TOWA (6315) 2027年3月期 Q1決算予測 — 受注が主役の決算

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IR気象台編集部個別株分析

TOWA (6315) は半導体の封止 (モールディング) 装置で世界シェア約6割を握る京都の装置メーカーです。HBMの積層封止に使われるコンプレッション成形装置の受注が過去最高を更新する一方、前期は初号機コストと製品構成の低採算化で増収減益に沈み、本決算翌日には株価が▲20.7%動きました。2026年8月6日発表予定の2027年3月期Q1決算を前に、会社計画・コンセンサス・受注の3点に加え、メモリメーカーとの商流、技術優位性、バリュエーションのレンジ試算まで整理します。

1.要点

  • Q1決算は2026年8月6日15時30分発表予定です (TOWA IRカレンダー)。IR気象台の中央シナリオはQ1売上156億円 (前年同期比+93%)・営業利益24億円 (前年同期は▲5.8億円の赤字) です
  • 2027年3月期の会社予想は売上640億円 (+17.7%)・営業利益102.4億円 (+48.0%) に対し、アナリスト予想の平均 (コンセンサス) は売上666億円・営業利益118.7億円と、営業利益で+15.9%会社を上回っています (IFIS株予報)
  • 会社は四半期あたり受注高150〜170億円を想定しています。前期Q3には196億円の実績があり、受注がこのレンジを上抜けるかどうかが本レポートとして観察すべき最大の論点です
  • 過去9回の決算翌営業日リターンは平均▲1.5%、うち6回が2桁変動 (最大+23.8%、最小▲20.7%) です。IR気象台の確率加重平均は▲0.8%で、期待値ゼロ近辺・振れ幅極大というプロファイルです
  • 株価3,105円 (2026年7月7日終値) は会社予想EPS基準でPER33.3倍、コンセンサスEPS基準で27.5倍です。本決算後のフォワードPERはおおむね28〜38倍のレンジで推移しており、本文でEPS×PERの株価レンジを試算します

本レポートで使う用語を先に整理します。

  • 封止 (モールディング): 半導体チップを樹脂で覆って保護する後工程。TOWAの主力はチップに樹脂を押し当てて成形するコンプレッション (圧縮) 成形と、溶けた樹脂を流し込むトランスファ成形の2方式です
  • MUF (モールドアンダーフィル): 積層したチップの隙間まで樹脂を一括充填する封止技術。HBMの量産で使われており、コンプレッション成形装置が担います
  • HBM: DRAMチップを積み重ねて広帯域化したAI向けメモリ。積層数が増えるほど封止の難度と装置需要が上がります
  • OSAT: 半導体の組立・封止・検査といった後工程を専業で受託する企業。ASE・Amkor・JCETなどが大手です
  • 受注残高: 受注済みでまだ売上に計上されていない金額。装置は受注から検収 (顧客の受入確認) まで時間がかかるため、受注残が将来の売上の先行指標になります
  • PLP (パネルレベルパッケージ): 大型パネル基板上で複数チップを一括パッケージする次世代工法。TOWAは量産向け投資が今期下期以降に立ち上がると想定しています

2.ビジネス構造 — モールド専業のニッチトップ

TOWAは封止装置と封止用精密金型を内製一貫で手がける専業メーカーです。半導体モールディング装置の世界シェアは、TechInsightsのデータを基にした会社推定で63%です (2025年3月期時点、第二次中期経営計画)。日経クロステックは2022年時点で66〜70%と報じており、集計によって幅はあるもののいずれも世界首位です。セグメント別の実績は次の通りで、売上の9割超が半導体製造装置です。

セグメント売上高 (億円)前期比営業利益 (億円)
半導体製造装置498.7+1.9%+65.2
メディカルデバイス24.9+9.9%+4.5
レーザ加工装置20.1▲11.0%▲0.5
連結543.7+1.7%+69.2
2026年3月期のセグメント別実績 (出典: TOWA IRライブラリー掲載の決算短信)

3.商流 — 装置は誰に売れて、いつ売上になるのか

半導体事業の売上を製品別にみると、2026年3月期の装置・金型売上403.9億円のうち、モールディング (封止) 装置が61%、封止用の精密金型が30%、封止後のパッケージを切り分けるシンギュレーション装置が9%です。このうちモールディング装置と金型を合わせた部分だけを100とすると、HBM・先端パッケージ向けが中心のコンプレッション系が41%、リードフレームやパワー半導体向けが中心のトランスファ系が59%です (出典: 決算説明資料、TOWA IRライブラリー)。これらの装置が半導体製造のどの工程で使われ、誰に売れるのかを1枚に整理したのが次の図です。

