宇宙関連銘柄 — 政府需要は兆円級、黒字化はこれから

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IR気象台編集部テーマ株分析

2026年前半、宇宙関連銘柄がまとまって物色されました。防衛省の衛星コンステレーション事業(契約2,831億円)、宇宙戦略基金の第3期決定、そして6月の米SpaceX上場への期待と、材料が立て続けに出たためです。ただ、上場している宇宙ベンチャー5社のうち、本業の営業黒字の会社はまだ1社もありません。7月中旬に出そろった本決算では、QPSホールディングスが補助金で最終黒字化した一方、アクセルスペースHDは赤字が拡大しました。政府のお金が先に確定し、本業の稼ぎと黒字化はこれから——この「ズレ」を軸に、関連銘柄を層ごとに地図にしていきます。

1.宇宙ビジネスとは何か

はじめに、この記事で使う言葉を整理しておきます。

  • 衛星コンステレーション … 多数の小型衛星を群(星座=コンステレーション)として運用する仕組みです。1機の大型衛星と違い、同じ地点を高い頻度で観測・通信できます。SpaceXの通信網「スターリンク」もこの方式です。
  • SAR衛星 … 電波(レーダー)で地表を観測する衛星です。光学カメラの衛星と違い、夜間や雲の下でも撮影できるため、安全保障・防災用途で需要が伸びています。QPSホールディングスとSynspectiveが手掛けます。
  • 宇宙戦略基金 … 政府がJAXAに設けた計画総額1兆円規模の技術開発支援基金です。企業・大学に最長10年の支援を出します(第1〜3期で累計約8,000億円が決定済み)。
  • プロジェクト収益/受注残高 … 宇宙ベンチャーの決算でよく使われる指標です。プロジェクト収益は売上高に補助金収入などを加えた「稼ぎの総量」、受注残高は契約済みでこれから売上になる分を指します。会計上の売上高だけでは事業の勢いが見えにくいため、各社がこの2つを開示しています。

2.なぜ今テーマになっているのか

2026年前半の物色には、はっきりしたきっかけが3つあります。順に見ていきます。

防衛省の衛星コンステレーション事業 — 契約2,831億円

1つ目は防衛省です。ミサイルなどの目標を宇宙から把握する「衛星コンステレーションの整備・運営等事業」の民間事業者が2025年12月24日に選定され(防衛省 2025年12月24日)、2026年2月に契約内容が公表されました。受注したのは三菱電機・スカパーJSAT・三井物産などが出資する特別目的会社「トライサット」で、契約金額は2,831億円、契約期間は2026年2月19日から2031年3月31日まで。事業者側が衛星を保有・運営して国にサービスを提供するBOO方式で、2028年頃からの本格運用を目指します(三菱電機 ニュースリリース 2026年2月20日)。この事業にはSynspective・QPSホールディングス・アクセルスペースといった上場宇宙ベンチャーも画像データの供給側として参画しており、後で見るように各社の受注残高を一気に押し上げました。

宇宙戦略基金は第3期で累計約8,000億円に

2つ目は補助金の積み増しです。宇宙戦略基金は第1期約3,000億円(2023年度補正予算)、第2期約3,000億円に続き、第3期2,000億円・19テーマが2026年2月25日に決定され、累計は約8,000億円に達しました(内閣府 宇宙戦略基金日経 2026年2月)。政府は宇宙産業の市場規模を2020年の約4兆円から2030年代早期に8兆円へ倍増させる目標を宇宙基本計画(2023年6月閣議決定)に掲げています(内閣府 宇宙基本計画)。防衛予算も2026年度は9兆353億円と過去最大で、次期防衛通信衛星の整備などに882億円が計上されています(防衛省 令和8年度予算案の概要)。

SpaceXが史上最大級のIPO

3つ目は米国です。SpaceXが2026年6月12日にナスダックへ上場しました。調達額750億ドル・評価額1.77兆ドルは株式市場の歴史で最大級のIPOと報じられ、初日は公開価格135ドルに対し19%高の160.95ドルで引けました(CNBC 2026年6月12日)。もっとも上場後は伸び悩み、7月15日には株価が公開価格の135ドルを初めて割り込みました日経 2026年7月)。材料の派手さと、上場後の株価が別物である点は、後で見る日本の関連株にも当てはまります。NASAのアルテミス計画でも、2026年4月1日に有人月周回ミッション「アルテミスII」が打ち上げられ、アポロ17号(1972年)以来の月への有人飛行が実現しています(NASA 2026年4月1日)。世界の宇宙経済は2023年の6,300億ドルから2035年に1.8兆ドルへ約3倍になるという予測もあります(世界経済フォーラム 2024年4月)。

