ディスコ(6146) FY2025 Q4 決算振り返り — 三重の上振れと、それでも織り込み済みだった株価
Xでシェアディスコ(6146)のFY2025 Q4は売上1,331億円・営業利益588億円・配当376円と三重の上振れで着地し、6期連続最高益を更新。一方で株価は決算翌営業日に-3.78%下落しsell-the-news反応となった。IR気象台が4/21に公表した予測との突合、乖離要因(連結/個別比率1.27へのレジームシフト・余剰資金÷3配当ロジックの過小評価)、FY2026 Q1ガイダンス(売上1,061億円・出荷1,320億円)を踏まえた観察リストをまとめた振り返りレポート。
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作成日: 2026年4月25日 対象決算: 2026年3月期 第4四半期・通期 前提レポート: FY2025 Q4 決算予測分析(4/21公表)
サマリー
ディスコ(6146)の2026年3月期通期決算は、 売上高4,369億円(+11.1%)・営業利益1,850億円(+10.9%)・純利益1,355億円(+9.4%) といずれも会社予想を上回り、 6期連続最高益更新 の高水準で着地した。Q4単独では売上高1,331億円・営業利益588億円・営業利益率44.2%と、IR気象台の中央シナリオ予想(売上1,240億円・営業利益534億円)を上回るアップサイドサプライズとなった。
最大のサプライズは 期末配当376円(年間505円) で、会社予想308円・IR気象台予想シナリオ「320円超で上振れ」に対し +68円の大幅上振れ 。年度末余剰資金624億円を踏まえた追加配当ロジック(余剰÷3=208億円)が機械的に発動した結果である。
FY2026 Q1ガイダンスは 売上高1,061億円(+18.0%YoY)・出荷額1,320億円(過去最高更新) と強気。生成AI関連需要の継続と先端パッケージング案件の本格立ち上がりを織り込んだ内容で、IR気象台の予想シナリオ「Q1ガイダンス1,000億円以上で好感」を上回る水準となった。
しかし株価は決算翌営業日(4/23)に終値-3.78%で反応 。寄付は+2.0%のギャップアップで好決算を素直に織り込んだものの、場中に高値76,350円から安値71,230円まで-6.7%の急反落。出来高は4.57百万株と直前の1.6倍に膨らみ、 「業績は買えるがバリュエーションは買えない」典型的なセル・ザ・ニュース展開 となった。決算予測レポートで指摘した期待値-2.9%・リスクリワード非対称(上+5%/下-16%)の警鐘がほぼそのまま顕在化した形である。
予測精度の観点では、売上高・営業利益・GP率・用途別ミックスの読み筋は機能し、 株価リアクションの方向性も的中 した。一方で、 追加配当ロジックの読み込み不足 が業績予想面での最大の反省点となった。
予想 vs 実績 比較表
2.1 Q4単独業績(連結)
| 項目 | IR気象台予想(中央) | 会社予想 | 実績 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,240億円 | 1,152億円 | 1,331億円 | 上振れ (予想比+91億円, +7.3%) |
| 売上総利益率(GP率) | 70~71% | — | 70.9% | レンジ内・想定通り |
| 営業利益 | 534億円 | 459億円 | 588億円 | 上振れ (予想比+54億円, +10.1%) |
| 営業利益率 | 43.1% | 39.8% | 44.2% | +1.1pt 上振れ |
| 経常利益 | — | 458億円 | 585億円 | 会社予想比+127億円 |
| 純利益 | 393億円 | 338億円 | 429億円 | 予想比+36億円 |
| 出荷額(Q4) | — | — | 1,216億円 | 過去最高 |
2.2 通期業績(連結)
| 項目 | IR気象台予想(中央) | 会社予想 | 実績 | 前期比 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 4,278億円 | 4,190億円 | 4,369億円 | +11.1% |
| 営業利益 | 1,796億円 | 1,721億円 | 1,850億円 | +10.9% |
| 営業利益率 | 42.0% | 41.1% | 42.3% | -0.1pt |
| 純利益 | 1,320億円 | 1,264億円 | 1,355億円 | +9.4% |
| EPS | — | — | 1,249.84円 | 過去最高 |
| ROE | — | — | 25.1% | 前期27.6% |
| 出荷額(通期) | — | — | 4,428億円 | +10.3%, 過去最高 |