半導体後工程の流れとTOWA装置の位置、装置の売り先 (メモリメーカーとOSAT) を示した商流図

図のルート①が本レポートの主役です。HBMを作るメモリ各社は、ウェハを作る前工程だけでなく、積層・封止といった後工程も自社工場内で完結させています。SK hynixは韓国・清州にHBM向け後工程の新棟を建設して前工程棟と一体運用する計画で (CNBC)、Samsungは天安・温陽の後工程拠点を増強中 (TrendForce)、Micronもシンガポールで自社のHBMパッケージング工場を起工済みです (Micron IR)。つまりHBM向け封止装置の売り先はOSATではなく、メモリメーカー本体の後工程ラインです。TOWA自身も2024年10月に韓国・天安の新工場を稼働させ、韓国子会社の生産能力を従来比2倍に引き上げました (ニュースイッチ)。なおTOWAは顧客名を開示しておらず、SK hynixのMUF工程でTOWA装置が使われているという情報は報道ベースです (DIGITIMES)。一方、図のルート②のロジック先端パッケージでは、カスタムASIC向けにOSAT各社の投資が増えていると会社が説明しているほか (決算説明資料)、TSMCへの封止装置出荷も報じられています (日経)。

仕向地別売上で中国が4割を占める点も、この商流を押さえると読みやすくなります。仕向地は「装置を納めた工場の所在地」なので、韓国メモリメーカーの中国後工程拠点 (SK hynixの重慶パッケージング工場など) に納入すれば中国に計上されます。もっともTOWA自身は中国需要を「EV・パワーモジュール国産化投資が堅調、メモリ需給逼迫を背景とした関連投資も継続」と説明しており (決算説明資料)、中国4割の中身はHBM一色ではなく、車載・パワー半導体向けのトランスファ装置と汎用メモリ関連が混ざっています。韓国系中国工場・中国OSAT・中国ローカルメーカーの内訳は開示されていません。

2026年3月期 仕向地別売上高の構成(単位: 億円

出典: TOWA決算補足資料からIR気象台作成

受注が売上になるまでの時間も商流の一部です。装置の収益認識は据付完了または検収の時点なので (出典: 決算短信の収益認識注記、TOWA IRライブラリー)、受注から売上計上までには製造・輸送・据付・立ち上げの期間がまるごと挟まります。期末受注残高301.4億円は今期の四半期あたり売上想定 (640億円 ÷ 4 = 160億円) の約1.9四半期分に相当し、平均すれば受注から半年前後で売上化する計算です (計算: 301.4 ÷ 160 = 1.9四半期、本レポートの推定)。ただしこれはあくまで平均で、量産リピート機は短く、開発要素の大きい評価機・初号機は長くなります。前期に通期売上が伸び悩んだのは、量産投資の後ずれと評価機などリードタイムの長い受注の比率上昇が主因です。四半期ごとの売上が振れやすいのも、装置ごとにリードタイムが異なるこの構造によります (前期第1四半期の落ち込みには、後述のとおり米国関税の影響という一過性要因が別途加わっています)。

4.技術優位性 — 金型内製とコンプレッション成形

封止装置には大きく2方式あります。従来のトランスファ成形は、溶かした樹脂を細い流路からキャビティ (金型の空洞) へ圧送する方式で、樹脂が金型の端まで流れる間にワイヤやチップへ横方向の力がかかります。TOWAが得意とするコンプレッション成形は、金型に樹脂を敷いておき、チップを付けた基板を上から低圧で押し当てる方式です。樹脂がほとんど流動しないため薄いチップや積層構造を潰さず、樹脂の使用効率もほぼ100% (トランスファは70〜80%)、最大660×620mmの大判パネルまで一括成形できます (TOWA 樹脂成形技術)。

