日本電技 (1723) 2026年3月期 Q4決算振り返り — 営業利益118億円で会社線+3億・FY27会社予想125億円が中央シナリオに着地、配当は分割換算+40%

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IR気象台編集部個別株分析

日本電技 (1723) は2026年5月7日に2026年3月期本決算を発表し、営業利益118.21億円 (前期比+29.6%) で会社修正後予想 (1/28発表) 115億円から+2.8%上振れ、IR気象台事前予想3シナリオ (2026/5/5公開) では中央115億円と楽観129億円の中間に着地。同時開示のFY2027会社予想は売上515億円 (+11.1%)・営業利益125億円 (+5.7%)・営業利益率24.3%で、IR気象台事前予想FY2027中央シナリオ営業利益125億円と同水準。受注高540億円 (+23.4%) と次期繰越工事高+28.5%が来期の売上成長を裏付ける一方、産業システム事業は売上+26.5%・セグメント利益+102.5%で利益率11.6%→18.5%へ急改善。来期1株配当は分割後56円で前年160円 (分割換算224円) から+40%の大幅増配で、DOE基準は約7.6%水準。本レビューでは事前予想との予実差異、セグメント別ドリルダウン、来期会社予想の評価、株価反応、シナリオ再設計まで整理します。

決算サマリ

日本電技 (1723) は2026年5月7日13:00に、2026年3月期決算短信〔日本基準〕(連結) を開示しました。空調自動制御を主力とする設備サブコンの本決算で、結論からいうと営業利益は会社修正後予想 (2026年1月28日発表) を約2.8%上回り、IR気象台が2026年5月5日公開の事前予想レポート (以下「事前予想レポート」) で示した中央シナリオ 115億円と楽観シナリオ 129億円のちょうど中間に着地しました。

用語の補足

  • 設備サブコン: ゼネコン (元請けの総合建設会社) の下請けとして、空調・電気・計装などの専門工事を担う建設会社。
  • 空調計装: ビルの空調自動制御 (温度・湿度・CO2濃度などをセンサーで計測し、エアコン・送風機・冷温水ポンプを自動運転する仕組み) の設計・施工。
  • DOE (Dividend on Equity): 自己資本配当率。配当金総額を自己資本で割った数字。
  • スライド条項: 資材高に応じて契約金額を引き上げる仕組み。

主要指標は決算短信 によると次のとおりです。

  • 売上 46,371百万円 (+7.7% YoY)、営業利益 11,821百万円 (+29.6% YoY)、経常利益 12,126百万円 (+30.3%)、当期純利益 8,442百万円 (+31.6%)、EPS 132.49円 (分割調整後)。
  • 営業利益は会社修正後予想 (2026年1月28日発表の 11,500百万円、IRバンク 業績推移 で確認) から +321百万円 (+2.8%) の上振れ。
  • 同時開示の FY2027 会社予想は売上 51,500百万円 (+11.1%)、営業利益 12,500百万円 (+5.7%)、営業利益率 24.3%。事前予想レポートで示した IR気象台 FY2027 中央シナリオ (営業利益 12,500百万円・営業利益率 25.0%) に営業利益はほぼ一致。

株式分割の取り扱いについては、短信注記 に「2025年1月1日付で普通株式1株につき2株、2026年4月1日付で普通株式1株につき4株の割合で株式分割を行っております。前連結会計年度の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純利益を算出しております」と明記されています。つまり以下のとおりに整理できます。

  • EPS 132.49円・一株純資産 735.21円: 2026年4月1日の1→4分割を反映した分割後ベース。
  • FY2026 中の配当 160円 (中間 61 + 期末 99): 分割前ベース。
  • FY2027 配当予想 56円: 分割後ベース (分割前換算で 224円、前年 160円から +40%)。

予実差異の確認 (事前予想との突き合わせ)