3.収益はどこから生まれるか

いまの日本の宇宙ビジネスで、上場企業の収入は大きく3つに分かれます。どれも「誰が・何に対して払うお金か」が違い、決算上の表れ方も違います。

収入源支払い手何に対する対価か決算上の表れ方
①政府の契約・調達防衛省・JAXA・各省衛星画像の提供、衛星・ロケットの開発製造、デブリ除去などの実証受注残高→売上高。防衛コンステ事業(2,831億円)はこの典型
②基金・補助金宇宙戦略基金(JAXA)・SBIRなど技術開発への支援。売上ではなく開発費の肩代わりに近い多くは営業外収益。営業赤字のまま経常黒字になる会社が出る
③民間向けの販売企業・個人(データ販売、衛星通信、放送、輸送)衛星データ、通信回線、月への荷物輸送など売上高。安定して大きいのは現状スカパーJSATの衛星通信のみ
宇宙関連の3つの収入は「誰が払い・決算のどこに出るか」が異なります(各社開示に基づく整理)

4.ロケットの現在地 — 打上げが業績のゲート

宇宙ビジネスは、衛星を軌道に運べなければ何も始まりません。打上げの成否がそのまま業績と株価を動かすため、国産ロケットの現在地を押さえておきます。主力のH3ロケット(三菱重工がプライム)は、2023年3月の試験機1号機失敗のあと2・3・4・5・7号機と5機連続で成功していましたが、2025年12月22日の8号機で第2段エンジンの2回目の燃焼が正常に立ち上がらず、準天頂衛星みちびき5号機の軌道投入に失敗しました(日経 2025年12月)。対策検証を兼ねた6号機(ブースターなしの新形態で、号機の数字と打上げ順が前後しています)が2026年6月12日に成功して運用に復帰し(Science Portal 2026年6月12日)、みちびき7号機を載せる9号機は2026年8月7日に予定されています。打上げが天候などでずれた場合に備え、JAXAは9月30日までの予備期間も確保しており、8号機失敗後の慎重な姿勢がうかがえます(sorae 2026年6月15日JAXA 2026年7月8日)。

小型ロケットは苦戦が続きます。IHI系のイプシロンSは第2段モータの地上燃焼試験が2回連続で爆発し、2026年2月に設計を変更(強化型イプシロン由来のM-35aモータを使う「Block1」構成)したうえで2026年度内の実証機打上げを目指す計画になりました(文部科学省 宇宙開発利用部会資料 2026年2月4日)。民間のスペースワン(非上場。キヤノン電子・IHIエアロスペース・清水建設などが出資)のカイロスは、2026年3月の3号機も飛行中断となり3機連続の失敗で、次号機の打上げ日程は未定です(日経クロステック)。ispaceの月着陸も2023年・2025年と2回続けて失敗しており、このテーマは「一晩で計画と株価が変わる」イベントリスクと隣り合わせです。

5.銘柄マップ:6つの層

宇宙ビジネスは、ロケットと衛星を造る側、衛星を運用してデータやサービスを売る側、それを支える部品・素材・地上システムの分業で成り立ちます。中核の専業ベンチャーだけに偏らないよう、6つの層に分けて関連銘柄を並べます。銘柄は「開示や案件名で宇宙への関与が確認できるか」で選び、テーマ純度(宇宙が業績を動かす度合い)は各社の開示からの定性判断です。大手の多くは宇宙が防衛や民間航空と同じセグメントに混在しており、宇宙単独の売上は開示されていません。

