・在庫管理) から対人業務 (服薬指導・フォローアップ) への評価軸の転換が進められたほか、後発医薬品調剤体制加算の改編・地域支援体制加算の見直し・電子処方箋関連加算の整備など、レセコン・電子薬歴側のシステム対応が広範囲で必要となります (2026年度調剤報酬改定 メディコム解説)。FY2026後半 (Q3-Q4=2025年10月-2026年3月) はこの対応需要の取り込み期にあたり、Q3単独の利益率高水準に寄与している可能性があります。

なお、FY2025の3事業別売上 (FY2024有報のような明示テーブル) は、現状FY2025有価証券報告書のXBRL構造化抽出では確定的に取れていません。本決算と同時に開示される決算説明資料で、3事業別売上・利益・KPIの正式テーブルが公開される見込みで、ここで基幹システム事業の通期売上・伸び率が初めて確定値で確認できることになります。

電子処方箋管理サービス新機能の特需 — FY2025業績の一時的押し上げ要因

電子処方箋は、紙の処方箋を電子データ化し、医療機関と薬局でオンライン共有する厚生労働省主導のシステムで、2023年1月から運用開始されました。FY2025期中 (2024年4月-2025年3月) には、重複投薬チェック機能や複数医療機関情報の参照機能などの新機能が順次追加され、調剤薬局・医療機関のシステム改修需要・サービス利用需要が一時的に高まりました。

くすりの窓口は、FY2026期初予想 (2025年5月14日付) のコメントで、この一時特需に言及しています。フィスコ Research Memoの解説によれば、会社は次のように整理しています (フィスコ Research Memo via 株探 (2025/12/26))。

比較ベース売上前年比営業利益前年比
特需込み (会社予想ベース)+9.8%+12.6%
特需を除いた基調ベース+15.0%+33.3%

つまり、 FY2026の会社予想 (営業利益22.0億円・前年比+12.6%) は特需剥落の影響を含んだ数字 で、特需を除いた基調的な伸びは売上+15%・営業利益+33%と会社は見立てています。

その後、4/24に営業利益を26.81億円 (期初比+21.9%・前年比+37.2%) まで再上方修正しています。これを基調ベース (特需を除いた前提) で見ると、FY2025の特需除外水準を出発点に営業利益が +33%以上のペースで伸びる想定が、現時点でもさらに上振れている可能性を示唆します。本決算の決算説明資料で、特需込み・特需除く両方の数字が開示されれば、FY2027以降の継続性を読むうえでの重要な情報になります。

4/22 M&A — 医療機関セグメントへの足場づくり

2026年4月22日付臨時報告書で、くすりの窓口は次のM&Aを開示しました (2026年4月22日付臨時報告書 くすりの窓口 IR)。

対象会社形態主要事業直近期実績 (推計)
㈱テクノネットワーク100%取得 (特定子会社化)九州地区中心にORCA電子カルテを1,200以上の医療機関に導入・保守売上7.2億円・営業利益0.89億円・純資産4.4億円 (2025年9月期)
㈱ケインググループ会社化 (テクノネットワーク完全子会社化に連動)医療情報システムのワンストップサービス売上38百万円・営業利益7百万円 (2025年7月期)

(出所: 2026年4月22日付くすりの窓口臨時報告書、テクノネットワーク・ケイングの直近期業績はM&A情報サービスの公表値の推計)

このM&Aの主題は、 「中期経営計画10万施設目標を達成するための医療機関セグメント開拓」 にあると整理できます。

くすりの窓口の対象施設は現状約4.7万軒 (調剤薬局3.96万軒+介護施設0.23万軒+医療機関0.51万軒) で、調剤薬局カバーは全国市場6.2万軒に対して約63%とすでに高水準です。10万施設目標 (現状の2.1倍) を達成するためには、薬局以外のセグメント (医療機関・介護施設) を取り込む必要があります。テクノネットワークは九州地区を中心に1,200以上の医療機関にORCA電子カルテを導入しており、これは「医療機関セグメントへの足場確保」の入口となる買収です。1,200施設は対象施設全体 (約4.7万軒) の約2.6%増ですが、医療機関セグメント単体 (現状約5,065軒) で見ると 約24%増 に相当する規模です。より重要なのは「医療機関セグメントへ進出するノウハウ・営業網・既存顧客リレーション」を一括取得できる点で、ここを起点に医療機関セグメントを横展開していけるかが今後の試金石になります。

