IR気象台IR気象台

ERIホールディングス(6083)2026年5月期 Q3決算予測分析

Xでシェア
IR気象台編集部 個別株分析

改正建築物省エネ法を追い風に単価・省エネ判定が伸びるERIホールディングス(6083)。2026年5月期Q3(12〜2月)を月次IRと3手法で推計し、売上・営業利益の中央シナリオ、進捗率、株価感応を整理。

関連テーマ

分析日:2026年3月25日 | Q3決算発表:3月30日予定

会社概要

ERIホールディングスは、建築確認検査・住宅性能評価・省エネ適合性判定等を行う日本最大の民間確認検査機関グループ。2025年4月施行の改正建築物省エネ法により、全新築建築物に省エネ基準適合が義務化されたことが最大の業績ドライバー。決算期は5月期(Q3 = 12月〜2月)。

ERIが建築プロセスのどこで稼ぐか

 設計段階         着工前            工事中          完成時
    │               │                │               │
    ▼               ▼                ▼               ▼
 設計性能評価 → 建築確認 → 省エネ適合性判定 → 中間検査 → 完了検査
 (任意)       (必須)   (2025年〜必須)   (一部)    (必須)
    ↑               ↑                ↑                        ↑
 【先行指標】   【最重要指標】   【成長ドライバー】        【遅行指標】
 将来の需要     着工不可なので    法改正で新たに義務化      数ヶ月前の
 を映す鏡       売上の入口        された巨大な新市場        確認の「結果」

指標ごとに「時間軸上のどこに位置するか」が異なる。同じ四半期のデータでも、今の業績を映すもの(建築確認)と数ヶ月後を先取りするもの(設計性能評価)がある。

Q2累計実績と通期会社予想

指標Q2累計実績通期修正予想H1進捗率H2残
売上高11,368M24,000M47.4%12,632M
営業利益2,082M4,500M46.3%2,418M
経常利益2,088M4,500M46.4%2,412M
純利益1,268M2,800M45.3%1,532M
営業利益率18.3%18.8%--

ERIは過去実績でH1:H2 ≒ 45〜48:52〜55とやや下期偏重。46%台の進捗率は「例年通りか、やや良い」水準。ただし今期は省エネ法改正初年度で従来パターンが当てはまらない可能性あり。

月次IRデータの読み解き

建築確認済件数(最重要・売上の入口)

建築確認済証がないと着工できないため、ERIの売上の最も上流に位置する指標。

'25/5期'26/5期YoY
6月6,2646,500+3.8%
7月6,9006,798-1.5%
8月6,2075,801-6.5%
9月6,6586,588-1.1%
10月6,9466,994+0.7%
11月6,5976,165-6.5%
H1累計39,57238,846-1.8%
12月5,6696,232+9.9%
1月5,4995,597+1.8%
2月5,5095,561+0.9%
Q3累計16,67717,390+4.3%
  • H1は-1.8%で法改正前の「駆け込み反動減」が残っていた状態
  • Q3で+4.3%に好転 → 反動減が一巡し、新規需要が平準化してきたシグナル
  • 後述の単価上昇(+38.4%)と合わせ、件数増×単価増のダブルの追い風

「駆け込み反動減」とは: 2025年4月の省エネ法改正・4号特例縮小により、施行前に確認申請を前倒しする動き(=駆け込み)が2025年1〜3月に集中。その結果、施行後のH1(6〜11月)は案件が薄くなった。Q3で件数が回復したのは、この前倒し効果が一巡したため。

完了検査済件数(遅行指標・過去の確認の結果)

期間'25/5期'26/5期YoY
Q3(12-2月)17,68617,265-2.4%
H1(6-11月)31,98131,456-1.6%
  • Q3の-2.4%は前期の確認件数減少が時間差で表れたもの。想定内
  • ただし単価上昇(+25.5%)が件数減を大幅に上回るため、金額ベースでは+20%前後の増収が見込める

住宅性能評価(設計=先行指標 / 建設=遅行指標)

設計性能評価(新築)

区分Q3('25/5期)Q3('26/5期)YoY単位
戸建住宅7,3588,120+10.4%
共同住宅6,7096,350-5.4%

建設性能評価(新築)

区分Q3('25/5期)Q3('26/5期)YoY単位
戸建住宅6,1036,012-1.5%
共同住宅7,7458,501+9.8%
  • 戸建の設計評価+10.4%は非常に強い。着工戸数が減少するなかでも、省エネ補助金取得のために性能評価を受ける住宅が増加 → ERIのアドレス可能市場が拡大
  • 共同住宅(設計)-5.4%はマンション着工の弱さと整合的だが、1戸あたり単価が戸建の半分以下(17.4千円 vs 37.8千円)のため、売上インパクトは限定的
  • 戸建の設計+10.4%に対し建設-1.5% → 今後数ヶ月〜1年後に戸建の建設評価も増加に転じることを示唆