トランスファ成形とコンプレッション成形の違い、およびMUF (モールドアンダーフィル) の模式図

HBMでこの差が効くのがMUF (モールドアンダーフィル) です。従来は積層チップの隙間を毛細管現象で樹脂充填 (CUF) してから封止する2段階でしたが、MUFは封止と隙間充填をコンプレッション成形で一括処理します。HBM最大手のSK hynixはこの考え方の量産工法「MR-MUF」をHBM2世代から採用しており、チップを1段ずつ約300度で熱圧着する競合工法 (TC-NCF) と比べて低荷重・一括処理で放熱にも強いと自社サイトで説明しています (SK hynix newsroom)。TOWA自身も「コストや技術的な課題からMUF技術による生産が継続する」との見方を示しており (決算説明資料)、MUFが主流であり続ける限りコンプレッション装置の需要が続くという構図です。HBM4ではI/O数が2,048ピンと倍増しチップ間ギャップがさらに狭くなりますが、TOWAは狭ギャップ対応の「Ultra narrow gap Mold Underfill」技術を確立し、2025年8月から対応装置を販売しています (2025年3月21日 適時開示)。

コンプレッション成形の性能は装置単体では決まらず、樹脂を受ける超精密金型との擦り合わせで決まります。TOWAの優位性は次の4点に整理できます。

  • 金型の内製一貫: 金型の設計・超精密加工・表面コーティングまで社内で完結し、電鋳 (EF) 加工では機械加工で700時間かかる工程を24時間程度に短縮しています (TOWA テクノロジー)。装置と金型を同じ会社が作るため、新しいパッケージへの対応を装置・金型一体で開発できます
  • 金型・消耗品の継続収益: 精密金型は装置・金型売上の約3割を占め、装置の売り切りに加えて金型更新や離型フィルムなどの継続需要があります (決算説明資料)
  • シェアと量産実績: モールディング装置の世界シェアは前述の通り会社推定63%です。競合はASMPT (香港)・Besi (オランダ)・アピックヤマダなどですが、メモリ・先端パッケージ向け投資の増加により、コンプレッション装置・金型の受注は前期に過去最高を更新しました (決算説明資料)
  • 次世代機での先行: 量産コスト約50%削減・1台あたり生産性2倍をうたう次世代コンプレッション装置「INNOMS (イノモス)」を2026年8月に販売開始予定です (2026年5月11日 ニュースリリース)。販売開始直後のため今期の売上寄与は限定的とみられますが (本レポートの見方)、PLP向けの大判パネルにも対応します

5.受注と売上の四半期トレンド

受注高と売上高の四半期推移(単位: 億円

出典: TOWA決算補足資料からIR気象台作成

前期 (2026年3月期) は受注と売上の姿が対照的でした。受注高は通期595.6億円 (+25.6%) と過去2番目 (過去最高は2022年3月期の662.8億円) で、Q3には四半期196.2億円の記録的な受注が入りました。AI・データセンター向けが牽引し、コンプレッション装置・金型の受注は過去最高です (会社決算説明資料)。一方の売上高は543.7億円 (+1.7%) と過去最高ながら伸びは小幅で、営業利益は69.2億円 (▲22.1%) の減益でした。減益の内訳は次の増減要因分析の通りで、開発中の初号機案件(薄利)の比率が上がって製品構成が低採算側に振れたこと(初号機の先行コストと合わせて▲12.6億円)が最大の押し下げ要因です (会社開示)。

2026年3月期 営業利益の増減要因 (前期比。各項目は会社開示の百万円値を億円に四捨五入しているため合計は一致しない場合があります)(単位: 億円

出典: TOWA決算短信の増減要因分析からIR気象台作成

予実の履歴も確認しておきます。前期は期初予想 (売上560億円・営業利益98億円) を2026年2月6日のQ3決算時に売上545億円・営業利益70億円へ下方修正し、着地はその修正予想すら小幅未達 (売上▲0.2%・営業利益▲1.2%) でした。修正理由は量産投資タイミングの後ずれと、評価機などリードタイムの長い受注比率の上昇です (株探)。受注は好調でも売上計上のタイミングが読みにくいという同社の予実特性は、Q1の数字を評価するうえでも前提になります。

前期末(2026年3月期末)の受注残高は301.4億円で、今期の会社計画は四半期あたり受注高150〜170億円を想定しています。この受注残がどのように売上と利益に変わるかを、次に整理します。

6.受注は何四半期後に売上・利益になるか

TOWAは受注生産型なので、受注高・売上・利益は次の順でつながります。まず受注を受け、それが受注残として積み上がり、装置を作って顧客に検収された時点で売上になり、その売上に利益率を掛けたものが利益です。受注残は「期首受注残 + 受注高 − 売上高 = 期末受注残」という式で動きます。

決算期期首受注残受注高売上高期末受注残BBレシオ
2026年3月期(実績)249.5*595.6543.7301.41.10
2027年3月期(会社計画ベース)301.4640**640301.4**1.00
受注残の流れ(億円。*期首受注残は期末実績からの逆算、**受注高は会社の四半期受注想定150〜170億円から本レポートが置いた前提・売上は会社予想。出典: TOWA決算資料をもとに本レポート算出)