宇宙関連のお金の流れの図。左に政府(防衛省の衛星コンステ事業 契約2,831億円、宇宙戦略基金 計約8,000億円、JAXA・各省の開発調達)、中央に上場企業の受注・売上(ロケット・衛星製造、衛星データ・サービス、通信・地上・ソフト)、右に民間市場(衛星データ販売、衛星通信・放送、月輸送・軌道上サービス)。政府から企業への契約・受注は実線(確定した流れ)、企業から民間市場への流れは点線(これから拡大が期待される流れ)で描かれている。
主な上場銘柄(コード)宇宙での役割テーマ純度
①衛星データ・コンステレーションQPSホールディングス(464A)、Synspective(290A)、アクセルスペースHD(402A)小型SAR・光学衛星の開発運用とデータ販売。3社とも防衛コンステ事業に参画高:売上のほぼ全てが宇宙
②軌道上サービス・月面アストロスケールHD(186A)、ispace(9348)デブリ除去・衛星寿命延長/月面輸送。政府実証契約が収入の中心高:ただし商用化はこれから
③衛星通信・運用スカパーJSAT(9412)国内最大手の衛星通信。防衛コンステSPCにも出資。専業側で唯一の安定黒字高:宇宙事業が利益の柱
④ロケット・衛星製造(大手)三菱重工(7011)、IHI(7013)、三菱電機(6503)、NEC(6701)H3プライム/イプシロンS・推進系/衛星プライム・トライサット中核/衛星・地上システム低〜中:防衛と混在し宇宙単独では小
⑤推進薬・部品・素材日油(4403)、カーリット(4275)、日本航空電子(6807)、ハーモニック(6324)、東レ(3402)、多摩川HD(6838)固体推進薬/その原料AP(国内唯一)/H3の慣性センサ/宇宙用減速機/炭素繊維/高周波デバイス低:全社比では小さいが供給実績は明確
⑥地上システム・データ利用セック(3741)、コア(2359)、さくらインターネット(3778)宇宙機ソフトウェア/みちびき対応の高精度測位/衛星データ基盤Tellus運営低〜中:宇宙は事業の一部
宇宙関連銘柄マップ(層別。関与は各社開示・報道に基づく)

⑤の部品・素材層について補足します。日油(4403)は1955年のペンシルロケット以来、日本の宇宙ロケット用固体推進薬をすべて供給してきた会社で、H3の固体ロケットブースタSRB-3の推進薬も担います(日油 化薬事業)。カーリット(4275)はその推進薬の主原料である過塩素酸アンモニウムを国内で唯一工業生産しており、2025年12月に宇宙・防衛向けの事業説明会を開いて増産投資(2027年4月稼働で生産能力を2023年比2〜3倍へ)を打ち出しました(株式新聞 2025年12月17日)。日本航空電子工業(6807)はH3の第2段に載る慣性センサユニット(ロケットの姿勢と加速度を測る装置)を1960年代から国産ロケットに供給し続けています(日本航空電子 H3特設ページ)。いずれも主力事業は別にあり宇宙の売上比率は小さいものの、「代わりがきかない部品」を持つ点が特徴です。なお多摩川HD(6838)は、宇宙用センサで有名な多摩川精機(非上場)とは別の会社です。同社の宇宙・防衛への関与はLEO衛星・防衛通信向けの高周波デバイスで、混同には注意が要ります。

6.バリュエーションで見る主要銘柄

主要銘柄を株価水準とあわせて並べます。PER・PBRは直近本決算の実績1株利益・純資産に2026年7月17日終値を当てた実績ベース、時価総額は同終値×発行済株式数の概算です。QPSホールディングスとアクセルスペースHDは2026年7月14日に2026年5月期本決算を発表しており、表もその実績を反映しています。QPSは補助金収入により最終黒字化したためPERを載せていますが、専業ベンチャーの他4社は直近本決算が最終赤字のためPERを「―」としました。

銘柄(コード)株価(円)PER(実績)PBR時価総額
QPSホールディングス(464A)1,597約69倍約2.8倍約890億円
Synspective(290A)1,1213.9倍約1,480億円
アクセルスペースHD(402A)4584.4倍約310億円
アストロスケールHD(186A)98116.8倍約1,360億円
ispace(9348)4114.0倍約600億円
スカパーJSAT(9412)2,27727.7倍2.1倍約6,780億円
三菱重工(7011)3,68137.3倍4.0倍約12.4兆円
IHI(7013)2,666.517.6倍4.4倍約2.9兆円
三菱電機(6503)5,37027.1倍2.4倍約11.4兆円
NEC(6701)4,35421.4倍2.6倍約5.9兆円
日油(4403)2,714.515.4倍2.1倍約6,420億円
カーリット(4275)2,18916.8倍1.2倍約500億円
日本航空電子(6807)2,41123.0倍1.1倍約1,700億円
セック(3741)2,83319.1倍2.8倍約290億円
コア(2359)1,9809.9倍1.4倍約290億円
主要関連銘柄のバリュエーション(株価は2026年7月17日の取引所公表の終値、指標は直近本決算の実績ベース。EPS・BPS・株式数は各社決算短信・IRBANK・Yahoo!ファイナンス)