2.3 配当(最大の上振れ要因)
| 項目 | IR気象台予想 | 会社予想 | 実績 | 評価 |
|---|---|---|---|---|
| 中間配当 | (確定済) | — | 129円 | — |
| 期末配当 | 308円が想定線、320円超で上振れ | 308円 | 376円 | 大幅上振れ(+68円, +22.1%) |
| 年間配当 | 437円相当 | 437円 | 505円 | 前期比+92円(+22.3%), 過去最高 |
| 配当性向(連結) | — | — | 40.4% | 前期36.1% |
2.4 FY2026 Q1ガイダンス vs IR気象台予想
| 項目 | IR気象台予想 | 実績ガイダンス | 評価 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 950~1,050億円(中央1,000) | 1,061億円 (+18.0%YoY) | レンジ上限超過= 「好感」シナリオ |
| 営業利益 | — | 420億円 (+21.8%) | — |
| 純利益 | — | 295億円 (+24.1%) | — |
| 出荷額 | — | 1,320億円 | Q4(1,216億円)を更新する 過去最高 |
| 想定為替 | — | 1USD=157円 | 円安寄り |
乖離要因分析
3.1 Q4売上高 +91億円上振れの構造
予想時点で個別売上1,049億円(4/6発表)を起点に「連結/個別比率1.20(7四半期平均)」を適用し連結売上1,240億円を中央値とした。 実際の比率は1.27 で想定を6.5%上回った。
要因の分解:
- 海外子会社経由販売の比重上昇: 台湾向け売上が前期744億円→1,174億円(+57.8%)と急増。海外現地販社経由の取引が連結売上の押し上げに寄与
- 為替影響: FY25通期営業外で為替差損1,212百万円が計上された一方、外貨建売上の円換算で売上面はプラス寄与
- 検収進捗の上振れ: Q4は出荷額1,216億円に対し売上1,331億円と「売上>出荷」。前期からの繰越検収が想定以上に進捗
3.2 営業利益 +54億円上振れの中身
GP率70.9%はIR気象台予想レンジ(70~71%)の中央近辺で着地。利益上振れの主因は 売上拡大による販管費レバレッジ である:
- 販管費はQ3 30,723百万円 → Q4 35,625百万円と+4,902百万円(+16.0%)増加
- 一方で売上総利益はQ3 78,064 → Q4 94,402で+16,338百万円(+20.9%)増加
- 結果として営業利益はQ3 47,340 → Q4 58,777で+11,436百万円(+24.2%)と販管費増を吸収して伸長
通期では人件費・研究開発費中心に販管費は前期比+9.7%増加したが、売上+11.1%・売上総利益+10.4%が上回り増益を確保した。
3.3 配当376円のメカニクス(最大のサプライズ)
ディスコの配当ポリシー3階建ての発動状況:
| ステップ | 計算式 | 金額 |
|---|---|---|
| ① 業績連動部分 | 連結下期純利益 × 25% | 184円 |
| ② 安定配当 | 半期10円(年20円)を確保 | (①でカバー済み) |
| ③ 追加配当 | 余剰資金 × 1/3 | +192円 |
| 合計(期末配当) | ①+② or ③が大きい方 | 376円 |
追加配当の計算詳細:
- 年度末現預金: 2,185億円(契約負債等を考慮した実質残高)
- 必要資金: 1,561億円(運転資金728+技術購入予備320+税金・配当349+設備拡張164)
- 余剰資金: 624億円 → その1/3 = 208億円(配当換算192円相当)
IR気象台予想時点では「配当性向ベースで308円(会社予想と同等)」と置き、追加配当部分の織り込みが甘かった。 実質純現預金が2,185億円まで積み上がった事実(BS現預金2,846億円・契約負債含む調整後) を見落とし、「余剰資金が必要資金を超過する」確度を低く見積もっていた。
3.4 用途別ミックスの読み筋は的中
予想レポートで指摘した「ダイサ+25%、グラインダ-10%」のYoY見立てに対する実績(出荷額ベース、通期):
- ダイサ: 通期 +1%(構成比31%)、4Q QoQ+23% — 生成AI/OSAT向けICが伸長
- グラインダ: 通期 +17%(構成比28%)、4Q QoQ-9% — パワー半導体向け減速の影響
- 周辺装置: 通期 -2%(構成比3%)だがQ4 QoQ+69%と急回復
用途別の構造変化(より顕著):
- グラインダ用途別IC比率: FY24Q4 48% → FY25Q4 76% (+28pt)
- 同「その他半導体(=パワー半導体)」: 22% → 7%