では受注は何四半期遅れて売上になるのか。過去8年分(32四半期。2019年3月期〜2026年3月期、いずれも連結・四半期単独)の受注高と売上高を使い、受注を何四半期かずらして売上との相関を見ました(出典: TOWA決算補足資料をもとにIR気象台算出)。四半期は決算を3ヶ月ごとに区切った期間で、1年=4四半期です。

受注が売上に先行する四半期数相関 r(四半期単独)相関 r(2四半期平滑)
0(同じ四半期)+0.65+0.75
1四半期+0.76+0.83
2四半期+0.74+0.84
3四半期+0.66+0.78
受注高(t−k) と 売上高(t) の相関係数(連結・四半期単独32期。2四半期平滑は2期移動平均どうしの相関でノイズを抑えたもの)

相関は1〜2四半期の遅れで最も高く(四半期単独で+0.76、平滑で+0.84)、受注は約1〜2四半期(平均して約1.5四半期)遅れて売上になる、と読めます。次の図は、売上高の実績(点)と、それを2四半期平均でならした線、そして予測に使う『直近2四半期の受注高平均』を重ねたものです。実績は四半期ごとにぶれますが、平均どうしでみると受注(青)と売上(緑)は同じ形で推移し、受注が1〜2四半期先行しているのが見えます。前期後半に受注が急増したぶんが、今期の売上を押し上げる構図です。

受注高(直近2四半期平均・青線)と売上高(2四半期平均・緑線)の推移を重ねた折れ線グラフ。2四半期平均でならすと両者は同じ形で推移し、受注(青)の山と谷が約1〜2四半期遅れて売上(緑)に現れる。売上の実績値は点で表示し、2026年3月期Q1の80.8億円という外れ値も含む。2027年3月期Q1の売上157億円は回帰による予測値で、予測部分は破線と網かけで示す。

この関係を回帰式にすると、売上(t) = 0.77 ×(直近2四半期の受注高平均)+ 24.1(決定係数r²=0.63、標準誤差±23億円)です。前期後半の受注(第3四半期196.2億円・第4四半期149.0億円)から、今期第1四半期(4-6月)の売上は 0.77 × 172.6 + 24.1 = 約157億円(±23億円)と試算できます。第2四半期は、第1四半期の受注が会社想定(四半期150〜170億円)どおりに入れば約140億円です。前期第1四半期の売上80.8億円は、会社が決算説明資料で「第1四半期は米国の関税政策の影響を受け低調なスタートとなった」と説明した一過性の落ち込みで(TOWA IRライブラリー)、構造的な需要減ではありません。この一過性要因が剥落するぶんも、受注の裏づけと合わせて今期第1四半期の大幅回復を後押しします。

売上から利益への変換も、同じ8年分(32四半期)のデータで回帰します。営業利益(t) = 0.33 × 売上(t) − 19.5(r²=0.85と当てはまりは良好)です。売上が1億円増えると営業利益は約0.33億円増え(限界利益率33%)、損益分岐点は売上約59億円です。ただし直近1年は初号機の先行コストと低採算品の影響で、実際の営業利益がこの回帰線を平均8億円ほど下回っており、当面はこの下振れを見込む必要があります。したがって今期第1四半期の営業利益は、売上156億円なら 0.33 × 156 − 19.5 = 約32億円が正常時の目安で、直近の低採算による下振れ8億円を引いた約24億円を中央とみます。

この中央24億円(営業利益率15.4%)は、別の道筋である会社計画とも整合します。会社の今期上期計画は売上320億円・営業利益51.2億円(利益率16.0%)で、四半期に割り戻すと売上160億円なら営業利益約25.6億円です。過去の受注→売上回帰と、会社自身の計画という独立した2つの根拠が同じ24〜26億円を指す点は、中央値の確からしさを補強します。ただし上振れ余地は限定的とみています。会社は今期の利益率回復を『段階的』と位置づけ、WLP(ウエハレベルパッケージ。ウェハ状態のままチップを封止・再配線する工法)で市場シェアを優先する価格戦略を織り込むと説明しており(決算説明会Q&A、TOWA IRライブラリー)、一気に高採算へ戻る想定は置いていません。初号機コストも、ハイエンドのコンプレッション装置は前期がプロトタイプ中心で量産移行は今期から来期にかけて本格化すると会社は述べており(同Q&A)、開発フェーズの先行コストは今期も一部残ります。利益は中央付近に収束しやすく、外れるとすれば下振れ側という非対称な構図です。