加えて、政府の医療DX推進方針との整合性も無視できない要素です。内閣府の「医療DXの推進に関する工程表 (2023年6月)」および厚生労働省の医療DX施策では、2030年までに概ねすべての医療機関への電子カルテ普及・電子カルテ情報の標準化を目指す方針が打ち出されており、ORCA電子カルテはその標準化のベース技術の一つです (内閣官房 医療DX推進本部)。電子カルテ標準化の流れに乗ることで、テクノネットワークの既存1,200施設だけでなく、新規導入施設の取り込みでも優位に立てる位置づけと考えられます。

取得対価は非公表ですが、開示によると「直前会計年度末の純資産の15%未満」の規模に該当します。くすりの窓口のFY2025末純資産85.17億円を基準にすると、取得対価の上限は約12.8億円と推計され、テクノネットワークの直近純資産4.4億円・営業利益0.89億円から逆算すると、取得倍率は純資産ベースで約3倍・年間営業利益ベースで約14倍程度の範囲が想定されます。本決算と同時に開示される企業結合等関係注記で正確な取得対価とのれん見込みを確認する見込みです。

業績影響については、 取得実行日が2026年5月1日のため、FY2026 (2026年3月期=2026年3月末で終了) には連結貢献ゼロ・FY2027 (2027年3月期) が連結初年度 となります。FY2027は5/1-3/31の約11ヶ月分が連結対象で、テクノネットワーク2025年9月期営業利益0.89億円・ケイング2025年7月期営業利益0.07億円から、初年度寄与は営業利益で約0.8億円 (=0.96億円×11/12) と試算されます。FY2028以降は通年12ヶ月分の連結寄与で、年間約1億円弱の営業利益が積み上がる見込みです。

FY2026業績予想の3段階推移 — 売上据え置き・利益率上振れの構造

2025年5月14日 (期初) ・2026年2月13日 (Q3決算同時) ・2026年4月24日 (本決算前) の3段階で通期業績予想がどう動いたかを整理します。

指標期初予想 (2025/5/14)2/13修正 (Q3同時)4/24修正 (本決算前)期初比
売上高 (億円)123.0123.0 (据え置き)123.3+0.2%
営業利益 (億円)22.024.526.81+21.9%
経常利益 (億円)21.3524.026.66+24.9%
純利益 (億円)22.4026.929.0+29.5%
営業利益率17.9%19.9%21.7%+3.8pt
年間配当 (円)36 (推計)3638 (中間18+期末20)+2円
EPS (円)約201236.79約260

(出所: 期初予想は2025年5月14日付FY2025本決算短信に併記された通期予想、2/13・4/24修正は くすりの窓口 IR で確認可。EPS約260円は純利益29億円÷期中平均株式数11,158千株 (Q3決算短信時点) から計算。期初予想EPS約201円も同じ期中平均ベース (純利益22.40億÷11,158千)。なお期初予想時点で純利益22.40億円が経常利益21.35億円を上回るのは、FY2025に続いてFY2026も法人税等調整額のプラス影響 (繰越欠損金の引継ぎに伴う税効果) を見込んでいるためで、FY2026 Q3累計実績でも純利益21.12億円 > 経常利益20.11億円となっている同じ構造です)

この表から読み取れるのは、 売上は期初予想からほとんど動いておらず、利益・利益率の上振れが上方修正の本体 という構造です。期初の営業利益率17.9%が4/24時点で21.7%まで +3.8pt 上振れたことが、営業利益22.0→26.81億円 (+21.9%) という大幅修正の正体です。