専業ベンチャーのうち本業の営業黒字はまだ1社もなく、利益を物差しにした比較は依然として難しい状況です。QPSホールディングスは2026年5月期に純利益11.5億円で最終黒字化しましたが、源泉は営業外の補助金・共同研究収入で、営業損益は8.33億円の赤字です。PER約69倍は、この補助金頼みの小さな利益に対する水準である点に注意が要ります。純資産倍率で見ると、アストロスケールHDのPBR16.8倍は割高さというより、赤字の累積で自己資本が薄くなっている(2026年4月期末で約81億円)ため分母が小さいことの表れです。アクセルスペースHDは2026年5月期も最終赤字(純損失40.6億円)が続いたためPERを「―」とし、PBRは純資産69.7億円に対し4.4倍で、赤字継続で自己資本が細っている点はアストロスケールHDと同じ構図です。一方で大手④の実績PER17〜37倍は防衛関連の増益期待も含んだ水準で、宇宙は事業の一部にすぎません。⑤〜⑥の周辺層ではコアの実績PER9.9倍、日本航空電子のPBR1.1倍のように市場平均並みかそれ以下の銘柄が目立ちます。つまり宇宙への期待が株価に強く乗っているのは①〜③の中心層で、④の大手は防衛期待で市場平均を上回り、⑤〜⑥は総じて市場平均圏、という構図です。

7.実需はどこに出ているか

受注残高には、政府需要がはっきり出ています。 アクセルスペースHDの受注残高は533.75億円(2026年5月期本決算、前期比約4.7倍)と、通期売上高25.08億円の約21倍という規模に膨らみました。主因は防衛省の衛星コンステレーション事業の受注です(SPACE CONNECT)。Synspectiveも受注残高249.6億円(2025年12月期末、前期末比+196億円)と急増し、防衛省向けサービスは2026年4月に始まっています(ログミーFinance)。アストロスケールHDの受注残高は約379億円(2026年4月期末、受注残と受注内定分の合算。厳格な収益認識ベースの受注残総額は274.35億円)で、JAXAのデブリ除去実証「ADRAS-J2」(契約120億円)は単一契約として社史最大です(アストロスケール 決算関連ニュース)。QPSホールディングスは防衛省の衛星コンステレーション事業で、2026年から2031年の5年間に約697億円規模の画像データ取得契約を受注しています(ログミーFinance)。

損益への反映は、会社ごとに段差があります。 営業黒字はスカパーJSATだけで、2026年3月期は営業利益353億円(前期比+28.3%)と過去最高、宇宙事業セグメントは営業収益698億円・利益161億円でした(出典: 2026年3月期決算短信、スカパーJSAT IRライブラリ)。QPSホールディングスは2026年5月期に経常利益11.66億円・純利益11.52億円と、補助金収入により経常・純利益ベースで黒字化しました。ただし営業損益は8.33億円の赤字で、来期(2027年5月期)は売上高100億円・営業利益3億円と、会社は本業ベースでの黒字化を計画しています(株探 2026年7月14日)。Synspectiveも今期(2026年12月期)は補助金で経常黒字化の見通しですが、営業損失は54.67億円と赤字が続く計画です(SPACE CONNECT)。アストロスケールHDは2026年4月期に売上総利益0.19億円と粗利ベースの黒字化にようやく届いた段階です。ispaceとアクセルスペースHDは全段階で赤字で、アクセルスペースHDは2026年5月期に営業損失38.22億円・純損失40.57億円と赤字が拡大し、来期は売上高90億円で営業損失を8億円まで縮める計画です(SPACE CONNECT)。ispaceの今期(2027年3月期)会社予想は営業損失177億円で、月着陸船ミッション3の打上げは2028年内に延期されています(ispace 2026年5月15日)。一方で2026年7月にはSpaceXのスターシップに月輸送の相乗り枠(契約総額5,000万ドル)を確保し、スカパーJSATと月面の通信インフラ実証で覚書を結ぶなど、外部との連携で開発リスクの分散を進めています(sorae 2026年7月9日ispace 2026年7月16日)。

