開示要約
日本曹達(証券コード4041)の第157期(2025年4月1日〜2026年3月31日)は、売上高1,520億9,100万円(前年度比2.0%減)、営業利益149億7,000万円(同6.8%減)となった。エンジニアリングで大口のプラント建設工事が減少し、同セグメントの売上高は85億1,700万円(同35.2%減)、営業利益は11億4,100万円(同51.8%減)に落ち込んだ。 一方、経常利益は持分法による投資利益60億5,500万円と為替差益12億1,800万円の計上により229億9,000万円(同17.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は投資有価証券売却益50億6,700万円などにより182億7,100万円(同21.7%増)となった。特別損失は固定資産廃却損18億6,400万円、工場閉鎖損失10億4,900万円を含む37億1,700万円。 期末配当は1株90円で、中間70円と合わせ年間160円(前期比20円増配)を株主総会に付議した。第2号議案では資本準備金121億4,859万円のうち60億円を減少し、その他資本剰余金へ振り替える。2026年5月14日には新中期経営計画「かがくで、かがやく。Stage Ⅲ」(2026〜2029年度)を公表し、2029年度の当期純利益200億円以上を掲げている。
影響評価スコア
🌤️+1i売上高1,520億9,100万円(前年度比2.0%減)、営業利益149億7,000万円(同6.8%減)と本業は減収減益で、エンジニアリングの営業利益51.8%減が重い。ただし持分法投資利益60億5,500万円と投資有価証券売却益50億6,700万円により純利益は182億7,100万円と過去最高で、利益成長の源泉が営業外・特別項目に偏る構図が鮮明になった。
年間配当は160円と前期比20円の増配で、総還元性向は74.6%と目標の50%以上を大きく上回った。当期は自己株式50億200万円を取得し、149万3,200株・38億1,100万円を消却済み。加えて資本準備金60億円をその他資本剰余金へ振り替える議案を付議しており、累進配当方針の維持と合わせ還元原資の確保姿勢が明確である。
新中期経営計画Stage Ⅲでは2029年度に当期純利益200億円以上、ROE10%以上を掲げ、成長投資300億円・研究開発350億円・DX80億円を投じる。医薬品添加剤NISSO HPCやKrFフォトレジスト材料VPポリマーを軸に、新規事業売上高100億円を目指す。水島工場廃止や青化ソーダ販売終了など不採算事業の整理も並行して進む。
過去最高の純利益182億7,100万円と20円増配は評価されやすい材料である一方、営業利益が6.8%減と本業の勢いを欠く点が重しとなる。EPSは336円54銭、1株当たり純資産は3,820円43銭で、株主資本の厚みは増した。株主数は3万843名と前期末比1,641名増えており、2024年10月の株式分割以降の投資家層の広がりが需給面の下支えとなり得る。
政策保有株式は7銘柄を売却したが株価上昇で純資産比率が11.4%となり、2029年度の6%未満目標との距離が開いた。Stage ⅡのKPIもROS9.8%、ROA5.0%、ROE9.3%と10%・7%・10%の目標に届かず未達である。工場閉鎖損失10億4,900万円や環境対策引当金繰入額6億6,600万円の計上も構造改革コストとして残る。
総合考察
総合スコアを押し上げたのは株主還元で、総還元性向74.6%は目標の50%以上を大幅に超え、増配・自己株式取得50億200万円・149万3,200株の消却に加え、資本準備金60億円の取り崩しで将来の還元余力まで手当てした点が積極的である。ただし5視点は方向が割れている。純利益182億7,100万円の過去最高更新は持分法投資利益と投資有価証券売却益に支えられた面が大きく、営業利益は6.8%減、ROSは9.8%とStage Ⅱ目標の10%に届かなかった。すなわち利益の質は前期より高まっていない。Stage Ⅲが掲げる2029年度純利益200億円以上は前期比で約1割の上積みにとどまる一方、投資はStage Ⅱの研究開発201億円から350億円へ大きく積み増すため、会社自身も期間中のROE低下を見込む。投資家が注視すべきは、2027年3月期の営業利益がエンジニアリングの反動減を吸収して回復するか、の純資産比率11.4%が2029年度6%未満へ実際に低下し始めるか、そして2026年10月1日のニッソーグリーン吸収合併がアグリビジネスの採算改善に結びつくかである。