アンリツ (6754) 2027年3月期 Q1決算予測 — データセンター投資と連動する受注
Xでシェア光電融合テーマの関連銘柄レポート(IR気象台、2026年4月12日公開)でA評価としたアンリツ(6754)を、個別に掘り下げます。会社は2027年3月期に営業利益+34.9%という強気の予想を出しました。本レポートは、この強気ガイダンスでも「まだ下限に近い」とみます。理由は、主力の通信計測の受注がハイパースケーラーのデータセンター投資と連動しており、足元の受注ペースが会社計画を上回っているからです。一方で株価はすでにそれを大きく先取りしており、直近のQ1決算には固有のクセもあります。
1.結論:会社の強気ガイダンスでも、まだ下限に近い
Q1(2026年4〜6月、発表は7月末〜8月上旬の見込み)と通期の予想を先に示します。通期の営業利益は、会社予想20,000に対して本レポートの中央は22,000です。会社予想以外の数値は本レポートの推定で、確定値ではありません。
| 指標 | 前年Q1実績 | Q1 本レポート | 通期 会社 | 通期 本レポート中央 |
|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 23,620 | 28,000 (+18.5%) | 140,000 (+19.2%) | 148,000 (+26.0%) |
| 営業利益 | 1,339 | 1,900 (+41.9%) | 20,000 (+34.9%) | 22,000 (+48.4%) |
| 当期利益 | 583 | 1,300 (+123%) | 15,000 (+28.4%) | 16,500 (+41.3%) |
2.会社予想は、なぜ強気なのか
まず、前期(2026年3月期)の実績を確認します。売上収益は1,174億円(+4.0%)、営業利益は148億円(+22.3%)、営業利益率は12.6%でした。主力の通信計測事業は売上こそ▲1.9%でしたが、営業利益は+28.8%・利益率15.7%へ改善しています(決算短信)。
この148億円を起点に、会社は今期(2027年3月期)を営業利益200億円(+34.9%)に置きました。下のグラフのとおり、営業利益はコロナ後の投資調整で2024年3月期に90億円まで落ち込んだあと回復基調にあり、今期予想はその延長線上で一段高を狙う形です。前期の谷ではなく、直近2年の回復の勢いをそのまま伸ばした計画だと分かります。
出典: 決算短信・決算補足資料(アンリツ)より。2027年3月期は会社予想。
計画の中身をセグメントで見ると、伸びの大半は通信計測事業に集中します。会社は今期のセグメント別売上を、通信計測850億円(+24%)・PQA330億円(+6%)・環境計測160億円(+48%)・その他60億円と示しています。営業利益では、通信計測を前期108億円から165億円(+53%)へ引き上げる計画で、全社営業利益の増加分(148→200億円、+52億円)はほぼ通信計測の増益(+57億円)で説明できます(2026年3月期 業績概要)。つまり今期のガイダンスの成否は、ほぼ通信計測——なかでもAIデータセンター向けの需要が本物か——に集約されます。
3.強気ガイダンスの裏付け:受注・受注残・設備投資
計測器は受注してから売上に立つまで時間がかかるため、受注高・受注残高が売上に半歩先行します。アンリツはこれをセグメント別・四半期ごとに開示しており、ここに今期ガイダンスの裏付けが表れています。
通信計測の四半期受注高は、前期の後半で明確に加速しました。下のグラフのとおり、受注高(青)は期の後半で売上高(グレー)を上回って積み上がっています。前期の通信計測は受注高753億円に対し売上高688億円で、受注が売上を約1割上回りました(受注÷売上=753÷688=1.09)。この差が受注残として蓄積し、期末の通信計測受注残高は197億円→275億円へ+39.6%増えています。前期の売上が▲1.9%だったのは需要が弱かったからではなく、受注の売上化がこれからだからです。
出典: 2026年3月期 決算短信(四半期別セグメント情報)より算出。
設備投資も裏付けになります。前期の設備投資は58億円(+71.0%)、今期計画は110億円(+90.8%)とほぼ倍増です(決算補足資料)。生産能力を増やす投資が先に立ち上がっている点は、会社が需要の継続を見込んでいることの表れです。受注残・工場稼働・設備投資という3つの先行指標が、いずれも増収増益の方向を指しています。