事前予想レポートで提示した3シナリオと本決算実績の対比は次のとおりです。

指標期初予想 (2025/6時点)修正後予想 (2026/1/28)IR気象台 保守IR気象台 中央IR気象台 楽観実績修正後線比
売上 (百万円)43,50046,00046,00046,00046,50046,371+0.8%
営業利益 (百万円)9,20011,50010,33511,50012,90411,821+2.8%
営業利益率21.1%25.0%22.5%25.0%27.8%25.5%+0.5pt
Q4単独 営業利益率22.2%15.0%22.2%30.0%23.7%+1.5pt
経常利益 (百万円)11,70012,126+3.6%
純利益 (百万円)6,4508,0737,2358,0509,0308,442+4.6%
EPS (円、分割後)約98約123約110約123約138132.49+7.7%
年間配当 (円、分割前)152160+5.3%

(出典: 期初予想はFY2025有価証券報告書 (EDINET docID S100W2JG)、修正後予想はIRバンク 日本電技、IR気象台シナリオは事前予想レポート、実績はFY2026決算短信)

事実として読み取れる論点は次のとおりです。

  • 営業利益 11,821百万円は IR気象台 中央 (11,500百万円) と楽観 (12,904百万円) の中間に着地。Q4単独 OP率 23.7% も会社線 22.2% と楽観 30% の間に入り、実績は会社線を +2.8% 上回る水準で収まりました。
  • Q4単独の利益試算は、通期売上 46,371百万円 − Q3累計売上 29,874百万円 = Q4売上 16,497百万円、通期営業利益 11,821百万円 − Q3累計営業利益 7,916百万円 = Q4営業利益 3,905百万円、Q4単独 OP率 = 3,905 / 16,497 = 23.67% (本レポートによる試算、Q3累計値は 2026年1月28日開示のQ3短信 より引用)。事前予想で「Q3単独 33.7% をそのまま Q4 に外挿しない」とした判断は、実績の Q4単独 23.7% で裏付けられました。
  • 純利益伸び率 +31.6% が営業利益伸び率 +29.6% を上回ったのは、特別損失が大幅減少 (前期 167百万円 → 当期 9百万円) したことが主因。短信 の連結損益計算書では前期に投資有価証券評価損 165百万円があり、これが剥落した格好です。
  • 営業利益率 25.49% は事前予想中央 25.0% を僅かに上振れる一方、楽観 27.8% には届かず。事実として 25%台前半でレンジ内に収まる結果でした。

セグメント別ドリルダウン

空調計装関連事業

短信 のセグメント情報によると、空調計装関連事業は売上 41,697百万円 (+5.9%)、セグメント利益 16,563百万円 (+22.3%)、利益率 39.7% (前期 34.4% から +5.3pt)。受注高は 48,231百万円 (+24.0%)、次期繰越工事高 29,421百万円 (+28.5%)。

内訳としては、新設売上 14,180百万円 (-14.6%)、既設売上 27,516百万円 (+20.9%)。新設受注 17,199百万円 (+22.8%)、既設受注 31,031百万円 (+24.7%) でいずれも二桁増 (短信「セグメント情報」より)。

短信本文は次のように報告しています。

受注高につきましては、新設において、研究施設及び公共施設向け物件等の新設工事が増加し、既設においては、工場及び事務所向け物件等の既設工事が増加しました。売上高につきましては、新設において、工場及び教育施設向け物件等の新設工事が反動減となったものの、既設においては、事務所及び工場向け物件等の既設工事が増加しました。

(FY2026決算短信 P.5 より)

読み取れる論点は次のとおりです。

  • 利益率 39.7% は前期 34.4% から +5.3pt の大幅改善。事前予想レポートで仮説として置いた「DC・半導体工場向け案件構成シフト」「案件選別」を裏付ける水準で、これは事実として観測されたデータです。
  • 既設工事 +20.9% が利益率改善の主役。設備サブコンでは一般に既設 (既存建物の更新・改修・保守工事) のほうが新設 (新築建物への初期設置) より採算が良いとされており、構成シフトが利益率を押し上げたと考えられます。
  • 新設売上 △14.6% は短信文言のとおり反動減と整理されていますが、新設受注は +22.8% で次期繰越が積み上がっており、構造的な縮小ではなく短期的な売上計上タイミングのずれという整理になります。

用語の補足

  • 新設工事 / 既設工事: 新設は新築建物への初期設置、既設は既存建物の更新・改修・保守工事。既設は案件単価ベースで採算が良いとされる。

産業システム関連事業

同セグメントは売上 4,674百万円 (+26.5%)、セグメント利益 867百万円 (+102.5%)、利益率 18.5% (前期 11.6% から +6.9pt)。受注 5,770百万円 (+17.9%)、次期繰越工事高 4,054百万円 (+36.6%) (短信 セグメント情報)。