会社が4/24修正の理由として挙げているのは「ストック粗利の順調な拡大とコスト適正化により、営業利益・経常利益が予想を上回る実績推移」というコメントで、トップライン主導の上方修正ではなく、利益効率の改善 (営業利益の上振れ +21.9% > 売上の上振れ +0.2%) が主因です。本決算の決算説明資料で、ストック粗利の構成 (e-オーダー月額料・継続課金型の比率推移) がどう開示されるかが論点になります。なお、会社の役員報酬制度では業績連動指標として「売上+営業利益率」が採用されており、 「売上はほぼ期初通り・利益率が +3.8pt 上振れ」という今回の修正構造は、業績連動目標と整合した経営運営が機能している裏付け と読めます (有価証券報告書 役員の報酬等 docID S100W451)。

FY2026本決算 (5/14) ・FY2027来期のIR気象台シナリオ統合表

Q3進捗との突合と、本決算の3シナリオ・来期FY2027の3シナリオを統合表で整理します。

Q3累計進捗

指標Q3累計 (実績)4/24修正後通期進捗率
売上高 (億円)89.27123.372.4%
営業利益 (億円)20.1526.8175.2%
経常利益 (億円)20.1126.6675.4%
純利益 (億円)21.1229.072.8%

(出所: 第3四半期決算短信および4/24業績予想再修正、いずれも くすりの窓口 IR で参照可)

進捗率はいずれも72-75%帯で、Q4 (2026年1-3月) の単独業績で残りの25%程度を稼ぐ前提です。

シナリオ統合表 (今期+来期 × 会社予想 / IR気象台3シナリオ)

指標会社予想IR気象台 上振れIR気象台 中央IR気象台 下振れ
FY2026 (今期、2026年3月期)
売上 (億円)123.3125123.3122
営業利益 (億円)26.8129.026.8124.5
営業利益率21.7%23.2%21.7%20.1%
純利益 (億円)29.031.029.026.9
年間配当 (円)38403836
EPS (円)約260約278約260約241
FY2027 (来期、2027年3月期)
売上 (億円)5/14開示154146129
営業利益 (億円)5/14開示37.031.027.0
営業利益率5/14開示24.0%21.2%20.9%
純利益 (億円)5/14開示38.932.628.4
年間配当 (円)5/14開示約52約44約38
EPS (円)5/14開示約349約292約255

(注: FY2026中央=会社線 (4/24修正後) と同値、上振れ=Q3単独利益率を Q4 にそのまま外挿、下振れ=2/13修正水準への巻き戻し。FY2027の会社予想列は本決算 (5/14) で同時開示見込みのプレースホルダで、IR気象台3シナリオは独自試算。FY2027の純利益は「純利益/営業利益=1.05」 (FY2025・FY2026に発生している繰越欠損金引継ぎに伴う税効果が継続する前提) で算出。配当はFY2026配当性向14.9%を維持する前提、EPSは期中平均株式数11,158千株 (Q3決算短信のaveragesharesベース) で算出)

FY2026本決算の見方: 会社は4/24に営業利益24.5→26.81億円 (+8.6%) へ自発的に上方修正済みで、Q3進捗75%とQ3単独利益率 (約22-25%帯と推計) の継続度合いが、IR気象台の上振れシナリオ営業利益29.0億円に届くかを左右します。 上振れシナリオは会社線 (4/24時点) をさらに上回る前提 で、Q3単独利益率がQ4まで継続することが必要条件です。会社の自発的上方修正履歴を踏まえると、下振れシナリオ (2/13水準への巻き戻し) への可能性は限定的との見方も成立しうる材料が揃っています。