- ダイサ用途別IC比率: FY24Q4 62% → FY25Q4 69%
→ 生成AI/ロジック向けへの構造シフトがデータで確認できた。「パワー半導体減速」も予想通り顕在化。
教訓 — 予測手法へのフィードバック
① 配当の追加配当ロジックを機械的に適用すべきだった
- ディスコの配当方針は「業績連動25% + 余剰資金÷3」と明文化されており、BS情報から事前に試算可能
- IR気象台予想時点で「現預金2,292億円(Q3末)」を見ながら「会社予想の308円で十分」と保守的に置いた → これが最大の機会損失
- 改善策: 次回以降は (a) 半期純利益×25%、(b) 期末現預金から必要資金を差し引いた余剰の1/3、を独立に試算し合計値を予想する
② 連結/個別比率は円安・海外比率上昇で1.25以上のレジームへ
- 過去7四半期平均1.20を採用したが、FY25通年では1.234、Q4単独では1.27
- 台湾向け+57.8%・海外売上比率87.6%(Q4)というトレンドを踏まえると、今後は1.25以上を中央値に置く必要
③ Q4の「売上>出荷」パターンは検収進捗の判定指標
- 通期では出荷4,428 vs 売上4,369と出荷>売上(差60億円が未検収パイプライン)
- だがQ4単独では売上1,331 > 出荷1,216と逆転 → 前期からの繰越検収が予想以上に進捗
- 次四半期予想では「出荷-売上の差(未検収残)」をBS契約負債(50,006百万円, 前期43,933百万円)と紐づけて検証する
④ 用途別ミックス予想は概ね機能 → 継続採用
- ダイサ・グラインダ・周辺装置の伸び方向の予想は的中
- 生成AI(IC向け)の継続伸長 vs パワー半導体減速のクロスパターンは引き続き読み筋として有効
⑤ 株価リアクション予想は「方向性的中」、定量も近似
- 予想時点でPER62.5倍・PBR14.6倍の高バリュエーションを根拠に「期待値-2.9%、好決算でも+5%」と置いた
- 実績は4/23終値 -3.78% で 期待値-2.9%にほぼ着地 (寄付は+2.0%まで上昇したが場中売り戻し)
- 示唆: 業績予測と並行して「織り込み水準・需給(信用買残・出来高)・バリュエーション相対値」のフレームワークが有効に機能した
- 継続検証点: 株価リアクションの定量予想は1四半期では偶然性が排除できない。同フレームを次四半期以降も適用し、「期待値±5%以内に収まるか」をトラックする
決算前後の株価動向
5.1 日次株価推移
| 日付 | 始値 | 高値 | 安値 | 終値 | 前日比 | 出来高 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2026/4/21(月) 予想公表日 | 72,000 | 74,350 | 72,000 | 74,240 | — | 1,848,000 |
| 2026/4/22(水) 決算当日(引け後発表) | 74,500 | 75,500 | 74,180 | 74,830 | +590 (+0.79%) | 2,794,300 |
| 2026/4/23(木) 決算翌営業日 | 76,330 | 76,350 | 71,230 | 72,000 | -2,830 (-3.78%) | 4,570,700 |
| 2026/4/24(金) | 73,030 | 74,310 | 71,090 | 71,700 | -300 (-0.42%) | 2,782,200 |
5.2 値動きの解釈
4/22(決算当日) — 引け後発表のため日中値動きは決算織り込みなし。終値74,830円、出来高はやや増加(2.79M)で「結果待ち」のスタンス。
4/23(決算翌営業日) — 値動きが本決算反応の本丸:
- 寄付76,330円(前日比+1,500円, +2.0%のギャップアップ) — 売上・利益・配当・FY26 Q1ガイダンスの三重サプライズを素直に好感
- 高値76,350円 を寄付直後につけた後、 場中ほぼ一貫して売られ続け、安値71,230円(高値比-6.7%) に下落
- 終値72,000円(前日比-2,830円, -3.78%)、出来高4.57M(直近平均比1.6倍)
- 典型的な 「セル・ザ・ニュース」 パターン。 52週安値22,640円(2025年4月)から決算直前の高値水準73,000円台まで約+222%上昇 してきた相場で、好材料は段階的に織り込み済み。想定外サプライズである配当376円さえも追加買いを呼び込めなかった
4/24(金) — 弱含み続落。終値71,700円(-0.42%)で、 4/22終値比-4.18%(-3,130円) の累積下落
5.3 予測との答え合わせ
決算予測レポートで提示した投資判断ロジックの結果:
| 予測時の見立て | 実績 | 評価 |
|---|---|---|