短信文言は次のとおり。

受注高、売上高ともに電気工事及び生産管理システムのソフトウエア等が増加しました。

論点は次のとおりです。

  • セグメント利益倍増 (+102.5%) で利益率 11.6% → 18.5% は事前予想で予想しなかったポジティブサプライズ。事前予想レポートでは「規模を絞りながら採算改善するフェーズ」と整理していましたが、本決算では売上 +26.5% と利益 +102.5% で「規模拡大と利益率改善の同時達成」という別パターンが観察されました。
  • 次期繰越 +36.6% は FY2027 の売上成長の裏付けとして読み取れます。
  • 「空調計装一本足」リスクの緩和材料として評価できる結果です。

全社調整費

短信 のセグメント情報注記では全社調整費が △5,609百万円 (前期 △4,849百万円から +760百万円増加)。注記には「全社費用は、主に報告セグメントに帰属しない一般管理費」とあります。なお、P/L 上の販管費合計は 9,536百万円 → 10,141百万円 (+605百万円、+6.3%) で、全社調整費の増分とは完全には一致しません (セグメント間配賦の組換えがあるため、両者は会計上別概念です)。

同社経営計画ページ で公開されている中期経営計画は FY2030 単体 1,100名体制を目標としていますが、FY2025期末の単体従業員数は 939名 (FY2025有価証券報告書) でした。年平均 +32名のペースで人件費 1人 1,000万円相当としても増分は年 +300百万円規模に留まるため、+760百万円すべてを人員拡大で説明するのは無理があります。賃上げ・採用関連費用・本社共通システム投資・オフィス費用など別要因の寄与が大きく、内訳の確定には決算説明資料の追加開示を待つ必要があります (本レポートの試算)。

受注の確認 (設備サブコン特有の重要指標)

設備サブコンでは「受注高」「次期繰越工事高」が翌期売上の先行指標として重視されます。本決算の数字は次のとおり (短信 より)。

  • 受注高 54,001百万円 (+23.4%) で売上 46,371百万円を +7,630百万円上回り、受注/売上 = 1.165倍 の受注超過。
  • 次期繰越工事高 33,475百万円 (空調計装 29,421 + 産業システム 4,054)。前期繰越 23,571百万円から +42% 増 (本レポートによる試算)。
  • セグメント別受注: 空調計装 48,231百万円 (+24.0%、新設+22.8% / 既設+24.7%)、産業システム 5,770百万円 (+17.9%)。
  • FY2027 会社予想 受注高は 52,500百万円 (△2.8% vs FY2026 実績 54,001百万円)。 会社は受注ペースを増勢からやや減速させる想定 で、FY2027 売上 +11.1% の裏付けは「受注の追加積み上げ」よりも「次期繰越の取り崩し」という整理になります。

FY2027 会社ガイダンスの読み込み

短信「2027年3月期の連結業績見通し」 と事前予想レポートの IR気象台 FY2027 中央シナリオを並べたものが次の表です。

指標FY2026実績FY2027会社予想YoY事前予想 IR気象台 FY2027 中央
受注高 (百万円)54,00152,500△2.8%
売上 (百万円)46,37151,500+11.1%50,000
営業利益 (百万円)11,82112,500+5.7%12,500
営業利益率25.5%24.3%△1.2pt25.0%
経常利益 (百万円)12,12612,700+4.7%
純利益 (百万円)8,4428,700+3.0%8,750
EPS (円、分割後)132.49136.51+3.0%約133
1株配当 (円、分割後)160 (分割前)56 (分割後・分割前換算 224)+40% (分割前換算)

論点は次のとおりです。

  • 営業利益 12,500百万円は事前予想 IR気象台 FY2027 中央シナリオ (12,500百万円) と同水準 で着地しました。会社が IR気象台 のシナリオを認識しているわけではなく、結果として同じ金額が並んだ偶然の符合ですが、事前予想レポートで「会社の保守バイアスを踏まえると控えめなガイダンス (11,500〜12,000百万円帯) もあり得る」と置いた懸念は外れ、会社線は中央シナリオを下回らない水準で開示されました。
  • 営業利益率 24.3% は FY2026 実績 25.5% から △1.2pt の悪化見込み。短信「今後の見通し」では次のとおり、保守バイアスの根拠が明示されています。