今期の業績ドライバー:単価上昇と省エネ新市場

単価上昇効果(H1累計)

法改正により「建築基準法+省エネ基準+構造審査」と審査範囲が拡大し、同じ1件でも手数料が大幅に増加。

業務'25/5期 H1'26/5期 H1件数YoY金額YoY単価変化
建築確認36,133件/1,788M34,294件/2,349M-5.1%+31.3%49,480→68,491円 (+38.4%)
完了検査31,755件/1,520M31,215件/1,875M-1.7%+23.4%47,874→60,067円 (+25.5%)
省エネ判定2,592件/310M9,365件/857M+261%+176%119,598→91,509円 (-23.5%)
  • 建築確認: 件数-5%でも金額+31%。「件数横ばいなら+38%成長」の構造。Q3で件数+4.3%に好転 → 売上は前年比+44%前後が期待できる
  • 省エネ判定: 単価-23.5%は小規模住宅の大量流入が原因。件数+261%で金額+176%と純増の新市場。法律義務化のため縮小リスクが極めて低い
  • 日本ERIが「住宅省エネ適判に係る特別判定チーム」を2026年3月末まで編成 → Q3時点でもまだ処理が追いつかない需要

住宅着工統計(外部環境)

新設住宅着工戸数YoY
2025年12月62,118戸-1.3%
2026年1月55,898戸-0.4%
  • Q2期間は-7.9%と大幅減だったが、Q3に入り減少幅が急速に縮小(-1%前後)
  • 1月の持家は+6.6%と10ヶ月ぶりの増加。反動減が一巡しつつあるシグナル
  • 着工が-7.9%だったQ2でもERIの売上は+26.7%だった(単価上昇+省エネ新市場+M&A効果)。Q3は着工改善+単価継続でQ2以上の増収率の可能性

四半期経常利益の季節パターン

Q1(6-8月)Q2(9-11月)Q3(12-2月)Q4(3-5月)通期
'22/53925955804161,983
'23/54825874827872,338
'24/54064376844912,018
'25/51614393461,1282,074
'26/58771,211??4,500(予)

(単位:百万円)

  • Q3はQ2を下回る年が多い(4年中3年)。年末年始を含み営業日数がQ2より少ない
  • Q2経常1,211Mに過去比率(0.86〜1.0倍)を掛けると、Q3は1,041〜1,211Mの範囲
  • '25/5期Q4の1,128Mは法改正前の駆け込み。'26/5期Q4はこの効果がないため、H2はQ3:Q4 ≒ 50:50に近い配分が合理的

Q3業績予測(3手法クロスチェック)

推計手法

  • アプローチ1(ボトムアップ): 月次件数×H1単価で6業務を積算 → H1構造比率(65.4%)で非開示分を補正
  • アプローチ2(トップダウン): Q2売上5,985M × 過去Q3/Q2比率0.983
  • アプローチ3(前年×増収率): 前年Q3売上にH1で確認されたセグメント別増収率を適用

3アプローチの結果

アプローチQ3売上推計
1. ボトムアップ+補正6,017M
2. トップダウン5,883M
3. 前年×増収率6,125M
3手法の中央値6,017M
加重平均(40:30:30)6,009M

3手法が 5,883M〜6,125M の狭いレンジに収束。推計の信頼性は比較的高い。

3シナリオ予測

中央シナリオのベースは3手法の中央値 6,017M を採用。特定のアプローチに依存せず、クロスチェック結果を統計的に中立に反映する。

指標保守中央楽観前年Q3実績
Q3売上(M)5,5966,0176,4394,803
Q3営業利益(M)9511,1131,275347
Q3経常利益(M)9541,1161,279346
Q3純利益(M)579678776187
前年比(売上)+16.5%+25.3%+34.1%
前年比(営利)+174%+221%+267%
営業利益率17.0%18.5%19.8%7.2%
指標保守中央楽観
Q3累計売上(M)16,96417,38517,807
Q3累計営利(M)3,0333,1953,357
Q3累計経利(M)3,0423,2043,367
進捗率(売上)70.7%72.4%74.2%
進捗率(営利)67.4%71.0%74.6%
進捗率(経利)67.6%71.2%74.8%
指標保守中央楽観前年Q4参考
Q4残(売上)7,036M6,615M6,193M5,986M
Q4残(営利)1,467M1,305M1,143M1,133M
Q4残(経利)1,458M1,296M1,133M1,129M