7.顧客側の投資環境 — メモリ設備投資の再加速

TOWAの受注を左右するのは、メモリメーカーとOSATの設備投資です。顧客側の直近の動きを一覧にします。

主体直近の実績・計画
SK hynix2026年Q1売上52.6兆ウォン (前年比+198%)・営業利益率72%。2026年投資は前年比大幅増、M15X新工場が2026年5月完成 (SK hynix)
Samsung2026年の半導体投資+研究開発は110兆ウォン超 (前年比+128%)。HBM生産能力を2026年末までに約47%増強 (THE ELECTrendForce)
Micron2026年度設備投資を約270億ドルへ増額。HBMは2027年暦年分まで完売 (決算説明会記録)
ASE (OSAT最大手)2026年設備投資を85億ドルへ増額 (2025年55億ドル、2024年19億ドル) (DIGITIMES)
キオクシア2026〜28年度の設備投資は年平均約4,700億円 (2025年度実績比+66%) (ニュースイッチ)
SEAJ (業界統計)2026年度の日本製半導体製造装置販売高を前年度比+26%の6.5兆円へ上方修正。修正理由の筆頭がHBM中心のDRAM投資拡大 (マイナビ)
主要顧客・業界側の設備投資動向 (各出典からIR気象台整理)

会社自身の今期前提は「AI・データセンター関連投資が牽引、汎用メモリの需給逼迫でメモリ投資は当面継続、PLP量産投資が下期以降に立ち上がり」です。注意すべきは韓国HBM投資のタイミングで、会社は「顧客工場のスペース制約から下期以降、足元は汎用メモリ投資が増加」と説明しています (決算説明資料)。つまりQ1の受注はHBM一本ではなく、汎用メモリ+中国向けが下支えする構図が会社の想定です。

8.会社予想とコンセンサスのギャップ分解

今期は会社が保守的、コンセンサスが強気という構図です。日経も決算翌日の記事で会社の純利益計画が市場予想平均を下回ったことを報じています (日経)。

指標会社予想コンセンサス差額の主因 (本レポートの推定)
売上高 (億円)640666+26 (+4.1%)HBM4対応装置・PLPの量産投資立ち上がりによる上振れを織り込んだ数値とみられる
営業利益 (億円)102.4118.7+16.3 (+15.9%)売上ギャップ26億円に対し利益ギャップ16.3億円は増分利益率約63%に相当し、高採算品(コンプレッション装置・金型)への構成シフトが前提
経常利益 (億円)102.4120.1+17.7 (+17.3%)営業外収支の見立て差を含む
純利益 (億円)70.084.6+14.6 (+20.9%)経常利益ギャップ+17.7億円に対し税負担分でやや縮小。純利益/経常利益比率は会社0.68・コンセンサス0.70とほぼ同水準で、経常利益段階のギャップがほぼ比例して純利益に伝わっている
2027年3月期の会社予想とコンセンサスの比較 (コンセンサスはIFIS株予報 2026年7月7日更新値。差額の主因は本レポートによる推定)

利益ギャップの妥当性を増分利益率で検算します。会社計画自体の増分利益率は、増収96.3億円に対して営業利益の増加33.2億円なので 33.2 ÷ 96.3 = 34.5%です。コンセンサスが会社を上回る部分は、追加増収26億円に対して追加増益16.3億円で 16.3 ÷ 26 = 62.7%となり、会社計画の34.5%を大きく上回る利益率を追加売上に対して想定している計算になります。前期は増収8.9億円 (売上534.8億円 → 543.7億円) に対して営業利益の減少▲19.6億円 (営業利益88.8億円 → 69.2億円、低採算品の比率上昇による減益) だったことを踏まえると、コンセンサス水準の達成には売上の上振れだけでなく、高採算のコンプレッション装置・金型の比率が上がって製品構成が高採算側に振れることが必要です (計算はいずれも本レポート)。