中東情勢によるエネルギー価格や資材価格の変動、サプライチェーンの不安定化等により、受注環境や収益性に影響を及ぼすリスクも否定できません。また、2026年1月に施行された取適法 (中小受託取引適正化法) への遵守徹底を進める必要があります。

(FY2026決算短信 P.3 より)

用語の補足

  • 取適法 (中小受託取引適正化法): 2026年1月に施行された改正下請法の通称。受託取引における受注側の保護を強化し、発注側の代金支払期日や減額禁止などの義務を厳格化する内容。設備サブコンのように元請けゼネコンの下請けを担う業態では、自社が受発注の両側に立つため、社内オペレーションの遵守体制構築コストが論点になります。

  • 純利益伸び率 +3.0% は営業利益伸び率 +5.7% を下回りますが、経常利益 +4.7% も営業利益から約 1pt 下回る程度に収まり、営業外負担増や税効果剥落のような構造的なマージン圧迫は本決算開示の範囲では確認できません。

  • 配当 56円 (分割後) = 分割前換算 224円で前年 160円から +40% の大幅増配。DOE = 56 / 735.21 = 7.62% (本レポートによる試算、一株純資産は短信注記 より) で、同社が公表している DOE 5% 基準を大きく上回ります。

中期経営計画の取り扱い

同社経営計画ページ で公表されている中期経営計画の FY2028 営業利益目標 95億円は、FY2026 実績 118.21億円で既に大幅超過、FY2027 会社予想 125億円で +31.6% 超過しています。

本決算短信および同時開示資料に「中期経営計画の見直し」「新中計策定」のアナウンスは、本レポート編集時点では確認できていません (短信 を通読した範囲)。中計の上方修正は FY2026 通期業績の事実上の超過達成を会社がどう位置付け直すかの問題で、6月の株主総会や決算説明会で追加開示される可能性がある論点として残ります。

株主還元 (配当 +40% 増配と DOE 累進ポリシーの実効性)

短信 と注記から、配当の動きを整理します。

  • FY2026 配当: 中間 61円 + 期末 99円 = 160円 (分割前ベース、「dividendPerShare 160.0」)。
  • FY2027 配当予想: 56円 (分割後ベース、「forecastDividendPerShare 56.0」)。
  • 分割比 1:4 を考慮した分割前換算: 56 × 4 = 224円。前年 160円から +64円 (+40.0%) の増配。
  • FY2026 実績 DOE (分割後ベース): 配当 40円 (FY2026 配当 160円 ÷ 4) ÷ 一株純資産 735.21円 (FY2026末、短信注記) = 5.44% (本レポートによる試算)。同社が公表している DOE 5% 基準を僅か上回る水準。
  • FY2027 予想 DOE: 一株配当 56円 (分割後ベース) ÷ 一株純資産 735.21円 (FY2026末) = 7.62% (本レポートによる試算)。FY2026 実績の 5.44% から +2.18pt 改善で、5% 基準を大きく上回る水準。
  • 自己株式取得は実施なし (短信 CF 計算書: 自己株式の取得による支出 △0百万円、FY2026・FY2025ともゼロ)。

配当性向の試算: FY2027 純利益 8,700百万円 ÷ EPS 136.51円 = 期中平均株式数 約63,732千株 (本レポートによる試算)。これに配当 56円を乗じた配当金総額は 約3,569百万円で、純利益 8,700百万円に対する配当性向は 41.0% 程度 (本レポートによる試算)。

事実として、還元手段は配当中心で自社株買いは行われておらず、+40% 増配で DOE が 5.44% から 7.62% に +2.18pt 改善する結果になっています。なお、FY2027 一株純資産は本決算時点で未確定のため、FY2026末の一株純資産で割った試算値です。

注意点

短信注記 では「前連結会計年度の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純利益を算出」と明記されており、短信掲載の一株純資産 620.02円 (FY2025末) も 735.21円 (FY2026末) も分割後ベースで遡及計算されています。分割前の一株純資産と取り違えないようご注意ください。