| 期待値試算 -2.9% (4シナリオ加重平均) | 4/23終値ベース -3.78% | 概ね的中(やや下振れ) |
| リスクリワード非対称(上+5%/下-16%) | 高値+2.0%・安値-4.8%・終値-3.8% | アシンメトリーが顕在化 |
| 過去10Q決算翌日リターン平均 -0.46%(下落6勝4敗) | -3.78%(下落) | 平均より大きい下げ |
| 推奨スタンス「新規買い見送り、既保有は利確検討」 | 寄付76,330円(+2.0%)で利確機会あり | 方向性は適切 |
5.4 三重サプライズでも下げた構造的要因
決算自体は予想を超える内容(売上+91億円・営業利益+54億円・配当+68円・Q1ガイダンス強気)だったにもかかわらず-3.78%の反応となった背景:
- バリュエーションプレミアム: 決算前PER62.5倍・PBR14.6倍は半導体製造装置セクター内で突出(ASML PER 31倍、東京エレクトロン PER 25倍)。 好決算を出してすら、業績の伸びがバリュエーションに追いつかない構造
- 52週で+222%急騰の織り込み: 安値22,640円→高値水準73,000円台への急騰過程で、好決算期待は段階的に織り込み済み
- 信用買残のクライマックス: 寄付ギャップアップで利確売りが集中。出来高4.57Mは過去30営業日平均(2.8M前後)の1.6倍
- 円安想定為替157円のリスク認識: FY26 Q1見通しが円安前提に依存しており、為替反転時の業績下振れリスクが意識された可能性
FY2026に向けた観察リスト
本決算で得られた事実を踏まえ、次四半期以降の確認ポイントを優先度付きで整理した。本レポートでは独自の定量予想は提示せず、観察すべき論点と会社ガイダンスの整理に留める。
6.1 会社ガイダンスの整理
| 項目 | FY26 Q1 | FY26通期見通し |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,061億円 (+18.0%YoY) | 「四半期先のみ開示」方針で未公表 |
| 営業利益 | 420億円 (+21.8%YoY) | 同上 |
| 出荷額 | 1,320億円(過去最高) | — |
| CAPEX | — | 約330億円(羽田R&Dセンター新棟、広島郷原新工場含む) |
| R&D | — | 約360億円(積極継続) |
| 想定為替 | 1USD=157円 | — |
| 為替感応度 | USD1円=年間17億円 | — |
6.2 観察優先度
| 優先度 | 観察項目 | 判定基準 |
|---|---|---|
| A | HBM・先端パッケージング案件の本格立ち上がり時期 | Q1出荷1,320億円の中身、IRコメントで先端パッケージング比率が言及されるか |
| A | 追加配当ロジックの継続性 | FY26中間決算時の現預金残高と必要資金見直しの開示 |
| B | 地域構成リバランスの継続性 | 台湾向け増・米州韓国減トレンドが続くか、TSMC依存度の推移 |
| B | 連結/個別比率1.25以上のレジーム定着 | FY26 Q1個別売上が公表された時点で連結予想を逆算 |
| C | パワー半導体向けの底打ち | グラインダ「その他半導体」7%水準が下げ止まるか |
| C | 米国HBM対中規制の影響 | 中国向け売上の四半期推移(FY25 1,350億円→FY24 1,254億円で底堅さ) |
6.3 株価面の観察ポイント
| 項目 | 現状 | 注視ポイント |
|---|---|---|
| 株価水準 | 71,700円(4/24終値, 4/22比-4.18%) | 4/23安値71,230円・心理的節目70,000円のサポート機能 |
| PER水準 | 約57倍(EPS 1,249.84で計算, 4/24終値ベース) | FY26予想EPS基準だと低下するが、依然50倍超のプレミアム |
| 信用買残 | 決算前1,540,700株(4/21時点) | 4/23の出来高4.57M消化で買残縮小しているか次回開示で確認 |
| セクター相対 | 半導体製造装置セクターの中で突出した高PER | ASML・東京エレクトロンとの相対バリュエーションギャップが縮小するか |
6.4 アクション
- 中間決算(FY26 1H)発表時に追加配当の試算を再実施(余剰資金の取り崩し速度を観察)
- 決算翌週(4/28-5/2)の株価リバウンド有無 を観察。70,000円を割れずに反発できれば「健全な調整」、割れた場合は「セクター調整入り」のシグナル
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本レポートは公開情報に基づく分析であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。