FY2027来期の見方: 中央シナリオの前提は、既存事業の売上が約123億円→139億円 (+13%、メディア事業の処方箋ネット受付件数の伸びが続く前提) ・利益率はFY2026中央シナリオの21.7%水準を維持・テクノネットワーク11ヶ月寄与で売上+約6.6億円・営業利益+約0.8億円で、合計146億円となります。電子処方箋特需の剥落影響が一巡しつつ、後述の薬価・調剤報酬改定の影響が出る年でもあります。会社ガイダンスは保守バイアスを反映してさらに控えめに出る可能性があり、IR気象台の中央シナリオより下方の水準で開示されてもおかしくありません。

FY2027への薬価・調剤報酬改定の影響

FY2027 (2027年3月期=2026年4月-2027年3月) は、 2026年度の薬価・調剤報酬改定が通期で影響する最初の年 にあたります (2026年度調剤報酬改定 メディコム解説)。

改定要素施行日内容くすりの窓口への影響方向
薬価改定 (本改定)2026年4月1日薬価+0.87%引下げ中立 (流通額型ビジネスへの間接影響あり)
調剤報酬改定 (本改定)2026年6月1日技術料 +0.08% (ほぼゼロ)プラス材料優位 (システム改修需要)
後発医薬品調剤体制加算改編2026年6月1日加算統合・安定供給体制評価プラス (基幹システム更新需要)
対物→対人業務評価への転換2026年6月1日服薬指導・フォローアップの評価軸引上げ強いプラス (デジタルツール需要)
都市部新規開局規制強化2026年6月1日集中率85%超・月600回超で調剤基本料2中立〜マイナス (顧客薬局の収益圧力)
薬価中間年改定2027年4月1日 (見込み)毎年改定の制度継続中立

(出所: 厚生労働省 令和8年度診療報酬改定の概要 (調剤)2026年度調剤報酬改定 メディコム解説)

総合的には、 FY2027は「対物→対人業務転換」というデジタルツール需要にとっての追い風が、薬局収益圧力 (技術料ほぼゼロ・都市部規制強化) を上回りやすい構造 と読めます。くすりの窓口の3事業はそれぞれ:

  • メディア事業: 処方箋ネット受付・対人業務支援ツールへの需要拡大 → プラス
  • みんなのお薬箱事業: 薬局の在庫圧縮・効率化ニーズの高まり → プラス
  • 基幹システム事業: 改定対応のシステム改修需要 → プラス (FY2026下半期からFY2027前半に集中)

の波及が期待されます。一方で、都市部新規開局規制で薬局の新規出店ペースが鈍化すれば、新規顧客獲得の伸びがやや鈍化する可能性があります。本レポートの中央シナリオ (売上146億円・営業利益31億円) は、改定影響をプラス・マイナス両面で織り込んだ前提です。本決算と同時に会社が示すFY2027ガイダンスがこの想定とどうずれるかが、来期見通しを評価する焦点になります。

株価・バリュエーション

直近の株価指標

指標数値出所
株価 (2026年5月8日終値)2,882円株予報Pro 5592
時価総額約330億円同上
PER (FY2026会社予想ベース)11.1倍同上 (株価2,882円÷FY2026予想EPS 約260円=約11.1倍、期中平均11,158千株ベース)
PBR (FY2025末BPS基準)3.83倍株価2,882円÷BPS 753.05円 (有報 docID S100W451)
配当利回り (FY2026会社予想)1.32%株予報Pro
ROE (FY2025実績、税効果込み)27.45%同上 (実質ROEは税効果剥落で16-17%水準と推察)
自己資本比率 (FY2025末)69.5%同上

来期EPSと想定PERから組む想定株価レンジ

来期 (FY2027) のEPSシナリオと想定PER水準を組み合わせると、本決算後の想定株価レンジは次のように整理できます。

(1) 来期 (FY2027) のEPSシナリオ

統合表 (前述) で示した来期EPSシナリオを再掲します。

シナリオEPS純利益試算根拠
楽観約349円営業利益37.0億円×純利益/営業利益1.05=純利益38.9億円÷期中平均11,158千株
中央約292円営業利益31.0億円×純利益/営業利益1.05=純利益32.6億円÷期中平均11,158千株
下振れ約255円営業利益27.0億円×純利益/営業利益1.05=純利益28.4億円÷期中平均11,158千株