株価反応 (5/7 発表前後の OHLCV)

Yahoo!ファイナンス 1723 株価データ を参照した、決算開示前後の株価推移は次のとおりです。

日付始値高値安値終値前営業日比出来高
5/1 (金、GW前最終営業日)2,5102,5242,3902,512266,000
5/7 (木、決算開示日 13:00)2,5742,6202,3362,603+3.6% (vs 5/1)1,003,200
5/8 (金、翌営業日)2,6102,8392,6102,730+4.9%391,300
5/11 (月)2,7002,7002,5452,567△6.0%270,500
5/12 (火)2,5602,7052,5492,607+1.6%177,200
5/13 (水)2,5752,6232,5442,589△0.7%135,300
5/14 (木)2,5402,6042,4992,576△0.5%149,600
5/15 (金、直近)2,5352,6702,5042,505△2.8%208,200

(注: 5/3〜5/6 は GW で東証休場、5/9 は週末で非営業日)

事実として読み取れる論点は次のとおりです。

  • 5/7 は決算開示が場中 (13:00) で、日中安値 2,336円 (始値比 △9.2%、5/1終値比 △7.0%) と日中高値 2,620円 (始値比 +1.8%) の振れ幅を経て、終値 2,603円 (前営業日 5/1 比 +3.6%) で着地。日足データのみでは安値発生タイミングが 13:00 開示の前か後かは特定できないため、ここでは終値ベースの反応で整理しています。
  • 5/8 は寄付 2,610円から日中高値 2,839円 (本期間中最高値、+13.0% vs 5/1 終値) を付け、終値 2,730円 (+8.7% vs 5/1)。
  • 5/11 以降は陰線基調が続き、5/15 終値 2,505円 (5/8 終値比 △8.2%) となって GW 前水準近辺まで戻りました。
  • 5/15 終値ベースの PER 試算: 2,505円 ÷ FY2027 会社予想 EPS 136.51円 = 18.35倍 (本レポートによる試算)。事前予想レポートで示した「PER 19倍 (現状近辺) × FY2027 中央 EPS 約133円 = 2,527円」(5/1 終値 2,512円ベース) の位置取りからほぼ動かず、中位 PER × 中央 EPS のレンジで評価が続いている水準です。
  • 出来高は 5/7 が 100万株超で平時 (5/1 で 26万株) の約4倍、5/8 で 39万株。決算注目度は高かったが、その後は通常水準に収束。

投資判断更新 (前提が強まった / 弱まった点)

事前予想レポートからの前提変更点を整理します。

前提が強まった点

  • 「会社線=中央」設計の妥当性が改めて確認できた: FY2026 営業利益は IR気象台 中央 (115億) と楽観 (129億) の間に着地、FY2027 ガイダンスは IR気象台 中央 (125億) と同水準で開示されました。3シナリオを「会社線±10%強」のレンジで組んだ設計で、今期と来期の両方で実績・会社予想がレンジ内に収まりました。
  • 産業システム事業の利益率改善 (11.6% → 18.5%): 「空調計装一本足」リスクが緩和され、セグメント利益 +102.5% は事前予想の想定外のポジティブ (短信 セグメント情報)。
  • 受注次期繰越 +28.5% (空調計装)・+36.6% (産業システム): FY2027 売上 +11.1% の確度を受注ベースで裏付ける数字。
  • 配当 +40% 増配で DOE 5.44% → 7.62% (+2.18pt 改善): 同社が公表している DOE 5% 基準を大きく上回る水準への引き上げで、累進配当ポリシーが業績拡大局面で実効的に機能した。

前提が弱まった点

  • FY2027 営業利益率 24.3% は FY2026 の 25.5% から △1.2pt 悪化見込み: 短信が指摘する中東情勢・取適法対応・人員拡大などのコスト要因で利益率がピークアウトする可能性 (短信 P.3)。
  • 全社調整費 +760百万円増加 (4,849 → 5,609百万円): 人員拡大ペース (年平均 +32名) だけでは説明力が足りず、賃上げ・採用費・本社共通システム投資・オフィス費用などの寄与が大きいと推定されます。内訳の確定には決算説明資料の追加開示が必要で、利益率ピークアウトの定量化に直結する論点として残ります。
  • 空調計装の新設売上 △14.6%: 新設受注 +22.8% で次期繰越は積み上がるが、新設の売上計上タイミングがズレた。FY2027 +11.1% 成長は新設売上の回復が前提となります。
  • 中計上方修正・新中計発表は本決算短信で確認できず: FY2028 中計目標 95億円が事実上の死文化している状態で、株主総会・説明会での追加開示が論点として残ります。