4.データセンター投資とアンリツの受注は連動しているか
「AIデータセンターが活況だからアンリツも伸びる」という連想を、数字で確かめます。ここでは、データセンター建設の勢いを測る外部の需要ドライバーと、アンリツの通信計測受注が実際に連動しているかを、四半期データの相関で検証します。ドライバーは今、記録的な伸びにあります。
- ハイパースケーラーの設備投資:マイクロソフト・アマゾン・グーグル・メタ4社の合計設備投資は、2024年の約2,400億ドルから2025年に約4,100億ドル(+約70%)へ拡大し、2026年の会社ガイダンス合計は約7,250億ドル(+約77%)です(Tom's Hardware ほか各社決算)。四半期では2024年4〜6月の約530億ドルから2026年1〜3月の約1,300億ドルへ、一貫して増えています。
- NVIDIAのデータセンター売上:AI計算需要の高頻度な代理指標で、2024年4〜6月の263億ドルから2026年1〜3月の752億ドル(前年比+92%)まで伸び続けています(NVIDIA)。
- 光トランシーバ市場:AIクラスタ向けの光トランシーバ市場は2025年の約165億ドルから2026年に約260億ドル(+約60%)へ拡大する見通しです(TrendForce・LightCounting)。
このドライバーと、アンリツの通信計測の四半期受注高を突き合わせると、相関が見えます。相関係数(暦年四半期で対応、2024年4〜6月〜2026年1〜3月の8期)は次のとおりです。
| ドライバー | 同時(ラグ0) | ドライバー1四半期先行 |
|---|---|---|
| ハイパースケーラー4社 設備投資 | +0.71 | +0.84 |
| NVIDIA データセンター売上 | +0.83 | +0.82 |
受注高はハイパースケーラーの設備投資と同時にr=+0.71、設備投資が1四半期先行するとr=+0.84で相関します。NVIDIAのデータセンター売上とはr=+0.83です。設備投資が先に立ち上がり、光トランシーバの増産を経て、計測器の受注に半歩遅れて効く——という商流と整合する結果です。下のグラフは両者を2024年4〜6月=100とした指数で重ねたもので、方向がそろって上向いているのが分かります。
出典: アンリツ決算短信、各社決算(設備投資)より本レポート算出。
2つ補足します。第一に、2025年4〜6月に受注が一時的に沈んだ(139億円)のは、米関税政策で顧客の投資判断が延伸したためで、需要そのものの弱さではありません(アンリツ開示)。この一過性を除けば連動はさらに強く出ます。第二に、アンリツの受注はドライバーより緩やかに伸びます。設備投資が2年で2.4倍になる間、アンリツ受注は1.4倍です。これは通信計測のうちデータセンターに直結するのは約4割(ネットワーク・インフラ、通信計測内の39%=全社の約23%)で、谷にあるモバイルが全体を薄めるためです。連動の方向は明確ですが、感応度(ベータ)はデータセンター純粋株より低い、という点は割り引いておきます。
5.純度の確認:全社の約23%がデータセンター直結
強気に振れすぎないよう、逆側も確認します。アンリツ=AIデータセンターの純粋株ではありません。用語を整理します。
- 通信計測:光・ネットワーク・モバイル(携帯端末)向けの計測器。全社売上の約59%を占める主力で、営業利益率も最も高い(前期15.7%)。
- PQA:食品・医薬品の異物検出や重量チェックなどの品質保証機器(全社の約26%)。AI・光テーマとは連動しません。
- 環境計測:EV・電池向けの試験計測など(同約9%)。前期に子会社化したDEWETRON社の寄与で伸びますが、これも光テーマ本流ではありません。
さらに通信計測の中身も一枚岩ではありません。会社開示では前期の通信計測売上の内訳は、モバイル38%・ネットワーク/インフラ39%・エレクトロニクス23%です(業績概要)。AIデータセンターに純粋連動するのは「ネットワーク/インフラ」で、金額にすると通信計測688億円×39%=約268億円、全社売上1,174億円の約23%にあたります。残りのモバイルは5G/6Gサイクル、エレクトロニクスはPCIe(サーバー内の高速配線)や防衛・宇宙関連と、需要ドライバーが異なります。前段の相関でベータが低めに出るのは、この構造が理由です。
| セグメント | 前期売上(前年比) | 前期営業利益 | 今期売上 会社計画 |