(注: 純利益/営業利益比率1.05はFY2025・FY2026の繰越欠損金引継ぎに伴う税効果が継続する前提。税効果が剥落する場合は同比率が0.65前後 (実効税率35%相当) まで下がり、純利益は試算値の約62%水準=中央シナリオで約20億円・EPS約181円となる点に留意。期中平均株式数は本決算で更新される見込みで、自己株取得・新株発行等があれば再算定が必要)

(2) 直近株価2,882円を起点にした現在のPER水準

現在の株価2,882円とFY2026会社予想EPS約260円 (期中平均株式数11,158千株ベース) から計算すると、PERは 約11.1倍 (=2,882÷260) です。グロース市場のヘルステック・高ROE銘柄として、当社のヒストリカル水準 (上場以降のレンジでおおむね10-16倍帯) では中位やや下方の評価となっています。

(3) PERが今後どの水準で評価されるかで動く想定株価レンジ

3つのEPSシナリオと3つのPER水準 (低位10倍・中位13倍・高位18倍) を組み合わせると、9パターンの想定株価が機械的に算出できます。

低位 PER 10倍中位 PER 13倍高位 PER 18倍
楽観 EPS 349円3,486円 (現状比+21%)4,532円 (+57%)6,275円 (+118%)
中央 EPS 292円2,922円 (+1%)3,798円 (+32%)5,259円 (+82%)
下振れ EPS 255円2,545円 (-12%)3,309円 (+15%)4,581円 (+59%)

(注: PER低位10倍 = 現状PER 11.1倍からやや切り下がる場合 (来期ガイダンスが弱め・下振れ確認)、中位13倍 = 現状水準を維持しつつ来期EPS反映、高位18倍 = ヒストリカル上限水準への切り上がり (来期上振れ・中計上方修正等で評価切り上がる場合)。現状比%は2026年5月8日終値2,882円対比)

これは目標株価ではなく、 「来期EPSがこの水準で着地し、PERがこの倍率で評価された場合に機械的に計算される株価」 を提示するもので、判断材料の整理として位置づけています。来期FY2027の会社ガイダンス (本決算同時開示見込み) が中央シナリオEPS 292円より上か下か、 PER水準がヒストリカル中位 (13-15倍) に切り上がるかどうかで、レンジ内のどの組み合わせに引き寄せられるかが決まります。

リスク要因

リスク要因は、 本レポートの3シナリオには定量的に織り込まれていない不確実性 です。発生時期・確率を本レポート執筆時点で精度よく見積もれない事象に絞っています。3シナリオは「Q4実績の振れ幅」と「FY2027の事業基調の伸び率」で構成しており、以下のリスクが顕在化した場合は、シナリオ全体が下振れる方向に動きます。