9.Q1の着地試算

前節の相関・回帰で第1四半期(4-6月)を予測します。売上は、直近2四半期の受注高平均172.6億円を回帰式に入れて中央156億円(回帰値157を丸め)、標準誤差±23億円から下振れ134億円・上振れ180億円と置きます。営業利益は、営業利益=0.33×売上−19.5に、直近の低採算による下振れ(回帰線から平均8億円下)を加味して求めます。なお本レポート中央のQ1 156億円に、前節で示した第2四半期の予測約140億円を足すと上期296億円で、会社の上期計画320億円をやや下回ります。会社は上期・下期とも売上320億円・営業利益51.2億円と均等に置いており(=損益は下期偏重ではありません)、会社線に届くかは第2四半期の受注消化次第です。

指標IR気象台 上振れIR気象台 中央IR気象台 下振れ
売上高 (億円)180156134
営業利益 (億円)362412
営業利益率19.9%15.4%8.7%
純利益 (億円)24168
Q1受注高 (億円)180超155〜165140未満
2027年3月期Q1のIR気象台シナリオ (前年同期実績: 売上80.8億円・営業損失▲5.8億円・純損失▲5.3億円。営業利益率は丸め前の営業利益で算出)
  • 中央: 売上 = 0.77 ×(直近2四半期の受注高平均172.6億円)+ 24.1 = 157 → 156億円。営業利益 = 0.33 × 156 − 19.5 − 低採算ドラッグ8 = 24億円(営業利益率15.4%)。純利益 = 24 × 0.68(会社通期の純利益/営業利益比率 70 ÷ 102.4)= 16億円
  • 上振れ: 受注消化が進み売上180億円(回帰の中央+標準誤差)。高採算品が多く初号機の乗らない四半期(前期Q2の利益率20.0%・Q4の18.5%に相当)でドラッグ4 → 営業利益 = 0.33 × 180 − 19.5 − 4 = 36億円。ただし会社は今期の利益率回復を『段階的』とし通期計画を16.0%に置いているため、Q1単独で20%まで戻るのは上振れ側の想定です。Q1受注は前期Q3実績196億円に近づく180億円超
  • 下振れ: 期ズレ再発で売上134億円(回帰の中央−標準誤差)。低採算が続きドラッグ13(前期Q1・Q3並み)→ 営業利益 = 0.33 × 134 − 19.5 − 13 = 12億円。Q1受注も会社想定(150〜170億円)を下回る140億円未満
  • 『低採算ドラッグ』(初号機の先行コストや低採算品による、回帰線からの下振れ)が最大の変動要因です。前年同期(売上80.8億円・営業利益▲5.8億円)からの黒字転換はいずれのシナリオでも前提で、売上の増収率は下振れでも+66%です(計算: 134 ÷ 80.8 − 1 = +65.8%)

10.通期業績予想の評価

中央シナリオのQ1売上156億円は通期会社計画640億円に対して進捗率24.4%です。過去のQ1売上進捗率は2025年3月期24.8%、2026年3月期14.9% (外れ値) で、外れ値を除いた25%前後がレギュラーパターンなので、Q1単独では「会社計画に対して概ね巡航速度」です。ただし第2四半期予測140億円を含めた上期累計296億円は会社の上期計画320億円を約7.5%下回る前提で、上期でみると会社線をやや割り込みます。会社は今期を上期・下期とも売上320億円・営業利益51.2億円(利益率16.0%)と均等に置いており、決算説明会でも「一定程度平準化された前提で計画している」「大きな偏りや突発的な変動は想定していない」と説明しています(決算説明会Q&A、TOWA IRライブラリー)。損益は下期偏重ではなく、下期に立ち上がる韓国HBM・PLPの受注は主に翌2028年3月期以降の売上として効く設計です。だからこそ、通期の上方修正期待に直結するのはQ1の損益計算書よりも受注高です。会社の四半期受注想定150〜170億円に対して、(1) Q1受注が180億円を超え、(2) 会社が下期以降としている韓国HBM投資・PLP量産投資の前倒しが受注に表れれば、コンセンサス (営業利益118.7億円) 方向への上振れシナリオが数字で裏付けられます。逆に受注が140億円台にとどまれば、コンセンサスと会社線のギャップ16.3億円は埋まらないまま下期勝負になります。

11.株価・バリュエーション

Q1は通期予想の修正がない限りEPSが動かない決算ですが、±20%級の株価反応が常態の銘柄なので、バリュエーションの現在地を先に確認しておきます。株価は3,105円 (2026年7月7日の取引所公表の終値) です。

