開示要約
高知銀行は2026年6月25日、第146期(2025年4月〜2026年3月)の有価証券報告書を提出した。単体の当期純利益は前期比36.45%減の5億2百万円、経常利益は4.53%増の11億7百万円。連結では経常収益283億79百万円、経常利益13億80百万円、親会社株主に帰属する当期純利益5億96百万円となった。 預金残高は期中209億円減の9,788億円、貸出金は118億円減の7,370億円、有価証券は134億円増の2,970億円。コア業務純益は2億51百万円増の23億99百万円、自己資本比率は8.83%。中期経営計画のKGIでは当期純利益11億90百万円の計画に対し5億2百万円にとどまり、資金利益の伸び悩み、役務取引等利益の未達、大口融資先の事業再生に伴う信用コスト増加を要因に挙げた。2026年度の当期純利益計画は20億90百万円から19億60百万円へ修正している。 配当は普通株式が期末15円、年間25円。株主総会には監査役会設置会社からへの移行、会計監査人をあずさ監査法人から太陽有限責任監査法人へ変更する議案を付議する。連結純資産に対する政策保有株式の割合は9.15%、は△136億44百万円。今後の焦点は利鞘拡大への収益構造転換と信用コストの抑制となる。
影響評価スコア
☁️0i単体の当期純利益は5億2百万円と前期比36.45%減となり、中期経営計画のKGI11億90百万円を大きく下回った。経常利益は11億7百万円と4.53%増、コア業務純益も23億99百万円と2億51百万円増えており、本業の収益力そのものは改善方向にある。減益の主因は貸倒引当金繰入額8億94百万円と貸出金償却6億57百万円に表れた信用コストの増加と法人税等の増加であり、金利上昇局面でも最終利益の成長に結び付いていない構図が続いている。
普通株式の年間配当は1株25円を据え置き、期末配当15円・配当総額1億52百万円を株主総会に付議する。連結1株当たり当期純利益47円20銭に対する配当性向は52.97%まで上昇した。第2種優先株式には年175円を支払う。監査役会設置会社から監査等委員会設置会社への移行と取締役任期の1年への短縮で監督機能を強化し、2030年3月の優先株式償還後に自己資本比率8%程度を確保することを前提に株主還元へ取り組む方針を示している。
中期経営計画『地域とこうぎんの「みらい」』第I期のKGIは当期純利益、総預金平均残高、貸出金平均残高のいずれも未達となった。収益拡大の主軸を平均残高の増加から利鞘拡大へ見直し、2026年度の当期純利益計画を19億60百万円へ修正。リスク統括部の新設、地区担当執行役員の配置による法人営業体制の強化、ストラクチャード・ファイナンスの開始、RORA算出システムの導入を進め、次期中期経営計画を策定中としている。
本開示に含まれる招集通知では、2025年度末のPBRが1倍を大きく下回り、CAPM方式で算出した資本コスト8.5%程度に対しROEが0.9%にとどまることを明記している。その他有価証券は債券を中心に評価差額が△136億47百万円の含み損となり、連結純資産は494億74百万円へ減少した。2026年度計画の下方修正と合わせ、株価水準の回復には収益力の実績が求められる局面が続く。
監査等委員である取締役4名は全員が社外かつ独立役員で、移行後の取締役会は10名中4名が社外となる。会計監査人は継続監査年数の長期化を踏まえ、あずさ監査法人から太陽有限責任監査法人へ交代する。一方で金融再生法開示債権は連結312億20百万円と総与信7,601億67百万円の4.1%を占め、うち危険債権が263億82百万円と大宗を占める点は信用リスク管理上の課題として残る。
総合考察
総合スコアを最も押し下げたのは業績インパクトである。金利上昇でコア業務純益が23億99百万円へ2億51百万円改善したにもかかわらず、単体純利益が計画の4割強となる5億2百万円にとどまった事実は、預金調達コストの上昇と信用コストが本業の改善分を吸収したことを示す。貸倒引当金繰入8億94百万円と貸出金償却6億57百万円という水準は、大口先の事業再生という個別要因にとどまらず与信ポートフォリオの脆弱さを映している可能性がある。 一方、株主還元・ガバナンスとガバナンス・リスクは逆方向に働く。への移行、監査等委員4名全員の社外起用、監査法人の交代は、取締役会実効性評価で自ら挙げた資本政策や後継者育成の議論不足への対応として実質を伴う。ただしROE0.9%と資本コスト8.5%の乖離を概ね10年で埋めるという時間軸は、投資家に長い忍耐を求める設計でもある。 注視点は、修正後の2026年度純利益計画19億60百万円の達成度、利鞘重視への転換が資金利益に表れる時期、そして2030年3月の優先株式償還に向けた自己資本の積み上がりである。債券中心に含み損を抱える有価証券ポートフォリオの再構築も、次期中期経営計画の内容とあわせて確認したい。