開示要約
第52期(2025年4月〜2026年3月)の連結業績は、売上高1兆9,847億43百万円(前期比7.7%増)、営業利益1,352億56百万円(同13.8%増)、経常利益1,391億69百万円(同7.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益990億30百万円(同5.5%増)となり、売上・利益ともに過去最高を更新した。 牽引役は不動産開発事業で、アスコットの連結子会社化や収益不動産の販売棟数増加により売上高1,470億83百万円(同186.5%増)、営業利益185億35百万円(同259.8%増)。一方、建設事業は完成工事高5,442億83百万円(同0.6%増)ながら人件費等の高騰で営業利益451億48百万円(同4.2%減)、受注工事残高は7,836億34百万円(同2.3%減)。不動産賃貸事業は売上高1兆2,030億91百万円(同3.3%増)、居住用の入居率は98.0%。 年間配当は前期比7円60銭増の150円40銭、連結配当性向50.3%、ROE20.5%。当期の自己株式取得額は269億74百万円。 後発事象では、THEグローバル社に1株1,280円・買付代金174億9百万円で公開買付けを実施して完全子会社化を企図、持分法適用関連会社のソラスト株式は2026年8月頃に譲渡予定。今後の焦点は中期経営計画最終年度2026年度の売上高2兆500億円・営業利益1,420億円の達成。
影響評価スコア
🌤️+2i売上高1兆9,847億43百万円(前期比7.7%増)に対し営業利益は1,352億56百万円(同13.8%増)と増収率を上回る増益率を確保し、過去最高を更新した。もっとも牽引役は不動産開発事業(営業利益185億35百万円、同259.8%増)に偏り、主力の建設事業は完成工事高が0.6%増にとどまるなか人件費等の高騰で営業利益451億48百万円と4.2%減益。不動産賃貸事業の営業利益855億54百万円(同6.5%増)が全体を下支えする構図であり、利益成長の裾野は広がりきっていない。
年間配当は前期比7円60銭増の150円40銭で5期連続の増配、連結配当性向50.3%は目標の50%を満たす。加えて2026年2月にToSTNeT-3で7,256,800株・249億99百万円を取得し、当期の自己株式取得額は269億74百万円に達した。ROE20.5%は役員株式報酬の支給条件であるROE20%以上かつ配当性向50%以上を満たす水準。取締役14名中7名が独立社外役員、女性取締役比率21%とボード構成も自社基準を充足している。
不動産開発事業を第2の柱に育てる中期経営計画の注力方針が数字に表れ、同事業の売上高は1,470億83百万円と前期比186.5%増、販売用不動産保有残高も2,731億74百万円(同42.3%増)へ拡大した。2026年4月にはTHEグローバル社へ1株1,280円・買付代金174億9百万円の公開買付けを実施して完全子会社化を企図し、不動産投資額1,000億円の中計目標達成と同社営業利益100億円の早期実現を見込む。協業効果が限定的だったソラストとの資本提携は解消され、資源配分の絞り込みが進む。
過去最高益と年間150円40銭への増配は好材料だが、有価証券報告書は既に公表済みの決算内容を追認する性格が強く、新規情報の量は限られる。事業環境では賃貸住宅の着工戸数が308,906戸と前期比13.4%減となり、受注工事高5,705億14百万円(同4.4%減)、受注工事残高7,836億34百万円(同2.3%減)と主力事業の先行指標が弱含んでいる。株価材料としては還元強化と受注減速が交錯する。
EY新日本有限責任監査法人は連結計算書類・計算書類のいずれについても適正に表示しているものと認める意見を示し、監査等委員会も取締役の職務執行に法令・定款違反の重大な事実は認められないとした。従業員エンゲージメントスコアは64.9ポイントと過去最高。一方、シンジケートローン1,400億円の調達により長期借入金は前期の445億30百万円から1,704億58百万円へ膨らみ、支払利息は6億11百万円から32億66百万円へ増加した。金利上昇局面での財務負担が新たな監視対象となる。
総合考察
総合評価を押し上げたのは業績・株主還元・戦略の3点だ。売上高1兆9,847億円・営業利益1,352億円の過去最高更新に、5期連続増配と269億74百万円の自己株式取得、ROE20.5%という資本効率が伴っており、稼ぐ力と還元姿勢が同時に成立している点は前向きに読める。 ただし利益成長の質には留保が要る。増益の主因は不動産開発事業(営業利益259.8%増)であり、アスコット連結子会社化という非連続要因の寄与が大きい。コア事業の建設事業は4.2%減益、受注工事高4.4%減・受注残高2.3%減と、賃貸住宅着工13.4%減の市場縮小がじわりと効き始めており、市場反応の視点を1にとどめた理由もここだ。 財務面の変化も大きい。シンジケートローン1,400億円の調達で長期借入金は445億30百万円から1,704億58百万円へ、支払利息は6億11百万円から32億66百万円へ増えた。販売用不動産が2,731億74百万円(42.3%増)へ積み上がった結果、営業キャッシュ・フローは前期856億円から405億円へ半減している。開発事業の拡大が在庫と金利負担を伴う構造は、金利上昇局面で逆回転しうる。 注視点は3つ。中計最終年度2027年3月期の売上高2兆500億円・営業利益1,420億円の達成度、THEグローバル社連結後の販売用不動産の回転と営業キャッシュ・フローの正常化、建設事業の受注反転の有無だ。