開示要約
株式会社ニチリョクは、2023年8月10日に提出した第58期第1四半期(2023年4月1日〜6月30日)四半期報告書について、記載事項の一部を訂正する訂正報告書を提出した。訂正の主因は、差入保証金に関して回収期間の長期化を踏まえた会計上の見積りの変更に基づき評価方法を見直し、を追加計上した点にある。 訂正後の当第1四半期累計期間は、売上高7億3,387万円(前年同四半期比11.7%増)、営業利益6,571万円(前年同四半期は営業損失3,992万円)、四半期純利益2億294万円(前年同四半期は純損失1億1,436万円)となった。2023年6月14日の固定資産譲渡に伴う固定資産売却益1億3,448万円を特別利益に計上している。 貸借対照表では差入保証金が46億5,156万円、これに対するが14億8,655万円計上されている。純資産は33億738万円、自己資本比率は46.9%。本報告書にはに関する重要事象等の記載があるものの、会社は重要な不確実性は認められないとしている。監査法人ハイビスカスが訂正後の四半期財務諸表について四半期レビューを実施した。
影響評価スコア
☁️0i訂正は差入保証金に係る貸倒引当金の追加計上という会計上の見積り変更が主因であり、事業活動そのものの損益を新たに変えるものではない。訂正後の当四半期は売上高7億3,387万円、営業利益6,571万円と前年同期の営業損失から改善しているが、これは約3年前の期の数値であり、足元の業績動向を直接示すものではない点に留意が必要である。
1株当たり配当額は無配であり、本訂正報告書において株主還元方針の変更は示されていない。自己株式は9,600株(発行済株式総数に対し0.06%)にとどまる。差入保証金の評価見直しに伴う貸倒引当金の追加計上は、過年度に提出済みの四半期財務諸表を対象とした訂正であり、当期の資本政策や配当水準への直接的な影響は本開示からは確認できない。
本訂正は過年度の会計処理の見直しにとどまり、経営方針・経営戦略等について重要な変更はないと明記されている。お墓事業(屋外墓地・納骨堂)と葬祭事業という事業構成にも変更はなく、納骨堂売上が4,622万円(前年同四半期比27.4%減)となる一方、終活関連の相続や保険等を含む「総合シニアライフサポート企業」への転換方針は従来から継続している。中長期の成長戦略に対して新たな示唆を与える内容は本開示からは乏しいと言える。
訂正対象は2023年4〜6月期という約3年前の四半期であり、既に後続の本決算で通期実績が上書きされている。訂正の内容も差入保証金の貸倒引当金という会計上の見積り項目に限定され、損益計算書上の売上高や営業損益の数値そのものが大きく塗り替わる性質の開示ではない。したがって株価に対する新規の材料性は本開示からは限定的と考えられる。
提出済みの四半期報告書を訂正する事象自体が、過年度の会計処理・見積りに修正を要したことを示す。加えて本報告書には継続企業の前提に関する重要事象等の記載があり、シンジケートローンの財務制限条項や宗教法人威徳寺の借入に対する債務保証残高6億739万円も開示されている。会社は重要な不確実性は認められないとするが、財務・ガバナンス面の注視点として残る。
総合考察
本開示のインパクトを最も左右するのはガバナンス・リスクの視点である。提出済み四半期報告書の訂正という事象は差入保証金の回収期間長期化に伴うの追加計上という会計上の見積り変更に起因しており、業績インパクト自体は約3年前の一四半期に限られるため、総合スコアは中立圏にとどまる。 定量面では、EDINET DBの通期実績によれば、訂正対象の第58期(2024年3月期)は純利益2.10億円を確保したものの、第59期(2025年3月期)は純損失4.19億円、第60期(2026年3月期)も純損失1.33億円と、売上高が第57期の32億円台から第60期の17億円台へ縮小する中で赤字が続いている。差入保証金46億円超に対して既に14億円超のが計上されている点は、資産の回収可能性という観点で継続的な論点となる。 投資家としては、次回の四半期・通期開示における差入保証金との追加動向、に関する記載の変化、およびシンジケートローンの財務制限条項(経常損益の2期連続赤字回避・純資産維持・有利子負債EBITDA倍率20倍以下)への抵触有無を注視する必要がある。