各シナリオの通期達成可能性

  • 保守: Q4に営利1,467Mが必要(前年Q4比+29.5%)。やや高いハードルだが不可能ではない
  • 中央: Q4に営利1,305Mが必要(前年Q4比+15.2%)。通期達成の蓋然性が高い
  • 楽観: 進捗率74.6%に達し、再上方修正の可能性が浮上

省エネ判定のフェルミ推定(月次非開示への対応)

省エネ適合性判定は月次データ非開示。建築確認件数との連動関係からフェルミ推定を行った。

Q3建築確認 17,390件 × 省エネ判定比率 24.1% ≒ 4,191件
× H1単価 91,511円/件
= Q3省エネ判定 ≒ 383〜396M(中央約390M)

比率が100%にならない理由:約37%の住宅は「仕様基準」で省エネ適合(適判不要)、別機関へ適判を出すケースもある。この推定結果はH1構造比率法の非開示補正と整合的であり、推計手法の妥当性を裏付ける。

リスクファクター

リスク営業利益影響発生確率期待値
省エネ判定の件数・単価下振れ-80M15%-12.0M
住宅着工の2月反転悪化-60M10%-6.0M
インフラストック事業の冬季閑散-40M15%-6.0M
完了検査単価のH1比低下-30M10%-3.0M
M&A子会社ののれん償却増-20M10%-2.0M
リスク合計-29M

リスク期待値-29Mは中央シナリオの営利1,113Mに対して-2.6%。推計を大きく崩すものではない。

総合判断

ポジティブ要因

  1. 建築確認件数がQ3で+4.3%に好転 — 駆け込み反動減の一巡
  2. 単価上昇が構造的に継続 — 建築確認+38.4%。法改正で一過性ではない
  3. 省エネ判定が高水準 — H1で件数+261%。法律義務化で縮小リスク極小
  4. 設計性能評価(戸建)+10.4% — 補助金制度の後押し。将来の建設評価増の先行指標
  5. 住宅着工の減少幅が急速に縮小 — -7.9%→-1%前後
  6. 3手法が5,883〜6,125Mに収束 — 推計の頑健性が高い

ネガティブ・注意要因

  1. 省エネ判定は月次非開示 — Q3売上の最大の不確実要因
  2. 完了検査件数-2.4% — 単価上昇でカバーされるが件数回復はまだ先
  3. インフラストック事業の季節性 — 年度末偏重でQ3は薄い可能性
  4. 保守シナリオでは営利進捗67.4% — Q4のハードルがやや高い
  5. 中央シナリオでも「修正なし」なら株価は軟調になりうる(後述)

結論

中央シナリオでは Q3売上6,017M・営業利益1,113M・経常利益1,116M と推定。Q3累計の進捗率は売上72.4%・営利71.0%・経利71.2%で、通期会社予想の達成に十分なペース。楽観シナリオ(営利進捗74.6%)なら再上方修正の可能性あり。

中期経営計画が示す利益ピークアウト構造

2025年7月公表の中計(2026〜2028年5月期)の計数目標は以下の通り。

指標2025年5月期(実績)2026年5月期(今期予想)2028年5月期(中計目標)
売上高197億円240億円280億円
営業利益(率)20.4億円(10.4%)45億円(18.8%)40億円(14.3%)
ROE21.4%20~30%
  • 中計最終年の営業利益40億円は、今期予想45億円を下回る水準。売上は280億円と伸びるが、利益率は14.3%へ正常化する計画
  • 今期の高マージンは省エネ法施行初年度の一時的な水準と位置づけられやすく、「定常EPS」は今期よりも低下する可能性が会社計画に織り込まれている
  • 現在のPER(約12.9倍)は今期ピーク利益に対する倍率。正常化後のEPSに対しては実質PER 15〜16倍程度

「進捗約71%・修正なし」が期待外れになりうる理由

過去正常年との進捗率比較

9M累計営業利益通期営業利益9M進捗率
'22/51,573M1,924M81.8%
'23/51,557M2,326M66.9%
'24/51,539M1,991M77.3%
'25/5912M2,045M44.6%(異常年)
正常年3年平均約75.3%
'26/5(中央予測)3,195M4,500M71.0%

中央シナリオの71.0%は正常年平均を4.3ポイント下回る。「通期達成はできそうだが、大幅上振れペースではない」と解釈されやすい。

Q3単独はQ2から「減速」に見える

四半期営業利益OPM
Q1(6-8月)868M16.1%
Q2(9-11月)1,214M20.3%
Q3(中央予測)1,113M18.5%

Q3/Q2 ≒ 0.92。冬季閑散期で合理的だが、市場はモメンタム鈍化と受け取る可能性がある。

既に株価に織り込まれている

2025年半ばの約1,600円から現在4,840円まで約3倍。H1〜Q2の大幅増益・上方修正は織り込み済み。「計画どおり・修正なし」は材料出尽くし・利益確定売りのトリガーになりやすい。