大手は「防衛・宇宙」セグメントとして数字が出ています。 三菱電機の防衛・宇宙システム事業は2026年3月期に売上高4,214億円(前期比+676億円)・営業利益405億円で、2027年3月期は売上高5,600億円へ全社最大の増収を計画します。ただし伸びの主因は防衛システムです(出典: 決算説明会資料、三菱電機 IRライブラリーオートメーション新聞 2026年5月)。三菱重工の航空・防衛・宇宙セグメントは売上収益1兆3,938億円・事業利益1,515億円(+52%)と過去最高水準です。IHIの航空・宇宙・防衛セグメントは売上収益6,517億円(+17.3%)と増収でしたが、営業利益は1,124億円(前期比▲8.4%)と、民間航空エンジンの整備費増などで減益でした。いずれも宇宙単独の内訳は開示されていません(出典: 各社2026年3月期決算資料、三菱重工 決算情報IHI IR情報)。素材側では日油の化薬事業が売上高616.75億円(+59.1%)・営業利益79.79億円(+154.9%)と急拡大していますが、こちらも主因は防衛向け火工品です(出典: 2026年3月期決算短信、日油 IR情報)。

8.株価は一往復した

株価の位置も確認しておきます。主要銘柄は2026年1月の安値から5月末の高値まで急伸し、その後7月半ばまでに大きく下げるという一往復を既に経験しています。高値はいずれもSpaceX上場(6月12日)前の5月27日〜29日に付いています。

銘柄(コード)1月以降の安値高値(日付)7月17日終値高値からの下落率
スカパーJSAT(9412)2,015円(1/5)4,720円(5/27)2,277円▲52%
QPSホールディングス(464A)1,642円(1/9)4,485円(5/29)1,597円▲64%
アストロスケールHD(186A)670円(1/5)3,015円(5/27)981円▲67%
ispace(9348)410円(3/31)710円(5/29)411円▲42%
主要銘柄の2026年の株価レンジ(安値・高値・7月17日終値はいずれも取引所公表の終値・ザラ場ベース。下落率はIR気象台算出)

下落率は高値比で4〜7割に達しており、テーマ物色の振れ幅の大きさがそのまま数字に出ています。7月17日終値を年初来安値と比べると、アストロスケールHDはなお約5割高い一方、QPSホールディングスは年初来安値をわずかに下回り、ispaceも安値圏まで戻すなど、銘柄ごとの差が開いてきました。材料(防衛コンステ・基金・SpaceX上場)はいずれも実在するものの、株価はそれらの顕在化に先行して上がり、その後下げて一往復した位置にある——事実としてはここまでが言えることです。

9.選定の考え方と、あえて外した銘柄

銘柄は「宇宙のバリューチェーンに、開示や案件名で確認できる形で関わっているか」で層に置きました。透明性のため、テーマ名で挙がりやすいものの、あえて外した銘柄も記しておきます。このテーマは2025年から2026年にかけて上場廃止が相次いだ点が特徴的です。

  • パスコ(旧9232) … 衛星画像販売・空間情報の代表格でしたが、セコム・伊藤忠によるTOBを経て2025年1月に上場廃止となりました(M&Aニュース 2025年1月6日)。
  • アイネット(旧9600) … 約半世紀の衛星運用・データ処理実績を持ちますが、オリックスのTOB成立により2026年2月26日に上場廃止となりました(日経)。
  • キヤノン電子(旧7739) … 超小型衛星CE-SATシリーズとスペースワン出資の中核でしたが、キヤノンによる完全子会社化で2026年4月21日に上場廃止となりました(最終売買日は4月20日。JPX 2026年3月19日)。同社の宇宙エクスポージャーはキヤノン(7751)経由になりますが、キヤノン全体から見ればごく小さな比重です。
  • 日本アビオニクス(6946) … 業績は急伸していますが、ドライバーは防衛エレクトロニクスとデータセンター向け機器で、宇宙固有の開示は薄いため防衛テーマとして扱うのが正確だと判断しました。
  • 多摩川精機 … ジャイロ・宇宙用センサの名門ですが非上場です。上場している多摩川HD(6838)とは別会社である点は本文でも触れた通りです。
  • 宇宙保険(東京海上HDなど) … 打上げ保険・軌道上保険の引受実績はありますが、3メガ損保とも収益に占める比率はごくわずかで、テーマ株としては外しました。
  • インターステラテクノロジズなどの未上場勢 … 小型ロケットのインターステラは2026年1月にシリーズFで201億円を調達し上場観測もありますが、日程は未発表です(インターステラテクノロジズ 2026年1月16日)。スペースワン、アークエッジ・スペースなども未上場です。

