開示要約
新日本科学が第53期(2025年4月〜2026年3月)の有価証券報告書を提出した。連結売上高は325億2,496万円と前期比111百万円(0.3%)増で4期連続の過去最高を更新した一方、営業利益は26億5,390万円で11.1%減、経常利益は58億3,304万円で9.6%減、親会社株主に帰属する当期純利益は45億6,669万円で7.3%減となった。 減益の主因は、主力のCRO事業で複数の大型試験の売上計上が2027年3月期にずれたこと、および人材強化・実験施設拡大・実験用NHPの国内繁殖体制確立への先行投資である。CRO事業の売上高は312億7,700万円(1.0%減)、営業利益は69億900万円(4.8%減)で売上高営業利益率は22.1%。米国子会社Satsuma Pharmaceuticalsは経鼻片頭痛薬「Atzumi」の事業化経費により25億4,500万円の営業損失を計上した。 非臨床事業の受注高は357億2,800万円と過去最高で11.3%増、期末は409億2,000万円と19.0%増。海外受注高は155億500万円(25.7%増)で総受注に占める海外比率は43.4%となった。 期末配当は1株30円で年間50円、総資産は1,050億5,551万円、自己資本比率は41.0%。定時株主総会には定款の一部変更と取締役14名選任の2議案が付議された。
影響評価スコア
☁️0i売上高325億2,496万円は前期比0.3%増で4期連続の最高を更新した一方、営業利益26億5,390万円は11.1%減、経常利益58億3,304万円は9.6%減、純利益45億6,669万円は7.3%減と主要3利益がそろって縮んだ。CRO事業で大型試験の売上計上が2027年3月期にずれたうえ、人材・実験施設・NHP繁殖体制への先行投資が重荷となり、同事業の売上高営業利益率は22.1%にとどまった。Satsuma社の営業損失25億4,500万円も利益を押し下げている。
期末配当は1株30円、中間20円と合わせ年間50円で前期と同額を維持した。配当総額は20億8,159万円で、1株当たり当期純利益109円69銭に対する配当性向は45.6%と、基本方針である連結配当性向30〜40%の上限を超える水準となる。取締役は12名から14名へ増員され、社外取締役6名は全員が独立役員として届け出済み。自己株式は586株にとどまり、還元手段は実質的に配当に限られる。
非臨床事業の受注高は357億2,800万円と過去最高で11.3%増、期末受注残高も409億2,000万円と19.0%積み上がった。欧米顧客からの受注は132億2,500万円と35.2%増え海外比率は43.4%へ上昇、グローバルメガファーマ1社からプリファードベンダー認定も取得した。2027年11月完成を目指すEU規格の大型NHP実験施設、国内CRO初のMPS受託、経鼻ワクチンの非臨床POC取得と中長期の収益基盤づくりが進む。
当期業績は2026年2月6日公表の修正予想を売上高・利益とも上回った旨が記載されており、有価証券報告書の提出自体が新たな材料となる余地は小さい。売上横ばいで主要3利益が減益という当期実績と、受注残高409億2,000万円という先行指標が相反するため株価の方向感は定まりにくい。2028年度に売上高500億円・経常利益200億円を掲げる中期目標との距離が当面の評価軸となる。
定款変更議案により株主総会・取締役会の招集権者と議長が取締役社長から取締役会長へ移る。筆頭株主Nagata and Companyが40.3%を保有する資本構成のもとでは権限集中への監視が要る。単体では関係会社株式評価損6億6,561万円を計上し、Satsuma社株式44億2,315万円と貸付金53億8,863万円は実質価額が著しく低下しながら回復可能性ありとされ重要な会計上の見積りに挙がる。自己資本比率も41.0%へ低下した。
総合考察
総合判定を動かしたのは、戦略的価値(+2)と業績インパクト(-1)・ガバナンスリスク(-1)の綱引きである。減益の中身は需要減退ではなく、大型試験の売上計上が2027年3月期へずれたことと、実験施設・人材・NHP国内繁殖体制への先行投資が重なった結果であり、受注高357億2,800万円・409億2,000万円がともに過去最高である点は、期ずれ分が翌期に戻る蓋然性を高める。 一方、投資フェーズの長期化は財務に表れている。総資産は1,050億5,551万円へ13.7%膨らむ半面、自己資本比率は41.0%へ低下し、当期は長期借入で100億円を追加調達した。年間配当50円を据え置いたものの配当性向は45.6%と方針上限の40%を超えており、増配余地は当面限られる。 注視点は3つ。2027年3月期にCRO事業の期ずれ分をどこまで取り戻せるか、2027年11月完成予定のEU実験棟が稼働に至るまでの費用負担、そしてSatsuma社のパートナリング契約の成否である。同社株式44億2,315万円と貸付金53億8,863万円の回収可能性は事業計画の前提に依存しており、交渉の長期化は評価損リスクに直結する。