継続論点 (本決算で新規開示なし):

  • アズビル特約店契約・仕入依存比率 (FY2025 時点で 61.4%) については、本決算短信では主要販売先比率・主要仕入先比率の追加開示が確認できませんでした。定量更新は FY2026 有価証券報告書 (例年 6 月公表) を待つ必要があります。

本決算で見直した前提 (旧 → 新 → 根拠)

事前予想レポートで置いた前提と本決算で確認できた事実を対比します。

(a) FY2026 営業利益 中央 115億円 → 実績 118.21億円

  • 旧前提: 中央 = 会社線 = 11,500百万円 (営業利益率 25.0%)。
  • 新前提: 実績 11,821百万円 (営業利益率 25.5%)、会社線比 +2.8% 上振れ。
  • 根拠: FY2026決算短信。Q4 単独 OP率 23.7% で会社想定 22.2% を 1.5pt 上回り、IR気象台 中央と楽観の中間に着地。

(b) Q3単独 33.7% の Q4 への外挿可否

  • 旧前提: 事前予想で「Q3単独 33.7% をそのまま Q4 に外挿せず、楽観でも 30% 止め」とした。
  • 新前提: Q4 単独 OP率 23.7% で楽観 30% に届かず、外挿しなかった判断は妥当。
  • 根拠: FY2024 Q4/Q3 比率 0.73 倍、FY2025 0.65 倍、FY2026 は 23.7/33.7 = 0.70 倍で過去パターンと整合 (Q3 累計値は 2026/1/28 開示 Q3短信 より、過去年度はIRバンク より)。

(c) FY2027 営業利益 中央 125億円

(d) FY2027 売上の伸び率前提

  • 旧前提: IR気象台 FY2027 中央 売上 50,000百万円 (+8.7%)。
  • 新前提: 会社ガイダンス 51,500百万円 (+11.1%) で IR気象台 中央を上回る伸び率を会社が想定。
  • 根拠: 同短信。受注次期繰越 +28.5% の積み上がりが裏付け。

(e) 配当 DOE 5% 基準累進配当

  • 旧前提: 事前予想で DOE 5% 基準を踏まえ「業績伸び率次第で配当上乗せ期待」と整理。
  • 新前提: FY2027 配当予想 56円 (分割後) = 分割前換算 224円で前年 160円から +40% 増配、実質 DOE 7.62%。
  • 根拠: 短信 「forecastDividendPerShare 56.0」、一株純資産 735.21円。

(f) 産業システム関連事業の売上反転

  • 旧前提: 事前予想で「FY2025 受注高 +28.9% が FY2026 で売上に反転するか論点」とした。
  • 新前提: FY2026 売上 +26.5%・セグメント利益 +102.5%・利益率 11.6% → 18.5% で 規模拡大と利益率改善の同時達成
  • 根拠: 短信 「産業システム関連事業」セグメント情報。

(g) 中計 FY2028 営業利益目標 95億円の超過

  • 旧前提: 事前予想で「FY2026 修正後予想 115億で中計を3年前倒し大幅超過、本決算で中計上方修正がほぼ必須」とした。
  • 新前提: FY2026 実績 118.21億で中計を +24.4% 超過、FY2027 予想 125億で +31.6% 超過。 ただし本決算短信に中計上方修正・新中計発表のアナウンスは確認できていません
  • 根拠: 短信 および日本電技 経営計画ページ で本レポート編集時点未確認。