指標数値計算・出所
株価 (2026年7月7日終値)3,105円取引所公表の終値
時価総額約2,334億円3,105円 × 発行済株式数7,515.7万株
PER (今期会社予想EPS基準)33.3倍3,105 ÷ EPS 93.30円 (会社予想)
PER (コンセンサスEPS基準)27.5倍3,105 ÷ EPS 112.77円 (コンセンサス純利益84.6億円 ÷ 自己株控除後7,502.8万株)
PBR3.30倍3,105 ÷ BPS 941.14円 (2026年3月末)
配当利回り (会社予想)0.77%年間配当予想24円 ÷ 3,105円 (予想配当性向25.7%)
ROE (2026年3月期実績)7.0%決算短信。減益で前期13.6%から低下。中計の目標は13%以上
自己資本比率 (2026年3月末)66.4%決算短信
直近の株価指標 (出典: 決算短信はTOWA IRライブラリー、株価は取引所公表の終値。計算はIR気象台)

現在地は、3つの物差しで見ると分かりやすくなります。

基準となるEPSEPSPER過去5年レンジ内の位置
会社 今期(2027年3月期)予想93.3円33.3倍上位およそ1割 (高め)
アナリスト予想 (コンセンサス)112.8円27.5倍上位およそ2割
中計 2028年3月期 目標145.3円21.4倍ほぼ過去中央 (約20倍)
現在の株価3,105円を3つのEPSで見たPERと、過去5年の実績PER分布内での位置 (過去5年=2021年7月〜2026年7月。株価は取引所公表の終値、実績EPSは決算短信・有報ベース、算出と位置づけはIR気象台。予想EPSのフォワードPERと実績EPSの過去分布は厳密には別尺度)

過去5年の実績PERは中央がおよそ20倍 (25〜75%が9〜25倍) です。今の株価は、近い期の利益でみると過去より高い評価ですが、中計2028年3月期のEPSまで織り込むと過去中央並みの21倍に収まります。過去平均並みのPERに収まるのが中計のEPSで見たときだという点が、この銘柄の評価の見どころです。中計は2028年3月期に売上710億円・営業利益156億円・純利益109億円 (さらに2032年3月期に売上1,000億円・営業利益250億円) を掲げています (第二次中期経営計画)。

最大の関門は、営業利益率を2026年3月期の12.7%から2028年3月期に22.0%へ引き上げられるかです。 売上のCAGRは年+14%と装置需要の拡大で説明できますが、営業利益のCAGR年+50%はこの利益率の引き上げ次第で、次の4点が重石になります (計算はいずれも本レポート)。

  • 土台が既に劣化: 中計は基準年 (2025年3月期) の利益率見通し17.0%を起点に22.0%への+5ptを描きましたが、実績が2026年3月期に12.7%へ低下し、22%までの距離は+9.3ptへ広がりました (2025年3月期の実績は16.6%とほぼ計画線でしたが、翌期に崩れています)
  • 最終年度のジャンプが急: 会社予想の2027年3月期16.0%から2028年3月期22.0%への引き上げは、売上+70億円に対し営業利益+53.6億円で、増分の営業利益率にすると約76.6%です (53.6 ÷ 70、本レポート試算)。最終年度に高採算品が一気に効くことを前提にした計算です
  • 牽引役の裏付けが薄い: 高採算の主役候補 (HBM4対応装置・次世代機INNOMS・PLP) は、2028年3月期の売上・利益への金額寄与を会社が開示していません。INNOMSは中計策定後の2026年5月発表で評価開始前、PLPは『下期以降に立ち上がり』。会社自身も『段階的改善』『WLPはシェア優先』とトーンを抑えています (決算説明会Q&A、TOWA IRライブラリー)
  • 外部リスク: 工場建設の遅れ・一部地域の電力不足 (会社が明言)、地政学、WLPの価格競争。売上710億円はHBM・メモリの設備投資という需要ドライバーで相対的に見通しやすい一方、利益率22%への引き上げが中計で最も不確実な部分です

以上を株価に落とすと、下値と上値は次のように振れます。いずれもEPS×PERの機械的な積による本レポート試算で、株価の予想・目標や売買の推奨ではありません。

ケースEPS × PER想定株価現値比
下値: 利益率回復が後ずれし評価が過去中央へ戻る会社EPS 93.3 × 20倍約1,866円▲40%
現状会社EPS 93.3 × 33.3倍約3,105円±0%
中計達成・通常倍率中計EPS 145.3 × 20〜25倍約2,906〜3,633円▲6〜+17%
中計達成・プレミアム維持中計EPS 145.3 × 33倍約4,795円+54%
想定株価の感応度 (EPS × PERの単純積によるIR気象台試算。株価の予想・目標や売買の推奨ではありません)