シナリオ別の株価感応

発表内容市場の解釈株価反応の目安
進捗約71%+修正なし想定内・ピーク利益織り込み済みニュートラル~軟調(-3~-5%)
進捗約71%+上方修正・増配まだ上振れ余地ポジティブ(+3~+8%)
進捗68%未満+修正なしH1の勢いが鈍化軟調(-5~-8%)
進捗74%超+上方修正強いサプライズ大きめの上昇

過去のQ3決算発表に対する株価反応

決算発表はいずれも引け後(15:30)のため、株価反応は翌営業日以降に出る。Yahoo Finance時系列データで検証。

2023年3月30日発表 — 上方修正+増配あり

日付終値発表日比出来高
3/30(木)1,456基準69,800
3/31(金)1,496+2.7%575,500
4/3(月)1,638+12.5%163,600

翌営業日+2.7%、1週間で+12.5%。出来高10倍超。上方修正+増配でポジティブ反応が明確。

2024年3月29日発表 — 修正なし・好Q3

日付終値発表日比出来高
3/29(金)1,753基準78,600
4/1(月)1,869+6.6%361,900
4/4(木)2,011+14.7%42,900

修正なしでも翌営業日+6.6%、1週間+14.7%。ただし当時は省エネ法改正を先取りする「テーマ買い」が重なった特殊要因がある。

2025年3月28日発表 — 9M累計経常-38%の大幅減益

日付終値発表日比出来高
3/28(金)2,348基準40,700
3/31(月)2,323-1.1%38,300
4/2(水)2,140-8.9%29,300

翌営業日-1.1%と軽微。大幅減益は織り込み済み。4/2以降はトランプ関税ショック(外部要因)が主因。

今回への示唆

  • 2024年のような「テーマ買い」は既に織り込み済みで再現は期待しにくい
  • 株価を動かすのはQ3数値そのものより「上方修正・増配」の有無
  • 修正なしなら材料出尽くしで軟調になるリスクも意識すべき

Q3決算発表で確認すべき注目ポイント

優先度確認項目判断基準
★★★省エネ適合性判定の件数・金額Q3単独で4,000件以上/350M以上なら中央シナリオ以上
★★★Q3累計の経常利益の通期進捗率71.2%超なら中央以上、74.8%超なら再上方修正期待
★★★Q3単独の売上高5,900M以上なら中央シナリオ整合。6,500M超なら楽観寄り
★★☆営業利益率18%以上維持なら高収益体質が定着。16%以下なら保守寄り
★★☆通期業績予想の修正有無Q3時点で上方修正が出ればポジティブサプライズ
★☆☆インフラストック事業の売上・損益Q3単独で黒字維持なら事業基盤が安定

データソース

※本分析は公開情報に基づく個人的な考察であり、投資助言ではありません。投資判断は自己責任でお願いします。

本レポートは公開情報に基づく分析であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。

他の記事

テーマ株分析

日米で進む送電・変圧器の老朽化更新関連銘柄

米国で変圧器の70%が設計寿命に達し、データセンター建設の半数が遅延。日本でも変圧器の57%が更新推奨時期を超過し、レベニューキャップ制度・トップランナー新基準・DC建設の三重の追い風が吹く。日立、東光高岳、ダイヘンなど15銘柄を「テーマ先行」か「実需」かの観点で検証しました。

個別株分析

霞ヶ関キャピタル(3498)2026年8月期 Q2決算振り返り ー 楽観シナリオ超えの実績と残る空売り圧力の行方

Q2決算は楽観シナリオを大幅超過。事前予測との乖離要因、決算前後の株価反応、約10%に達する機関空売りの動向、財務健全性のチェックをまとめた決算レビュー

個別株分析

霞ヶ関キャピタル(3498)2026年8月期 Q2決算予測分析

霞ヶ関キャピタルのビジネスモデル、Q1の収益分解と二層コスト構造、Q2の3アプローチ予測、REIT移管・ドバイ地政学リスク・機関空売りを踏まえた総合判断と決算確認ポイント。

テーマ株分析

非効率石炭火力の稼働制限解除を踏まえた関連銘柄

経済産業省が2026年度に限り非効率石炭火力発電所の稼働抑制措置を停止する方針を決定。中東情勢の緊迫化によるLNG調達リスクへの緊急対応として、 容量市場における設計効率42%未満の石炭火力に対する稼働率ペナルティを1年間免除する。恩恵を受ける電力会社・石炭関連企業・周辺産業を整理。