見直し後の IR気象台 FY2027 シナリオと想定株価レンジ

事前予想 FY2027 中央シナリオは会社ガイダンスと同水準で並んだため、中央を会社線そのものに置き直し、保守・楽観を再キャリブレーションします。

指標FY2027 会社予想IR気象台 保守IR気象台 中央IR気象台 楽観
売上 (百万円)51,50049,00051,50054,000
営業利益 (百万円)12,50011,00012,50014,500
営業利益率24.3%22.4%24.3%26.9%
経常利益 (百万円)12,70011,20012,70014,700
純利益 (百万円)8,7007,7008,70010,100
EPS (円、分割後)136.51約121136.51約158
1株配当 (円、分割後)5656 (据置想定)56約65

(注: 純利益/営業利益比は会社予想ベース 0.696 を保守 0.700 / 楽観 0.697 で機械試算継承。保守シナリオの配当は同社の DOE 累進ポリシーを優先し 56円据置で置いた [配当性向は純利益減により約 46% まで上昇する計算]。楽観の配当 65円は配当性向 41% 継承で機械試算。すべて本レポート独自試算)

シナリオ別の見直しポイントは次のとおりです。

  • 中央 (営業利益 125億・会社線一致): 事前予想 FY2027 中央 (125億) と会社線が一致。これで中央シナリオは会社線そのものに置き直し。
  • 保守 (営業利益 110億): 中東情勢のエネルギー価格変動・取適法対応コスト・新設売上の回復遅延ケース。事前予想保守 106億からやや切り上げ。
  • 楽観 (営業利益 145億): 産業システム事業の利益率継続改善 (18.5% → 22%帯) と空調計装 既設工事の高採算継続 (利益率 39.7% 維持) のケース。事前予想楽観 147億とほぼ同水準。

想定株価レンジ (9 パターン: 3 EPS × 3 PER)

2026/5/15 終値 2,505円ベースで、PER の3水準は事前予想レポート (2026/5/5公開) で用いた同業4社 (高砂熱学 15.91倍・ダイダン 14.42倍・新日本空調 15.49倍・きんでん 23.02倍、いずれも 5/1 終値ベースの会社予想 PER) を参考に 低位 PER 15倍 (同業の下半分レンジ)・中位 PER 19倍 (現在水準)・高位 PER 25倍 (中計上方修正観測下のプレミアム想定) の3段階を採用します。同業との PER 比較は時価総額・成長率・財務体質を完全に揃えられない点で限界があり、機械試算の参考レンジとして読んでください。

楽観 EPS 158円中央 EPS 136.51円保守 EPS 121円
低位 PER 15倍2,370円 (△5.4%)2,048円 (△18.2%)1,815円 (△27.5%)
中位 PER 19倍3,002円 (+19.8%)2,594円 (+3.6%)2,299円 (△8.2%)
高位 PER 25倍3,950円 (+57.7%)3,413円 (+36.2%)3,025円 (+20.8%)

(注: 現状比 % は 2026/5/15 終値 2,505円対比。本レポート独自試算)

PER 水準の解釈:

  • 低位 PER 15倍: 営業利益率が同業 (8〜12%帯) と乖離した状況が解消されるケース。中東情勢悪化や新設売上の停滞などで利益率優位が縮小した場合。
  • 中位 PER 19倍: 現在の評価水準。利益率 25% 帯と同業平均並み PER 17〜19倍の組み合わせを継続するケース。
  • 高位 PER 25倍: 中計上方修正・新中計発表が実現し、同業最高水準 (きんでん 23倍) を上回る成長プレミアムが付与されるケース。プレミアムの定量的根拠は中計開示待ちで、現時点では同業比 +約 6 倍の余地として置いた上限値です。

5/15 終値 2,505円は中央 EPS 136.51円ベースで PER 18.35倍となり、IR気象台 想定の中位 PER 19倍 × 中央 EPS の 2,594円に対して約 △3.4% 下の位置取りです。これは事前予想時点 (5/1 終値 2,512円 × IR気象台中央 EPS 約133円 = PER 18.9倍) からほぼ動いていないことを示しています。

参考情報

免責事項

本レポートは EDINET および会社の公開 IR 資料に基づく分析で、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。本レポート中の試算 (Q4 単独利益率、純利益/営業利益比率、DOE、PER × EPS 9パターンなど) は記載時点の前提に基づく IR気象台独自の試算であり、実際の数値は決算説明資料の追加開示などで変動する可能性があります。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。

本レポートは公開情報に基づく分析であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。

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