下値は利益率回復の後ずれによる評価の低下、上値は中計の達成度に依存する非対称な構図です。過去平均並みの20倍前後に収まるのは中計2028年3月期のEPSで見たときで、それより手前の今期・来期のEPSでは過去より高いPERになります。

12.決算跨ぎの判断材料

過去9回の決算発表に対する翌営業日の終値騰落率 (対発表日終値、株式分割調整後) を、取引所公表の終値をもとにIR気象台が算出しました。

発表日決算翌営業日リターン
2024年5月10日2024年3月期 Q4 (本決算)+20.8%
2024年8月8日2025年3月期 Q1▲12.1%
2024年11月7日2025年3月期 Q2▲13.0%
2025年2月6日2025年3月期 Q3▲16.4%
2025年5月9日2025年3月期 Q4 (本決算)+7.7%
2025年8月7日2026年3月期 Q1▲0.4%
2025年11月7日2026年3月期 Q2+23.8%
2026年2月6日2026年3月期 Q3 (下方修正同時)▲3.0%
2026年5月11日2026年3月期 Q4 (本決算+今期予想)▲20.7%
決算発表と翌営業日リターン (発表日はTOWA開示、リターンはIR気象台計算)

平均は▲1.5%ですが、9回中6回が2桁変動です。直近の本決算 (2026年5月11日) は、受注が過去2番目の水準でも今期の利益計画がコンセンサスを下回ったことで▲20.7%となりました。損益の絶対水準そのものより、会社計画やコンセンサスとの差の方が翌営業日リターンと連動してきた傾向がうかがえます。

Q1決算を跨ぐ場合の確率加重平均を試算します。発生確率はIR気象台の主観的な見立てです。シナリオは (1) 売上・受注とも上振れ (受注180億円超) で+12% (発生確率の見立て25%)、(2) 計画線での着地 (受注150〜170億円) で+2% (同40%)、(3) 期ズレ再発・受注下振れで▲12% (同30%)、(4) 通期計画の達成に疑義が生じる大幅未達で▲20% (同5%) と置きます。確率加重平均 = +12 × 0.25 + 2 × 0.40 + (−12) × 0.30 + (−20) × 0.05 = +3.0 + 0.8 − 3.6 − 1.0 = ▲0.8% (本レポート独自試算)。期待値はほぼゼロで、過去実績が示す±20%の振れ幅だけが残る計算です。

13.結論

IR気象台の中央シナリオは、Q1売上156億円 (前年同期比+93%)・営業利益24億円の黒字転換です。ただしこの銘柄のQ1で見るべき数字は損益計算書ではなく受注高だと整理しています。会社想定の四半期150〜170億円はSK hynix・Samsung・Micron・ASEの投資拡大と整合的な保守ラインで、前期Q3の196億円という実績を踏まえると、上振れの主戦場は受注です。受注が180億円を超えて韓国HBM・PLPの前倒しが確認できればコンセンサス (営業利益118.7億円、会社比+15.9%) の裏付けになり、140億円台なら会社線どまりの評価が続きます。バリュエーションは会社予想EPS基準でPER33倍前後で、本決算後の直近レンジ (おおむね28〜38倍) の中央付近ですが、過去5年の実績PER (中央およそ20倍) でみれば上位1割にあたり、過去平均並みの評価に収まるのは中計2028年3月期のEPSで見たときです。受注の数字が、その中計の確度をどちらへ動かすかを見る決算です。

確認ポイントは4点です。(1) Q1受注高と製品別内訳 (コンプレッション装置・金型が過去最高ペースを維持しているか)、(2) 前期Q1に売上を押し下げた関税影響が一巡し、利益率が会社の上期想定16.0%ラインで着地しているか、(3) 会社が下期以降とする韓国HBM投資・PLP量産投資のタイミングに関する説明の変化、(4) 利益率 (会社は今期の回復を『段階的』とし通期16.0%に置いているため、コンセンサスが前提にする高採算化(高採算品への構成シフト)がどこまで前倒しで出てくるか)。過去9回の決算反応は±20%に達しており、決算跨ぎの期待値はほぼゼロという試算結果も含めて判断材料としてください。

参考リンク

本レポートは公開情報に基づく分析であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。

本レポートは生成AI (Claude) を用いて作成されており、データの引用・計算・解釈に誤りが含まれている可能性があります。重要な数値については一次資料 (各社IR・決算短信・有価証券報告書等) でご確認ください。

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