10.リスクと注意点

  • 打上げ・ミッション失敗 … H3は8号機で運用段階初の失敗を経験し、カイロスは3機連続失敗、ispaceの月着陸は2回連続失敗です。1回のイベントで受注計画・保険料・株価が同時に動きます。
  • 補助金・政府予算への依存 … 専業ベンチャーの「黒字化」は補助金収入込みの経常段階の話で、本業の営業黒字の会社はまだありません。宇宙戦略基金は期限のある基金であり、防衛コンステ事業の契約も2031年3月までです。その先の継続は政策次第です。
  • 希薄化 … 赤字が続く会社は追加の資金調達が前提になります。ispaceは2024年以降、第三者割当や海外募集を含む大型調達を繰り返しており、既存株主の持分は薄まり続けています(ispace 2026年5月15日)。
  • 海外との競争 … 打上げも衛星通信も、SpaceXが価格と規模で先行しています。スカパーJSATはスターリンクを自社商材として取り込む側に回っていますが(スカパーJSAT Starlink Business)、低軌道コンステレーションとの競争激化は同社自身が開示で言及しています。
  • 株価の振れ幅 … 前章の通り、主要銘柄は2026年前半だけで高値から4〜7割の下落を経験しています。テーマの実在と株価の安定は別物です。
  • 業績の確認ポイント … QPSホールディングスとアクセルスペースHDは2026年7月14日に2026年5月期本決算を発表済みで、本記事はその実績を反映しています。この先は8月7日のH3・9号機や各社の四半期決算で、受注残がどれだけ売上に変わるかが確認材料になります。

11.まとめ

宇宙テーマは「入口」が明確に立ち上がっています。防衛省の衛星コンステレーション事業2,831億円は契約として確定し、宇宙戦略基金は累計約8,000億円まで積み上がり、専業ベンチャーの受注残高は売上の数十倍規模に膨らみました。政府のお金が先に確定するという構図は、数字で確認できます。

一方で「出口」はこれからです。本業の営業黒字は衛星通信のスカパーJSATだけで、専業ベンチャーの黒字化は補助金込みの経常段階にとどまります。7月14日に出たQPSホールディングス(純利益11.5億円で最終黒字化、来期は営業黒字を計画)とアクセルスペースHD(純損失40.6億円と赤字が拡大)の本決算は、この「補助金依存の黒字」と「先行投資の赤字」という二つの型をそのまま映しました。打上げの成否というイベントリスクを抱えたまま、株価は5月末の高値から一往復しています。受注残高が売上高に変わり、補助金なしの営業損益がどこまで改善するか——各社の決算でこの2点を追っていくのが、このテーマの読み方の筋になると考えています。次の確認ポイントは、8月7日のH3・9号機(みちびき7号機)の打上げと、各社の四半期決算です。

参考リンク

本レポートは公開情報に基づく分析であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。

本レポートは生成AI (Claude) を用いて作成されており、データの引用・計算・解釈に誤りが含まれている可能性があります。重要な数値については一次資料 (各社IR・決算短信・有価証券報告書等) でご確認ください。

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テーマ株分析

AIストレージ特需の裏側 — HDD高容量化の恩恵銘柄マップ

AIデータセンター向けストレージ特需では、キオクシア (SSD/NAND) の急騰が目立ちますが、HDD側も歴史的な逼迫にあります。ただしHDDの需要は「台数」ではなく「容量」の軸で伸びており、恩恵は部品によって濃淡が分かれます。本レポートはHDDを部品単位に分解し、プラッタ枚数・ヘッド数に比例して数量が伸びる「枚数比例」の部品と、1台に1個の「台数比例」の部品を区別したうえで、日本の上場サプライヤーを層別にマップ化しました。選定方法と含めなかった銘柄も明示しています。