|---|---|---|---|
| 通信計測 | 688(▲1.9%) | 108(利益率15.7%) | 850(+24%) |
| PQA | 310(+9.9%) | 33 | 330(+6%) |
| 環境計測 | 108(+26.2%) | 9 | 160(+48%) |
| その他 | 69 | 20 | 60 |
| 全社調整(消去・全社費用) | — | ▲21 | — |
| 全社合計 | 1,174(+4.0%) | 148 | 1,400(+19%) |
800Gは実需、1.6T・CPOは次の波
同じデータセンター需要でも、段階を分けて見る必要があります。会社は業績概要で、800G光トランシーバーの計測需要は「2026年も高水準」、1.6Tは「2026年後半より生産本格化で計測需要を見込む」と述べています(業績概要)。つまり足元で稼働しているのは主に800Gの増産検査で、1.6TやCPO(半導体と光を同一パッケージに載せる方式)は2026年後半以降の上乗せです。NVIDIAが光関連2社に計40億ドルを投じるなどシリコンフォトニクス投資は相次いでいますが(HPCwire)、これらがアンリツの受注に紐付く開示はまだなく、期待先行の色が残ります。前段の受注相関が語るのは、あくまで足元で動いている800G中心の実需です。
6.競合の中でアンリツはどこにいるか
通信・ネットワーク計測は、キーサイト(Keysight)とVIAVIの2強に、アンリツ、スパイレント(Keysightが買収)、EXFO、ローデ・シュワルツが続く構図です。キーサイト・VIAVI・アンリツの3社で世界売上の約45%を占めます(GMInsights)。アンリツの相対的な強みは、総合力で幅広くカバーするキーサイトとは異なり、高速デジタル・光の物理層(信号品質)計測に絞った深さにあります。具体的にはビット誤り率を測るBERT「MP1900A」、光波形(アイダイアグラム)を解析する「BERTWave MP2110A」、コヒーレント光トランシーバを評価する「MT1040A」などで、いずれも800G/1.6Tの開発・量産検査に対応済みです(ECOC 2025出展)。新製品を今から出す局面ではなく、既存の主力機で増産局面の台数需要を取りにいくフェーズです。
7.モバイルは谷、6Gは2027年から
通信計測のもう一つの柱であるモバイル(携帯端末向け計測)は、いま逆風です。会社は5G開発市場の投資が「不安定」、特に中国のスマホ開発投資が停滞していると説明しており、モバイルの構成比は前期の43%から38%へ低下しました(業績概要)。次の本格的な回復ドライバーは6Gですが、6Gの標準化(3GPP Release 21)の機能確定は2027〜2028年に集中しており、開発計測の本格的な立ち上がりは2027年ごろからとみられます(3GPP)。
この点は、むしろ今の強さの質を示します。足元の成長がモバイル回復ではなくデータセンター向けで説明できている以上、通信計測の伸びは『モバイルが谷でも成り立つ』構造です。そこへ2027年ごろから6Gの開発計測が乗れば、成長ドライバーが二本目に増えることになります。
8.直近四半期:超Q4偏重という季節性
予想の前に、アンリツの四半期の形を押さえます。ポイントは、利益が極端に期末(Q4=1〜3月)に寄っていることです。下のグラフのとおり、前期の営業利益はQ1が13億円だったのに対しQ4は64億円で、通期148億円の約43%がQ4に集中しています。逆にQ1は通期の1割弱(前期9.0%、前々期5.1%)にとどまります。
出典: 各四半期決算短信より単独四半期を算出。
この季節性は、Q1決算の読み方に直結します。Q1の進捗率は構造的に低く出るため、線形(Q1で25%)を基準に見ると「大幅未達」に見えてしまいます。後段の判断材料で詳しく扱いますが、これがアンリツのQ1決算に共通するクセの原因です。
9.通期予想の組み立て
本レポートの中央は、通信計測をドライバー接続で積み上げ、他セグメントは会社計画に沿わせます。前掲のとおり、今期の通信計測受注は受注ランレートと回帰の双方で年900〜1,000億円に収束します。受注が売上に立つ比率(前期の実績で受注÷売上≒1.1)を踏まえると、通信計測の売上は会社計画850億円を上回る920億円前後(+34%)が中央として無理のない水準です。他のセグメント(PQA・環境計測・その他)は会社計画どおりとし、全社売上は1,480億円(+26.0%)を置きます。