  • 「みんなのお薬箱」事業の収益モデル転換が想定どおり進まないリスク: 流通額型 (仕入サポート) からサブスクリプション型 (e-オーダー月額料) への移行が進んでいる前提で連結+28.4%が成立していますが、転換が頓挫した場合は、流通額減少 (-4%) や1施設あたり流通額の半減が業績低下に直結します
  • 電子処方箋管理サービス新機能特需の剥落幅が想定を上回るリスク: 会社は特需を除いた基調的な伸びを売上+15%・営業利益+33%と見込んでいますが、特需依存度が想定より高ければFY2027以降の伸び率がさらに鈍化する可能性があります
  • EPARKサービス売上比39.4%の集中リスク: メディア事業の中核 (EPARKくすりの窓口) は親会社EPARK (光通信子会社) のサービスを承継した形で運営されており、契約変更や解約があった場合の影響度大 (有価証券報告書 事業等のリスク docID S100W451)
  • 調剤報酬改定 (2026年6月施行) の負の影響が想定を上回るリスク: 都市部新規開局規制で薬局の出店ペースが鈍化した場合、当社の新規顧客獲得が伸び悩む可能性があります
  • テクノネットワーク取得後ののれん減損リスク: 取得対価非公表ながら純資産の15%未満 (約12.8億円上限と推計)・取得倍率の高さ次第ではのれんが計上され、政府の医療DX方針が遅延した場合の減損リスクが想定される (有価証券報告書 事業等のリスク 業務提携・M&A 項)
  • 投資事業組合の売出しによる短期需給悪化: 発行済株式の44.0%を投資事業組合2社が保有 (FY2025末)。発生可能性「高」・1年以内 (有価証券報告書 docID S100W451)。NBSEは2025年8月以降に20ポイント分を売却済みで、残るNBSE6.09%・SBI16.41%が次の売却候補。なお流通株式比率24.3%は東証グロース上場維持基準25%を下回っており、投資事業組合の売却は需給リスクと流動性向上の二面性を持ちます

本決算 (5/14) で確認したい論点

リスク要因が「シナリオに織り込めない不確実性」だったのに対し、ここでは 「本決算で開示されるべき情報・開示されればシナリオの前提を更新できる論点」 を整理します。

  1. 3事業の事業別売上・利益率の正式テーブル開示: メディア事業 / みんなのお薬箱事業 / 基幹システム事業のFY2025実績の事業別売上・利益率と、FY2026会社予想 (もし示されれば)
  2. 電子処方箋管理サービス新機能特需の定量開示: FY2025業績への寄与額・FY2026の特需剥落見込み・特需を除いた基調の伸び率
  3. 来期FY2027ガイダンスと中期経営計画の更新: 「FY2030 10万施設」目標の進捗・テクノネットワーク取得後の上方修正の有無・薬価改定影響を織り込んだFY2027営業利益のレンジ
  4. テクノネットワーク取得対価とのれん: 正確な取得対価額・のれん認識額・FY2027からの寄与の業績予想への反映方法

結論

くすりの窓口は、上場 (2023年10月4日) から2026年にかけて、3事業のスケール拡大 (売上74→112億円、+51%) ・利益率改善 (14.2%→17.4%、+3.3pt) ・配当開始 (FY2025初配当27円、FY2026予想38円)・収益モデル転換 (流通額型 → サブスクリプション型、ストック売上比率64%まで上昇) ・M&A戦略の本格化 (テクノネットワーク子会社化) という構造変化を同時並行で進めてきました。

5/14の本決算では、4/24に上方修正された営業利益26.81億円・利益率21.7%・配当38円という会社線が実績として裏付けられた場合、 会社の業績連動報酬目標 (売上+営業利益率) と整合した経営運営が機能している ことの裏付けになります。「売上は期初予想通り・利益率が +3.8pt 上振れ」という上方修正の構造が、業績連動目標と一致して動いている点が読み取れます。

来期FY2027は、2026年度調剤報酬改定の通年影響が出る最初の年で、対物→対人業務転換というデジタルツール需要への追い風が、薬局収益圧力を上回りやすい構造と読みました。本決算と同時開示される会社のFY2027ガイダンスがこの想定とどうずれるか、中期経営計画 (FY2030 ストック売上200億円・営業利益50億円・10万施設) の進捗と上方修正の有無が、中長期の方向感を整理する論点になります。

データソース

免責事項: 本資料は EDINET および会社の公開IR資料に基づく分析であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。記載した将来予測 (3シナリオ等) は本レポート執筆時点の前提に基づくIR気象台の試算であり、実績との乖離・前提の変動により結果が異なる可能性があります。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

  • くすりの窓口(5592)
    グロース情報通信・サービスその他

    4/22テクノネットワーク子会社化と4/24業績予想の再上方修正を踏まえたFY2026本決算プレビュー

本レポートは公開情報に基づく分析であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。

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