開示要約
HEROZ株式会社が第18期(2025年5月〜2026年4月)の事業報告と連結計算書類を開示した。連結売上高は6,424,647千円で前期比8.3%増、営業利益は523,119千円で同70.7%増、経常利益は408,330千円で同78.9%増となった。親会社株主に帰属する当期純利益は376,028千円で、前期の177,709千円の損失から黒字に転じている。1株当たり当期純利益は24円75銭。 セグメント別では、AIX事業の売上高が3,581,992千円でセグメント利益696,558千円、AI Security事業の売上高が2,842,655千円でセグメント利益929,854千円となり、全社費用1,103,292千円を調整している。 期中には連結子会社の株式会社ストラテジット全株式をGMOグローバルサイン・ホールディングスへ譲渡し、関係会社株式売却益311,135千円を特別利益に計上した。一方、営業外費用に暗号資産評価損30,065千円を計上している。 後発事象として、バリオセキュア株式会社を完全子会社とする経営統合(交換比率1対0.99)が2026年6月30日を効力発生日として予定され、AKMコンサルティング株式会社の株式70%を105,000千円で取得し2026年5月1日付で連結子会社としている。今後の焦点は1,789,755千円の推移である。
影響評価スコア
🌤️+1i売上高6,424,647千円(前期比8.3%増)に対し、営業利益523,119千円(同70.7%増)、経常利益408,330千円(同78.9%増)と、増収率を大きく上回る利益成長となった。親会社株主に帰属する当期純利益376,028千円には関係会社株式売却益311,135千円が含まれるものの、EBITDAも1,025,711千円と29.2%増えており営業段階の改善が伴う。従業員は259人へ35人減少しており、増収と人員圧縮が同時に進んだ期であった。
剰余金の配当に関する議案は付議されておらず、連結の利益剰余金は419,731千円の欠損が残る。還元は株主優待制度が中心で、株主優待関連費用47,074千円、株主優待引当金20,573千円を計上し、自己株式は保有していない。ガバナンス面では監査等委員会設置会社として社外取締役3名が取締役会18回・監査等委員会13回のすべてに出席し、独立社外取締役が過半を占める指名報酬委員会を設置している。
「AI BPaaS」戦略のもとでポートフォリオ再編が同時並行で進んだ。iPaaSを展開するストラテジットを譲渡する一方、バックオフィスBPOのAKMコンサルティング株式70%を105,000千円で取得し、バリオセキュアの完全子会社化を2026年6月30日効力発生で決定している。生成AIアシスタント「HEROZ ASK」は2025年10月のARR1億円から2026年4月にARR2億円を突破しており、AIエージェント領域への資源集中が数字として表れ始めた。
直前3事業年度で続いた最終赤字からの黒字転換は買い材料となりうる一方、バリオセキュア株式交換で交付する2,558,688株は期末発行済株式15,206,964株に対し無視できない規模で、需給面の希薄化要因となる。バリオセキュア普通株式は2026年6月26日付で上場廃止が予定されており、同社株主が受け取るHEROZ株式の売却動向も短期の株価形成に影響しうる。
のれん残高1,789,755千円は総資産8,499,807千円の2割超を占め、買収先の事業計画が未達となれば減損が損益を圧迫する構図が残る。当期も減損損失3,368千円、投資有価証券評価損4,287千円、和解金12,500千円を特別損失に計上した。ビットコイン5.91BTCの保有により暗号資産評価損30,065千円が発生しており、創業者2名がそれぞれ28.55%を保有する集中的な株主構成とあわせて留意が必要である。
総合考察
総合スコアを押し上げたのは業績と戦略の2軸である。売上高の伸びが8.3%にとどまる一方で営業利益が70.7%増となったのは、AI Security事業のストック型収益とAIX事業の大型案件が固定費を吸収し始めた結果であり、直前3事業年度で続いた最終赤字からの転換につながった。ただし当期純利益376,028千円のうち311,135千円は子会社譲渡益であり、恒常的な利益水準はこれより低い前提で見る必要がある。 逆方向に働くのがガバナンス・リスク軸で、1,789,755千円を抱えたまま買収を積み増す構図は、AKMコンサルティングやバリオセキュアの計画未達時に一括して損益を毀損しうる。暗号資産評価損30,065千円のような本業外の変動要因も損益に残っている。 次に確認すべきは、2026年6月30日を効力発生日とするバリオセキュア統合後の第19期において全社費用1,103,292千円がどこまで圧縮されるか、ARR2億円に到達した「HEROZ ASK」の伸長ペースが維持されるか、そして5月1日付で連結入りしたAKMコンサルティングが利益にどれだけ寄与するかである。従業員が259人へ35人減った体制で増収を続けられるかも合わせて注視したい。