| 指標 | 会社予想 | 本レポート中央 | 差額 | 差の理由 |
|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 140,000 | 148,000 | +8,000 | 通信計測を受注ランレート基準で920億円(会社850億円)へ。他セグメントは会社計画 |
| 営業利益 | 20,000 | 22,000 | +2,000 | 通信計測の増収分に営業レバレッジ(増分利益率約25%)を適用 |
| 当期利益 | 15,000 | 16,500 | +1,500 | 上記に加え、会社が税前=営業利益(営業外ゼロ)と保守的に置いた分の戻り |
営業利益22,000は前期比+48.4%で、会社予想(+34.9%)を上回ります。中身は、通信計測の営業利益を920億円×利益率約19.5%=約180億円(会社165億円)とし、他セグメントと全社調整の合算を約40億円と置いた積み上げです。当期利益には会社ガイダンスの構造的な余白もあります。会社は税引前利益を営業利益と同額の20,000に置いていますが、前期は営業外収益(受取利息・為替差益・持分法投資損益など)が+13億円あり、税引前16,147>営業14,828でした。今期も営業外がゼロにはならない公算が大きく、ここは下支えになります。EPSは、中央の当期利益16,500を自己株控除後の株式数127.99百万株で割って約129円です(16,500百万円÷127,991,904株=約128.9円)。
10.Q1(4〜6月)予想
比較対象の前年Q1(2025年4〜6月)は、売上23,620・営業利益1,339で、しかも前述の関税影響で受注が沈んだ弱い四半期でした。受注残が積み上がった状態で今期に入り、ドライバー(NVIDIAのデータセンター売上は2026年4〜6月に前年比+92%)も勢いを保っているため、Q1売上は前年を明確に上回るとみます。積み上げるとこうなります。
- 売上:受注残の消化とデータセンター向けの継続から、前年比+18%前後の28,000とみます。これは通期中央148,000に対する進捗18.9%で、前期Q1の進捗20.1%と近いペースです。
- 営業利益:Q1は固定費が重く利益率が低く出る四半期です。前年Q1の営業利益率5.7%から増販効果で6%台後半へ改善すると見て、28,000×6.79%=約1,900(+41.9%)です。
- 当期利益:前年Q1の583は税率が期初に高く出た影響で異常に低く、YoY率(+123%)は割り引いて見る必要があります。税前約1,900・実効税率を通期並みに戻して約1,300とみます。
11.業績シナリオ
| シナリオ | 前提 | 売上収益 | 営業利益 | 当期利益 |
|---|---|---|---|---|
| 保守(≒会社線) | 受注の売上化が後ろ倒し。データセンター投資が一服し、モバイルの谷が続く | 140,000 | 20,000 | 15,000 |
| 中央 | 通信計測を受注ランレート基準で920億円。ドライバー(設備投資)が2026年も高水準 | 148,000 | 22,000 | 16,500 |
| 楽観 | 1.6T量産検査が後半に前倒しで乗る+6G開発が早期化+為替160円 | 155,000 | 24,000 | 18,000 |
会社ガイダンスを保守シナリオ(下限)に据えたのが、今回の予想の特徴です。受注ランレート(940億円)と回帰(900〜1,000億円)がいずれも会社の通信計測売上ガイダンス850億円を上回るため、会社計画は下振れ側の目安として機能します。保守ケースが顕在化するのは、受注はあっても売上化が後ろ倒しになる、あるいはデータセンター投資が想定外に減速する場合です。楽観ケースには、1.6T・CPOの前倒しと為替の追い風を織り込んでいます。
12.判断材料:決算翌日リターンとQ1の急落パターン
アンリツはIRを引け後に開示するため、決算の反応は翌営業日に出ます。過去12四半期の決算翌営業日リターンは、平均+0.89%・中央値▲0.28%・上昇勝率6勝6敗で、振れ幅が非常に大きい銘柄です(最大+21.2%、最小▲13.4%、J-Quantsの調整後終値で算出)。
| 発表日 | 区分 | 翌日リターン |
|---|---|---|
| 2026-04-27 | 本決算 | +5.83% |
| 2026-01-29 | Q3 | ▲9.54% |
| 2025-10-30 | Q2 | +21.20% |
