開示要約
松竹は第160期(2025年3月〜2026年2月)の連結業績を開示した。売上高は前期比17.0%増の982億49百万円、営業利益は同270.9%増の61億73百万円、経常利益は前期の経常損失25億円から63億45百万円へ転換、親会社株主帰属当期純利益は前期の純損失6億64百万円から52億36百万円となった。 主因は映像関連事業(売上529億49百万円、前期比21.1%増)と演劇事業(売上272億75百万円、同14.6%増)。興行収入390億円超の『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』、実写邦画歴代1位の「国宝」配給、八代目尾上菊五郎・六代目尾上菊之助襲名披露公演および創業130周年三大名作通し上演が寄与した。不動産事業も歌舞伎座タワー等の高稼働で売上146億18百万円(同4.8%増)。 剰余金処分案は1株当たり40円(普通配当30円+特別配当10円、配当総額5億52百万円)で前期30円から増配。定款にゲームソフトウェアの企画・開発・販売を追加する。後発事象として2026年4月14日取締役会で大阪松竹座ビルの解体工事着手を決議、5月公演をもって閉館する。
影響評価スコア
☀️+3i売上982億円(前期比+17.0%)・営業利益61億円(同+270.9%)・純利益52億円(前期は純損失6.6億円)と全段階で大幅増益。EDINET DB上の過去6期推移では155期(売上974億円・営業46億円)に並ぶ高水準で、156期(コロナ影響で営業損失54.8億円)以降の構造改革が結実した格好。映画「国宝」「鬼滅の刃」のメガヒットと襲名披露興行の集中効果が同時発現した点が業績インパクトを押し上げる主因である。
期末配当を1株30円(普通)+10円(特別)の計40円とし前期の30円から増配。配当総額は5億52百万円で配当性向は1割程度に留まる水準だが、156〜159期の業績低迷下でも30円配当を維持してきた経緯を踏まえると特別配当上乗せは株主還元姿勢の前進と受け止められる。役員報酬では譲渡制限付株式報酬を継続採用し企業価値共有を図っている点もガバナンス上の安定材料。自己株式取得への言及はない。
定款変更でゲームソフトウェアの企画・開発・販売を事業目的に追加し、「MiSide:ミサイド」等の販売実績を踏まえた新規収益源育成を制度化。高輪ゲートウェイシティのインキュベーションオフィス「EIGHT」開設でオープンイノベーション拠点を確保。一方で大阪松竹座は2026年5月で閉館、2026年4月14日には解体工事着手を決議しており、関西演劇拠点の再構築が中期戦略上の論点となる。BS松竹東急の全株式をJCOM株式会社へ譲渡しメディア事業の選択と集中も進めた。
1株当たり当期純利益は前期△48円34銭から381円2銭へ大幅改善し、1株当たり純資産も6,772円1銭から7,873円26銭へ上昇。配当性向の議論はあるが普通配当30円維持+特別配当10円上乗せは復配シグナルとして好感されやすい。日本マスタートラスト信託(6.80%)、セコム(4.12%)、歌舞伎座(3.53%)、みずほ銀行(3.26%)など既存大株主の安定保有構造も維持されており、需給面の混乱要因は限定的である。
取締役10名のうち社外5名(独立役員5名)、女性2名(社外取締役)で取締役会出席率は最低でも94%と高水準。指名報酬委員会は委員長を社外取締役の堀江正博氏が務め過半数を社外で構成する体制。一方、連結貸借対照表上の投資有価証券577億98百万円は純資産1,083億14百万円の約53%に相当し、資本効率上の論点として残る。大阪松竹座解体に伴う今後の固定資産除却損・特別損失計上余地も継続的な注視点となる。
総合考察
総合スコアを押し上げた最大の要因は業績インパクト(+4)であり、売上982億49百万円・営業利益61億73百万円・純利益52億36百万円という数字はEDINET DB上のFY2021(売上524億円・純損失114億円)以降の業績低迷局面を完全に脱したことを示す。映画「国宝」「鬼滅の刃」興収390億円超や創業130周年襲名披露という追い風が同時発現した点は留意が必要で、次期以降の興行ヒット偏在リスクが市場の主要な注視点となる。 株主還元(+3)では特別配当10円上乗せが好感材料となる一方、配当総額5億52百万円は純利益52億36百万円対比で配当性向約11%にとどまり、構造的な還元方針見直しの余地が残る。戦略面(+3)はゲーム事業の定款追加・BS松竹東急株式譲渡(JCOM宛108,000株)・大阪松竹座2026年5月閉館と解体決議など事業ポートフォリオの組み替えが進捗。ガバナンス(+1)では独立社外取締役5名体制と指名報酬委員会の運営体制は整うが、投資有価証券577億98百万円(純資産比約53%)の資本効率上の論点が残る。 投資家の注視点は①大阪松竹座解体工事に伴う今後の固定資産除却損・特別損失計上規模、②次期以降のヒット作偏在リスクと興行収入の持続性、③ゲーム事業等新規事業の収益化進捗、④2026年5月26日定時株主総会における定款変更・取締役選任議案の決議結果である。