| 2025-07-30 | Q1 | ▲10.29% |
| 2025-04-25 | 本決算 | +12.66% |
| 2025-01-30 | Q3 | +9.86% |
| 2024-10-30 | Q2 | +2.07% |
| 2024-07-31 | Q1 | ▲13.40% |
| 2024-04-25 | 本決算 | ▲2.63% |
| 2024-01-30 | Q3 | ▲11.61% |
| 2023-10-30 | Q2 | +15.47% |
| 2023-07-28 | Q1 | ▲8.99% |
注目は区分別の偏りです。直近3回のQ1決算は、翌日リターンが3回ともマイナスでした(▲8.99%/▲13.40%/▲10.29%、平均▲10.9%)。理由は前述の季節性です。超Q4偏重ゆえにQ1の進捗率が構造的に低く出て、線形基準で『未達』と読まれやすい。今期は会社が+34.9%増益という強気ガイダンスを出しているぶん、Q1進捗が低く見えたときの反動リスクはむしろ大きいと考えられます。期待値の観点では、全12四半期の平均(+0.89%)より、Q1に絞った経験則(平均▲10.9%、ただしサンプルは3件)のほうが今回の局面には当てはまりやすい、というのが本レポートの見方です。
整理すると、業績の中身(受注ドライバー)は強いのに、決算またぎの短期の値動きは弱くなりやすい、というねじれが今回の要点です。保有期間別に論点を分けます。
- 決算をまたぐ短期:Q1の進捗率が季節性どおり低く出るだけで急落する『Q1のクセ』があり、しかも株価はPER38倍と高い(後述)。業績が強くても、決算またぎは下方向のリスクが相対的に大きい局面です。
- 今期いっぱいの中期:利益はQ4に集中するため、通期の成否はQ2〜Q3の受注残消化ペースで見えてきます。Q1で株価が下げても、論点は『受注残と受注ランレートがQ3・Q4で計画どおり売上化するか』に移ります。ドライバー(設備投資)が高水準を保つ限り、中期の業績の方向は上です。
- 中計スパンの長期:データセンターの800G→1.6T→CPOという需要の階段は当面続く見込みで、そこに2027年からの6G開発計測が乗ります。長期の需要ドライバーは複線化しており、テーマの持続性は相対的に高いといえます。
13.株価とバリュエーション
| 指標 | 値 |
|---|---|
| 株価(7/3終値) | 4,500円 |
| 時価総額 | 約5,760億円 |
| PER(会社予想EPS 117.19円) | 38.4倍 |
| PER(本レポート中央EPS 129円) | 34.9倍 |
| PER(前期実績EPS 91.20円) | 49.3倍 |
| PBR(前期実績BPS 1,036.92円) | 4.34倍 |
| 予想配当利回り(年50円) | 1.11% |
| 52週高値/安値 | 4,855円(6/3)/1,590円(2025/7/31) |
| 直近1年騰落 | +147.7% |
株価はAI・データセンターテーマで大きく上昇しました。1年前の約1,800円から約2.5倍、年初来でも約2倍です。予想PERは会社EPSで38.4倍・本レポート中央EPSで34.9倍と、アンリツが従来取引されてきた10倍台後半〜20倍台前半のレンジを大きく上回ります。もう一つ、アナリストの平均目標株価は2,836円で(2026年5月26日時点、みんかぶ)、現在値4,500円はこれを+59%上回っています。目標株価は株価上昇に遅れて改定される性質があるため額面どおりには受け取れませんが、業績が中央シナリオどおり強くても、株価はその強さをかなり織り込んだ位置にある、という関係は押さえておきたいところです。
想定株価レンジ(EPS × PER)
本レポートの3つの当期利益シナリオ(保守15,000・中央16,500・楽観18,000)を自己株控除後の株式数127.99百万株で割ると、EPSは順に117円・129円・141円になります。ここに3つのPER水準を当てると、想定株価は下表の9通りです。
- 低位(PER20倍):テーマ物色が一巡し、過去の上限近辺へ回帰する場合。
- 中位(PER30倍):足元よりやや低いが、データセンター関連として高めの評価を保つ場合。
- 高位(PER38倍):足元の評価をそのまま維持する場合。
| シナリオ(EPS) | 低位 PER20倍 | 中位 PER30倍 | 高位 PER38倍 |
|---|---|---|---|
| 楽観 EPS 141円 | 2,820円 (▲37%) | 4,230円 (▲6%) | 5,358円 (+19%) |
| 中央 EPS 129円 | 2,580円 (▲43%) | 3,870円 (▲14%) | 4,902円 (+9%) |
| 保守 EPS 117円 | 2,340円 (▲48%) | 3,510円 (▲22%) | 4,446円 (▲1%) |
これは目標株価ではなく、EPSがこの水準で着地しPERがその倍率で評価された場合に機械的に計算される株価で、判断材料の整理です。中央EPS×高位PER(4,902円)でようやく現在値を1割上回る位置関係で、業績が中央どおりでもPERが30倍へ切り下がれば▲14%です。上値は高位PER維持+楽観業績、下値はテーマ一巡によるPER低下が効きます。業績の裏付け(受注ドライバー)は強い一方、株価はその強さをかなり先取りした水準にある、という構図です。
14.総合判断
業績は会社予想を上回るとみます。通信計測の受注はハイパースケーラーのデータセンター投資と相関し(r=+0.71〜0.84)、受注ランレート・回帰のいずれもが会社の通信計測売上ガイダンス850億円を上回る年900〜1,000億円を指しています。だから本レポートは、会社の強気ガイダンス(営業利益200億円)を保守シナリオに置き、中央は営業利益220億円(+48%)としました。一方で、AIデータセンターに純粋連動するのは全社の約23%で、残りはモバイル(谷)やPQA・環境(非連動)を含む複合企業であること、そして株価がPER38倍・平均目標株価を+59%上回る水準まで先行していることは、分けて見ておきたいところです。とりわけ直近のQ1決算は、季節性で進捗率が低く出るために3回連続で翌日急落しており、業績の強さと決算またぎの短期の値動きは切り離して考える必要があります。
15.主なリスク
- Q1決算の進捗率ショック:超Q4偏重ゆえQ1進捗は構造的に低く、強気ガイダンスとの対比で『未達』と読まれると急落しやすい(過去3回のQ1はいずれも翌日▲9〜13%)。業績の強さとは別問題として残る。
- バリュエーションの調整:PERが過去レンジを大きく超え、平均目標株価も上回る。AI投資の減速観測が出れば、業績と無関係にPERが低下しやすい。
- データセンター投資の減速:本レポートの中央は設備投資ドライバーの高水準継続が前提。ハイパースケーラーが投資ペースを緩めれば、受注ランレートの前提が崩れる。相関はn=8の小標本である点も含みおく。
- 受注の売上化タイミング:需要そのものより、受注残がいつ売上に立つかが下振れの主因になりうる。顧客の量産時期に振られる。
- モバイルの谷の長期化:5G開発投資(特に中国)の停滞が続けば、6G需要(2027年〜)が乗るまで通信計測がデータセンター向けへの一本足になりやすい。
- 為替・地政学:海外売上比率は約66%で円高は逆風。会社も中東情勢の影響はQ2以降の重大な悪化がないことを前提に置いている。
参考リンク
- 光電融合テーマの関連銘柄(IR気象台、2026年4月12日)
- 決算関連資料(決算短信・業績概要・決算補足資料/アンリツ IR)
- 中期経営計画 GLP2026(アンリツ IR)
- アンリツ社長インタビュー・工場フル稼働(電波新聞デジタル)
- ハイパースケーラーのAI設備投資 2026年見通し(Tom's Hardware)
- NVIDIA 2027年3月期Q1決算(データセンター売上)
- AI向け光トランシーバ市場2026・部品供給がボトルネック(TrendForce)
- データセンター市場トレンド 2025(CBRE)
- NVIDIAのシリコンフォトニクス投資(HPCwire)
- ECOC 2025 出展製品(MP1900A / MP2110A / MT1040A)
- 3GPP Release 21(6G)タイムライン
- 高速Ethernetテスト市場のシェア(GMInsights)
- アナリストコンセンサス・目標株価(みんかぶ)
関連企業
本レポートは公開情報に基づく分析であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。
本レポートは生成AI (Claude) を用いて作成されており、データの引用・計算・解釈に誤りが含まれている可能性があります。重要な数値については一次資料 (各社IR・決算短信・有価証券報告書等) でご確認ください。